肝心なのは、「女度」とのバランス。甘辛MIXコーデの楽しみ
「甘い」だけの女なんてまっぴら! でも「辛い」だけの女にもなりたくない。そうつぶやきながら甘いファッションと辛いファッションの両軸を行き来して半世紀。結論は、「どちらに転んでもいいのだ。だって毎日違う自分でいてもいいのだから」。甘い服と辛い服をMIXするのは楽しい作業。その日の気分で思いのままに調合しよう!
■可愛くいくか、カッコよくいくか、それが問題だ
甘くて可愛い服がいいか、辛くてカッコいい服がいいか。
私は、その間を行ったり来たりして 悩んでいた時代があった。
カーキ色カーゴパンツにジャケット、というスタイルの服を着ていると、優しいモヘアのニットを着ている友人に比べ、あまりにも自分に女らしさが足りないような気がして惨めに感じた。
逆に、レースのブラウスにふんわりスカートといういでたちの日には、ブラックスキニーにゴツめなブーツ、シンプルなTシャツという女性がカッコいいなあと感じた。彼女に比べて、自分がとてつもなく何かに媚びている女に思えて落ち込んだりしたものだ。
どちらを選択すればいいのか。
それは長い間、自分の中で答えの出ないファッションの悩みだった。
そんなとき、とあるファッション雑誌の「甘辛MIX」というタイトルが目に飛び込んできた。
それは、甘いファッションと辛いファッションはどちらかを選ぶ必要はない。
なぜなら、それらはどんどんミックスしていいのだから、という提案だった。
当時の私にとって、それは目からウロコだった。
なぜなら今までそんな考えで服をコーディネートしたことなんかなかった。
それまでの日本では多くの場合、フリルの服にフレアスカートを履く女性は頭からつま先まで甘く、パンツスタイルにテーラードジャケットという服を着る女性はとことん辛口だったから。
■甘さ100%のアイテムをひとつだけ投入
女友達が集まるランチ会の甘辛コーデ
ピンクのレースのノースリーブブラウスという甘さ100%のアイテムを生かすべく、他は辛口に。センタープレスの細身のウールのパンツ、ひも靴、革のジャケット。辛めだけれど、コンサバなアイテムを合わせることで、ブラウスの持つ上品な甘さを壊さないように。
仕事コーデも甘辛MIX
グレーのテーラードジャケットと黒のクロップドパンツに黒いバッグ。大真面目なメンズライクなアイテムのコーデに優しいレースのインナー(甘口)を添える。そしてラズベリーレッド色のスエードハイヒールを履くことで大人の甘さをトッピング。
休日のデニムの甘辛コーデ
デニムは甘くも辛くも自由に味付けできる万能アイテムだが、ありがちな花柄やフリルのトップスを合わせるやり方は既に飽き気味。
黒の革ジャンに黒のリブタートルネックのニット、黒のエンジニアブーツ、パイソン柄のバングルでとことん辛くしておいて、最後に糖度100%のピンクのファーバッグを持つ。
9回裏の大逆転! という感じ。
■甘くも辛くもないけれど、取り扱い注意な服もある
甘い=可愛い、ラブリー
辛い=カッコいい、男前
とざっくり定義するならば、どちらにも当てはまらない服がある。
ヒョウ柄のジャガード織のロングタイトスカート。
あえて言うならば「女度」が高い服。
キリっとしていているけれど、服に色気があって、でもナヨナヨしているわけでもない。男っぽい要素はないけれど、ラブリーではない。
甘辛ミックスのコーデの方法は、この「女度」が高い服に対しても応用できる。
普通のニット+ハイヒールで履いてしまっては、女っぽさがトゥーマッチで胸やけがしそうなこのスカート。
そこで、ジルサンダーのシンプルマニッシュな白いシャツとゴツい、レースアップのショートブーツに合わせることで糖度を中和させ、女っぽさを下げてみた。
最後にグレーのファーのマフラーをトッピング。
全体をなじませる。
■人によっても自分の体調によっても「糖度」は異なる
実は、同じ服でも着る人によってまったく印象が異なるのが甘辛MIXのファッションの特徴。
モデルさんの真似をしてコーデ一式買い揃えて着ても、全然違った印象になるのは、モデルさんと自分の中にある「女度」が異なり、滲み出る甘さと辛さのバランスが崩れてしまうからなのだ。
自分自身が「甘い」か「辛い」かのスケール感をまず見極めること。
甘辛ミックスのファッションに挑戦するならば、まずはそこからスタートした方がいいと思っている。
そして、甘辛ミックスのコーデを実践していると気づくことがある。
甘辛ミックスのファッションを考えるのは、自分の中にある「女度」と「男前な部分」をリトマス試験紙でPHを見ながら少しずつ中和を繰り返す作業に似ている。
もちろん自分はひとり。
毎日同じ人間のはずなのに、毎日毎日、その中身は微妙に変わっているのかも? と気づくのだ。
気分や体調、心理、考え、志。
それらのものや、女性特有のホルモンバランスにもコントロールされ、その日その日で、自分の中の「甘い部分」と「男っぽい部分」が交差するように複雑に変化している。
だから その日のなんとなくの気分のままに直観に従って、着る服やアクセサリー、メイクに至るまで。糖度と塩分の比率を自由に変えてみる。
それがその日の自分の気持ちにぴったりフィットするとき、甘い辛いを超越して「自分にフィットするコーデ」となる。
■年齢と共に変わる「糖度」に合わせて服も着替えよう
40代や50代など節目を迎えたときに、今まで似合っていた服がまるっきり似合わなくなった……という話をよく聞く。原因のひとつに、自分の中からダダ洩れる「女度」「糖度」が変化したことがあるのでは、と思う。
女性の中にある「糖度」「女度」がMAXになる30代前半から40代前半くらいまではシンプルで辛口な服の方が似合ったりする。
けれど徐々に、これから60代70代と年を重ねていき、自身から滲み出る女っぽさがまた変化してきたならば、またピンクの服やレースのブラウスが似合うようになる気がする。
その変化を楽しめるのも、また甘辛ミックスコーデの楽しみ。
70歳になったら、ベビーピンクのニットワンピースが似合う白髪のおばあちゃんでいたい。
それが今の私の目標だ。
甘辛MIXは女性であることを満喫できるファッション。
割合を自由にコントロールして、毎日をうんと楽しもう!