夢は叶えるためにある――失敗を原動力に成功を掴んだ起業道
仕事での失敗から夢を諦めそうになったことはありませんか。2016年に株式会社JIONを創業した成井五久実さんも、営業2年目でクライアントや自社を巻き込む失敗を経験していました。今回は成井さんに起業という夢を叶えるまでの道のりとその秘訣を伺いました。
■起業は遠い世界の話ではなく、手の届く身近なものだった
――これまでのお仕事のご経歴を教えてください。
2010年に新卒で株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、モバゲーの広告営業を担当。
2013年に転職、トレンダーズ株式会社に入社し女性向けPR・デジタルマーケティングの営業、新規事業の立ち上げなどに携わりました。そして2016年に株式会社JIONを創業、2017年5月に株式会社ミスターフュージョンに事業を売却し、現在は同社子会社としてJIONの社長を務めています。
――なぜ起業しようと思ったのでしょうか?
両親が起業家だったので、自分も起業するものだと思っていました。
私が中学2年生のとき、ゴルフ場経営などをしていた父の会社がバブル崩壊をきっかけに倒産。そのときに、カウンセリング事業を営んでいた母が会社の借金返済などして父を助けたんです。
父が起業家として活動する姿だけでなく、母の姿からも女性が自立していること、手に職を持っていることの重要性を感じていましたね。私も20代の間に起業しようと考えるようになっていました。
――「JION」というメディア事業を選んだ背景は?
理由はふたつです。
まずは自分が最短で利益をあげられる事業は何か? と考えて広告メディア事業に決めました。当時キュレーションメディアの全盛期だったことと、自分の過去の経験から、営業で実績を出せていたこと、新規事業関連でWEBメディアの立ち上げを経験していたことが大きな強みになっていたので、そこを活かすかたちで事業モデルは決めましたね。
もうひとつは、前職で女性向けPRに携わっているときに、男性からよく質問されていたんです。「女性にあげるプレゼントって何がいい?」とか「デートでいくにはどこがおすすめ?」とか。
そのときに、男性って恋愛に関する情報コンテンツが意外と少ないんだな、と感じてメディアのコンセプトは男性向けの恋愛領域に決めました。
――起業にあたっての試算ができていたんですね。
よく起業しようと思った時に「〇〇に貢献したい」とビジョンから考えることがありますが、マネタイズできる事業モデルに落とし込めなければ、理想と現実に大きな乖離が発生します。
私の場合、現実的な売上や利益など事業モデルを見ていました。
これは決して難しいことではなく、自分の今までのキャリアを辿ってみて何のスキルでお金をもらえるのか、どの領域ならそれが叶えられるのか、を理解していたからできたこと。それだけで起業はぐっと身近に感じられると思います。
■思い通りのキャリアを積むために営業力に磨きをかける
――今は思った通りのキャリアを積めていると思いますか?
20代で起業し事業売却、30代でシリアルアントレプレナーとして、IPO(※1)を狙う新しい会社を創るという目標を掲げています。今のところ20代までは狙い通りです。
――目標達成のポイントはどこにあったのでしょうか?
まず、両親を見ていて20代で起業をしたいということは決めていたので、そのために必要なスキルを最短で身につけようと思っていました。「営業力」と「新規事業立ち上げスキル」、これを20代の早いうちに学ぼうと考えて行動していました。
特に大切だと感じるのは「営業力」です。
営業と言っても商品を売るだけではなく、自分を売り込む力をつけることが大切ですね。これから昇進や、独立したいなど自分の夢を叶えるときの交渉術に繋がりますから。早いうちに営業力を身につけることはとてもおすすめです。
※1:IPOとは、Initial Public Offeringの略語で、日本語では「新規公開株」や「新規上場株式」と表します。具体的には、株を投資家に売り出して、証券取引所に上場し、誰でも株取引ができるようにすることをIPOといいます。
■成功だけじゃない! 起業までの道のりには失敗もあった
――今までのキャリアの中で辛かったことはありますか?
社会人2年目のときに大型受注をすることができたのですが、自分のプレゼン時の効果に対する試算が甘かったことで、結果的にクライアントと会社に多大な迷惑をかけてしまったことがあります。おかげで評価はガタ落ち……。あのときは本当に辛かったです。
――そういった経験をどのように克服されたのですか?
事実は変わらないので、辛くても向き合うことですね。「仕事で出した失敗は仕事で取り返す」という考えで、その後も営業に愚直に向き合い続けました。
どのステージにおいてもまずは営業職として目標数字を連続達成し続けるなど、成果をあげることで克服していきました。その結果が評価され、転職先でも新しいステージのチャンスがもらえたと思っています。
――今の仕事のやりがいは何ですか? また、今後の目標は?
今は会社の代表として、自分の実績が社会からの評価に直結することが楽しいですね。
今後はもっと事業を大きくしたいなと思います。
JIONをもっと大きな会社に成長させたいです。売上も、組織も増やして、社会にインパクトを与えるようなビジネスをやっていきたいと思っています。具体的には、WEBメディアと言う領域で、自社のノウハウを他企業にも伝えて、業界全体でエンパワーメントを図れる存在にしていきたいです。
その後は30代のうちにもう一度起業し、次は上場を目指す大きな組織を作ってみたいです。
それから、個人投資家として私の様に起業したいと思っている人のサポートもしていくつもりです。
■自分の代名詞になるスキルをいくつ持てるかが活躍の秘訣
――成井さんが進化し続けてこられた要因として何が重要だったと思いますか?
私が夢を叶えられた理由としては、「夢を口に出して言い続けたこと」と「人との出会いが大事だったと思います。学生時代も社会人になってからも、ずっと起業したいということを発信していました。結果として、それを聞いてくれた方々が投資家やオフィスの紹介をしてくださったりして。結果として応援団になってくださいました。人と会うこと、そして相手に自分の夢を伝えることは大切だと思います。
――これから生き残れる人材とはどんな人だと思いますか?
自分の代名詞となるスキルをいくつ作れるか、だと思います。
これからは企業単位ではなくて、企業の壁を超えてプロジェクト単位で進める仕事が増えてくる時代。そのときに声をかけてもらえる自分でいられるかどうか、ということです。
転職を繰り返してたくさんの企業に所属したことがある、という経験値ではなく、周囲にも認知される自分の代名詞となるスキルです。私の場合は、営業が必要なプロジェクトだったら間違いなく呼んでもらえるだろうな、とかそういうことですね。
今はSNSで「営業MVP獲りました!」などと発信すると周囲の人がお祝いコメントをくださったり喜んでくれる時代です。夢を実現させたいのなら、自分の成果や実績を恥ずかしがらずにSNSなどで発信していくことから初めてみてはどうでしょうか。
(編集後記)
経験と強みを掛け算したスキルを武器に起業家という夢を実現させた成井さん。
「20代は生き急いできました」と笑う彼女の、積極的に経験を積みにいく姿勢が周囲の人々を「応援したい」と”その気”にさせた大きな理由なのかもしれない。
取材協力:株式会社JION
Text/Mediajo(取材:ZENKUMI/ライター:NAHOMI)
ミーハーと私(ME)彼女(SHE・HER)を掛け合わせた造語で
ミーハーな女子ゴコロ=“女性の情報源”という意味を込めています