美容師が教える、スタイリング剤の特徴・選びかた
ワックス、オイル、ムース、スプレーなど、多種多様なスタイリング剤。改めて知りたい、スタイリング剤の選びかたを美容師の視点からご紹介します。
■スタイリング剤はヘアスタイルと髪質に合わせて
最近はさまざまなタイプのスタイリング剤が出回っています。ワックス、スプレーなど用途や仕上がりの質感が違うものから、ワックスムースのように、元は異なるスタイリング剤の複合バージョンの製品もあります。美容師としても選ぶのが楽しみであり、難しくもあるなぁと思います。
今回は、それぞれのスタイリング剤の特徴をお教えします。
■スタイリング剤といえば、万能な「ワックス」
多種あるスタイリング剤の中でも、一番ポピュラーなワックス。一度は手に取ったことがあるかと思います。
ワックスは一般的には、油性、クリーム状で、軽いセット力からハードにキープできるものまで、いろいろなタイプが存在します。
最近ではドライに仕上がるもの、ウェットな質感を持たせるもの、遅れて固まってくるもの、など質感もコントロールできるような商品もラインナップされていて、形状もジャータイプの容器に入っているもの、スプレータイプのものなど多岐に渡ります。
簡単に説明すると、蝋を中心とした固形油を乳化によって安定させてあるものです。手で伸ばしたときの温度で柔らかくなり、整髪後に髪をキープして固くなってくるものが多いと思います。
基本的に手に伸ばして髪に塗布して使い、揮発はほぼないため髪に整髪料をつけている感じが少なからず残るものです。
毛先の束感を表現したり、パーマのウェーブ感を出したり。根元付近からしっかり髪を立ち上げる、さらには乾燥毛に対してのボリュームダウンにも有効です。
セット力の強弱と質感を選べば、まず万能なスタイリング剤といえるでしょう。
■使いやすいフォームタイプな「ムース」
ムースは整髪成分を泡状にしたもので、シリコンによってツヤが出るものが多く、保湿成分を多く含んでいて、スタイリング力のないタイプなど、多様なラインナップがあります。
使う前に振って容器から出たときに泡状に変わります。そのため、成分の粘性などに制限なくスタイリング剤を何種も配合することができ、いろいろなタイプを作りやすいメリットがあります。
他のスタイリング剤に比べて水分量が多いので、パーマのウェーブを再現するのに適していて、長さを問わず使いやすいスタイリング剤です。リンス成分やUVカットなど、ヘアケア的な要素を備えた商品なども多く発売されています。
フォームを手に取り、握り込むようにして髪に塗布します。髪に満遍なく馴染むように少量ずつ何回かに分けて塗布すると、1箇所に固まることなくスタイリングしやすいと思います。
たくさんの種類が作られて出回っているので、髪質に合わせてチョイスすれば、どんな髪質にも対応させやすいスタイリング剤です。
■手を汚さず使える「ヘアスプレー」
昔からあるスタイリング剤のヘアスプレー。
ハードにガッチリ固まるタイプ、固まらずに再アレンジしやすくするためのワックススプレータイプ、ツヤに特化して静電気なども抑制するグロススプレー、などさまざまなタイプがあります。
よく振って中の成分(油分やシリコン樹脂など)を混ぜ合わせ、直接髪に噴射して使うため、手がベタつくこともありません。粒子が軽いためにスタイリング剤の重みでペタンとしづらく、軽い質感を好む方にもおすすめです!
エアリーな巻き髪のスタイルにふんわりとワックススプレーを、他のスタイリング剤で全体をスタイリング後にハードスプレーでしっかりキープなど、仕上げ的な要素で使用されることも多いです。
シリコン含有量が比較的多いので、湿度を含みにくくなり、クセで髪がうねりやすい方もキープしやすいかと思います。
■ボリュームダウンやウェットな質感には「ヘアオイル」
髪に油分を補って、ツヤと滑らかさ、柔軟さを与えることを目的として作られたヘアスタイリング用のオイルです。
スタイリング力(キープ力)はないですが、揮発してパサつかないように成分を調節し、シリコン系のポリマーによって少し束っぽくまとまる効果があります。
長めのスタイルや膨らみやすい髪質に向いていて、動きのあるスタイルではなく“つるん”とさせたいスタイルにぴったりです。毛先を軽く外ハネさせたボブにも◯。全体にしっとり馴染ませれば少しウェットな質感が出せます。
最近では、手に残ってもそのままハンドバームや保湿クリームのようにしっとりさせられるオーガニック系の商品も増えています。シアバターやアロマ精油とミツロウをミックスさせたものも安全で人気が高いです。
硬毛、多毛、クセが弱い髪質にとても向いています。逆に細毛、軟毛、クセが強い髪質には活かしにくいかもしれません。
■それぞれの特徴を生かしてスタイリング上手に!
いろいろなスタイリング剤をご紹介しました。それぞれの特徴を踏まえて、ヘアスタイルと髪質に合わせて、使い勝手のいいものをチョイスすることが大切です。
ご参考になれば幸いです!
美容師。表参道NORAより20201月、NORA GINZAをOPEN 同代表。各種雑誌のヘアメイクやセミナー講師も行っている。