足し算は卒業。引き算で手にした心地よい暮らし#2【兎村彩野】

足し算は卒業。引き算で手にした心地よい暮らし#2【兎村彩野】

自らが「心地よい」と感じる住まいで暮らす方に、お部屋やインテリア、暮らし方を紹介していただくシリーズ。初回はDRESSコラムニストのひとり、兎村彩野さんに登場いただきました。今夏引っ越した新しい住まいで、パートナーとふたりでつくる心地よい空間を紹介するコラム、後編です。


DRESSの編集長から「心地よい暮らし方というテーマで、コラムを書いていただけませんか?」とメールをいただき、ひさしぶりに言葉を書いています。

自分なりにつくる「心地よい暮らし」をテーマにしたコラム、先日公開された前編からお読みください。

足し算は卒業。引き算で手にした心地よい暮らし#1【兎村彩野】

https://p-dress.jp/articles/5117

自らが「心地よい」と感じる住まいで暮らす方に、お部屋やインテリア、暮らし方を紹介していただくシリーズ。初回はDRESSコラムニストのひとり、兎村彩野さんに登場いただきました。今夏引っ越した新しい住まいで、パートナーとふたりでつくる心地よい空間を前後編のコラムでご紹介いただきます。

空間を自分に合わせず、自分を空間に合わせる

心地よく暮らすために、一番長く滞在する場所を快適にすることが近道かなと思います。私の場合、24時間のほとんどを家の中で過ごすので、家を快適にすることが心地よさに直結します。

今、夫という他人とひとつの家をシェアして生きているので、この家という空間は両者にとって心地よくないといけません。そこで、自分の趣味を家に押しつけるのではなく、ふたりで生きていきやすい空間になるように、自分たちが空間に合わせていくという暮らし方を選んでいます。

例えば、玄関をすっきり見せたいので、出しておく靴はお揃いのビルケンにしていて、サイズが違うだけです。これだけで玄関という空間は無駄な情報がなくなるので、快適になります。私がビルケンを好きかどうかだけでなく、この玄関という空間にビルケンは合うか? という基準で物を選びます。

家に飾るアートやインテリアも、自分の好みを集めるのではなく、この空間に馴染む物をふたりで選んでいます。

作品としてすばらしいアートでも、空間に合わなければ買わない(もしくは手に入れない)。この空間には合わなくてもすばらしい物は展覧会やギャラリーで見ればいい。これだけで家という空間が一定に保たれるので、とても心地よい場所になります。

空間を主に考え、物事を決めるようになると、自分の個性がなくなると思う人もいるかもしれません。でも、自分が思う個性なんて、思い込みみたいなものです。個性すらも捨ててしまうと、逆に捨てても捨てきれなかった感覚だけが体にも空間にも残り、空間そのものを個性だと思えるようになります。

違和感を拾い上げて改善していく

暮らしていると、日々の中でなんとなく、動きにくい・使いにくいという箇所が家の中に出てきます。何度か気になった場合は、そのポイントを改善していきます。

ダイニングの食事のときに使うクロスたちがどうも箱から出しにくいなぁと思っていたら、夫が大きな箱に入れ替えをしてくれました。どうやら前の箱は幅が足りなくて、布がキチキチに入りすぎて、出し入れ時にストレスがあったようです。

大きな箱でゆったりサイズになったので、出し入れがスムーズになり、布の柄も見やすくなりました。

もうひとつ。玄関横に近所に買い物へ出かけるときの袋があり、その所在が毎回変わってしまうのが不便だったので壁にフックをつけました。出かけるときに袋に財布を入れるだけになり、楽になりました。

ここで挙げた改良例は、とても小さなことですが、違和感を感じた気持ちや不便だなと思う気持ちを少しずつ整えていくことで、快適な空間はより快適に成長していきます。

よく心地よい暮らしとか、快適な暮らしのために買い物をするという記事を読みますが、私の場合は逆です。どうしたら快適になるかより、今、快適ではない箇所を探して、改善することで快適な空間を作ります。便利を買って物を増やすのではなく、物をなるべく増やさずに快適や心地よい時間を増やすようにしています。

物がくれる心地よさはたしかにありますが、本当の心地よさは実は普段過ごしている空間の中にすでにあります。見つけていく努力の向こう側に、もう待っている状態です。それはお金では買えないし、もしかすると自分では気づかないかもしれないので、誰かに聞いてみることも必要かもしれません。

心地よさは違和感という自分の心の本音と向き合って見つける(知る)ものなのかもしれません。心地よさを知っているのは、自分の本音だけなのでしょう。自分に嘘をつかない空間こそが、私には心地よい場所になります。嘘やだますという感情は、少し疲れます。

自分の感覚を信じて生きる

自分がいいな、大事にしたいなと思うものは、人の目を気にせずに、素直に守っていると、心がすっと真っ直ぐになります。

「好き!」とか「大事にしたい!」と思う気持ちは、たくさんの中から選択した心になります。自分の心が選んだものくらい、自分で信じてあげてもいいかなと思っています。

毎日使う暮らしの消耗品は、応援したい人たちが作る物を使うようにしています。洗面所のボトルには「STOP THE WATER WHILE USING ME!」とあります。ドイツのメーカーのもので、この製品を作る人たちに共感と敬意を持っているので、ずっと愛用しています。

小さなことですが、こういう製品を選んで暮らしていくことは、「自分はこうやって生きていきたいんだ」という小さなプライドを持つことになります。

オシャレを自慢するとか、SNSでいいね! をもらうとかではなく、考え方を他人に押しつけるでもなく、自分が自分の基準だけで良いと思って勝手に愛する。勝手に愛するスタンスがちょうど良いのかもしれません。他人の迷惑にならない勝手こそ、なによりの自由です。

快適に暮らすために、自分の意思で選んだものに囲まれることが大切だなと感じています。その意思を大切にするために、小さなプライドをいつもお腹の中に持って生きています。

心地よく暮らすとは、悩みやストレスが少なく、自分にとって快適な空間で日々を生きることではないかなと、あらためてゆっくり思い出して気づきました。肉体の衰えや自分の知識と選択肢が増えることで、心地よいという感覚が緩やかに変化していきます。この変化は生きているなかで得られる喜びのひとつです。

自分の心地よさが古くならないように、常に自分に聞いてみます。今、心地よいですか? 違和感がなければ、今日は大丈夫。

この記事のライター

Illustrator / Art Director

1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。子ども向けの絵(NHKおかあさんといっしょの「黒ネコダンス」や「ながぐっちゃん」など)や女性向けの絵、アウ...

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