ロングからボブへ。ヘアカットで果たした、過去との決別【猫川舐子】
胸下まであったロングヘアをばっさり切ってボブヘアにしました。最初は単なる気分転換のつもりでしたが、思い返すと、5年前に経験したある出来事とリンクしていることに気づいたのです。当時の話を交えながら、ボブにしてみての所感などをお伝えします。
人生を振り返ると、ロングヘアで生きてきた時間が圧倒的に多い私。
美容院の椅子に腰かけ、「今日はどうする?」と聞かれた瞬間こそ微妙に迷いが出たものの、「ばっさり切ってください」と一言伝え、いざ断髪。
切り落とされた髪の束を見て、いろいろなことを思い出してしまいました。毛先はおよそ5年前のもの。何かを察してか、美容師さんがそっと言葉をかけてくれました。
「髪を切ることは、過去を清算することでもあるから」
5年ぶりのボブはとにかく頭が軽く、新鮮でありながら今の気分にしっくりきて、晴れやかな気持ちで美容院を後にしたのでした。
■ロングからボブへの大胆チェンジは、過去と決別できた証拠
長年ロングヘアをキープしていた私ですが、5年前に一度、イメージチェンジのために思い切ってボブにしました。意外にも多くの方々から好評で、「ロングヘアより、絶対に短い髪の方がいい!」という意見が大多数でした。
しかしたったひとり、その時交際していた彼からは、その言葉を得ることはできませんでした。
「……髪が長い君に、もう一度会いたい」
当時の彼とは、私が背伸びして、必死に追いかけながら交際している状態でした。恋愛に関する軸は自分自身にまったくなく、彼からの評価がすべて。そんな状態だった私にとって、彼の言葉はあまりにも衝撃的で、必要以上に深刻に捉えてしまったのです。
およそ2年がかりで元の長さに戻して以来、ずっとロングヘアを保ってきました。交際相手が変わっても、長い髪は大切に扱われました。髪型について問われるたびに「髪を切れば99人が褒めてくれるけれど、ロングヘアが好きだというひとりの男性のために、絶対に切らない」と答えていた私。
無意識のうちに、5年前の出来事にずっと固執していたのだと思います。当時の彼の存在が、私にとって、それほどまでに特別なのでしょう。
今回髪を切ろうと思ったのは、ドライヤーで15分以上髪の毛を乾かしながら、ふと「無駄な時間……」と感じたことがきっかけですが、大切に守ってきた長い髪を疎ましく思い、切ろうと決断できた事実は、彼を過去の存在として昇華するとともに、決別できたことの表れなのかもしれません。
何か大きな出来事があったわけではありません。時間が、すべてを解決してくれたのです。
■デジタルパーマなら、スタイリングも楽してキマる
エモーショナルな話はさておき、ロングからボブにしてまず一番に立ちはだかる壁は、スタイリングの難しさ。
長い髪は、コテを適当に滑らせるだけでニュアンスヘアに仕上げることが可能。寝癖すらもヘアスタイルの一部として生かせます。
しかし、短い髪は本当に難しい。5年前もそうでしたが、丁寧に巻くとマダム風になり、ラフに仕上げようとすると微妙な寝ぐせ風に仕上がり、長さが失われたことによる使い慣れなさから、顔周りや首に熱いコテを当ててしまうことも……。
それでもしばらくはがんばってコテを使っていましたが、髪型は1日のテンションを大きく左右する重要なパーツ。毎朝の気分を一定に保ちたかったので、今回はデジタルパーマをかけました。
髪の毛をしっかり湿らせてワックスを揉み込むだけで立体的なウェーブが再現されます。所要時間にしてわずか2〜3分! 朝のスタイリングがとても楽になりました。
ちなみに、最近のデジタルパーマはトリートメント効果の高い薬剤を使用しているものもあり、傷みにくくなったと言われていますが、毛先は多少傷みました(それでも、普通のパーマよりは傷みの度合いが圧倒的に少ないです)。
しかし、ボブを維持するにしても、今後ロングヘアを目指すにしても、毛先はメンテナンスで少しずつ切り落とすこと、パーマをかけなければ、かなりの頻度でコテを使用したであろうことを考えれば、多少の傷みは許容範囲と捉えています。
■それでもやっぱり、ロングも好き
と、いろいろ書いてみたものの、今でも美しいロングヘアの女性を見ると、「私も髪をサラサラとなびかせたい……」と、長い髪が恋しくなることも。
そんな私に、「2年くらいボブを継続すればもっと馴染んでくるし、伸ばすことなんて考えられなくなるから!」と友人。
ボブ歴およそ2カ月の私、このまま短い髪を維持するか、はたまた伸ばし始めてしまうか、今はまだ決め兼ねていますが、しばらくはボブヘアを楽しもうと思っています。
広告代理店勤務