偏愛アイテムはしまわない。“大好き”に囲まれた心地よい暮らし#1【輪湖もなみ】
https://p-dress.jp/articles/5179自らが「心地よい」と感じる住まいで暮らす方に、お部屋やインテリア、暮らし方を紹介していただくシリーズ。第2回目はDRESSコラムニストのひとり、輪湖もなみさんに登場いただきました。10年以上家族と暮らしている自宅でつくる心地よい空間やインテリアのこだわりについて、前後編のコラムでご紹介いただきます。
自らが「心地よい」と感じる住まいで暮らす方に、お部屋やインテリア、暮らし方を紹介していただくシリーズ。第2回目はDRESSコラムニストのひとり、輪湖もなみさんに登場いただきました。前後編のコラム、後編では自室のインテリアや好きなものをしまいこまないことで始まった、新たな仕事についても綴っていただきました。
我が家の家族にはそれぞれ自室がありますが、お互いの部屋の中は治外法権、どんなに散らかっていても関与しないルールです。
それもあって、私の部屋は偏愛度がさらに増し、ほとんど変態と言っていいくらいカオスです。スカーフにアクセサリー、靴、バッグ……こよなく愛するファッションアイテムに囲まれて眠るのが至福のとき。
なかでもスカーフを集めるのが趣味です。海外に行くたび、ビンテージショップをうろつくたびに、珍しいスカーフを探しているうち、コレクションは100枚近くになってしまいました。
有名なエルメスのスカーフ「カレ」は、デザインから仕上がりまで約2年かかるそうです。スカーフの図柄の一つひとつには絵のように題名があって、自然科学、民俗学、歴史、宗教、壮大なテーマで描かれる図柄は、細部まで丁寧に描き込まれていて、見飽きることがありません。
ところが私はスカーフがちっとも似合いません。丸顔の私がしっとり分厚いシルクのスカーフを結ぶと、首がなくなりまるでドラえもんの首輪です。
いつかマダムと呼ばれるくらい成熟した大人になったらきっと似合うようになる、そう憧れ続けて四半世紀、老けはしてもいっこうに顔は痩せず、私のスカーフへの情熱はまるで福山雅治さんへの片想いのように、「叶わない、でも好き」を行きつ戻りつしていました。
そんなとき、私の友人がやはり山のように持っているスカーフを持て余し、「使わないけど捨てられないのよね」と言ったのを耳にしました。
「ああそうだ。しまいこんでいても意味がない。何かにリメイクして使おう」と思い立ち、スカーフをリメイクしてバッグやアクセサリーや小物を作り始めました。
試しに私のファッションブログで、「よろしければあなたのタンスの肥やしのスカーフをリメイクします」と書いたところ、数百人もの方からご注文をいただきました。
「祖母から譲り受けた、私で三代目のスカーフです」
「私が初めて海外に行ったとき、今は亡き母へのお土産に買った思い出の品です」
そんなメッセージとともに、貴重なスカーフを預けてくださる方が大勢いたのには、本当に驚かされました。
スカーフへの偏愛が高じて、アラフィフにして私は「リメイクデザイナー」という、ふたつめの職業を持つことになったのです。
大好きなものを目につかないようにしまいこんだままだったら、おそらくこんな面白い展開は起きなかったでしょう。
エルメスの広報担当者は「ラグジュアリーとは時間である」と言っていました。じっくり時間をかけて人の手がかかって作られたものは、とりわけ何か不思議なパワーがあるように私には思えてなりません。
今の世の中には、カンタンに作ってカンタンに捨てられるモノで溢れています。便利で安価で捨てても心が痛まない、そのようなものだけに囲まれた生活に、少し疲れた人も増えているのではないでしょうか。
優れたデザインや手作り、ビンテージや職人技は、そんな空虚な心を満たし、癒してくれると私は感じています。
自分らしく暮らす生活の芯を作るために、余分なものは削ぎ落としながら、自分にとって本当に意味のあるものだけを身近に置く。
おばあさんになっても、そんな研ぎ澄まされた偏愛で満たされた暮らしができたら幸せだなあと思います。私の部屋はこれからも、整然と片付くことはないでしょう(笑)。
偏愛アイテムはしまわない。“大好き”に囲まれた心地よい暮らし#1【輪湖もなみ】
https://p-dress.jp/articles/5179自らが「心地よい」と感じる住まいで暮らす方に、お部屋やインテリア、暮らし方を紹介していただくシリーズ。第2回目はDRESSコラムニストのひとり、輪湖もなみさんに登場いただきました。10年以上家族と暮らしている自宅でつくる心地よい空間やインテリアのこだわりについて、前後編のコラムでご紹介いただきます。