そして、暮らし始めてすぐに気が付いたのが、パリの街の鏡の多さ。全身が映る鏡が至るところにあるのです。
建物の入り口やエレベーターの中、レストランやカフェの店内……。
人々は日に何度も自分の全身をチェックする(させられる?)ことになって、さすがにおしゃれな国は違うと思いました。「センスは1日では磨かれない」ことを感じます。
(31ページより引用)
79歳・日本のパリジェンヌがボン・シックなおしゃれを語る【積読を崩す夜 #8】
連載【積読を崩す夜】8回目は、『パリが教えてくれたボン・シックな毎日』(著:弓・シャロー)をご紹介します。在仏51年、79歳のパリジェンヌが、センスある毎日の過ごし方を教えてくれます。
積んであるあの本が、私を待っている……。少し早く帰れそうな夜、DRESS世代に、じっくりと読み進めてほしい本をご紹介する連載【積読を崩す夜】。
8回目は、『パリが教えてくれたボン・シックな毎日』(著:弓・シャロー)を取り上げます。
著者の弓・シャローさんは日本の名家出身で、在仏51年の79歳。パリでデザイナーとして活躍してきました。のびのびと楽しい、本物のボン・シック(=趣味の良い)なおしゃれの仕方、暮らし方などを教えてくれます。
■パリは住む人の美意識を育てる街
著者は、日本の名家に生まれましたが、戦争を通じて生活が激変したといいます。しかし、モダンで先進的な考えを持った祖父母や父母のもとで、既成概念にとらわれない進路を選択していきます。
絵が好きだったことから、女子美術大学、セツ・モードセミナーにと進み、やがてファッションへの道が開かれていきます。日本での仕事は順調そのもの。しかし、自分の力を試してみたいという希望を持って28歳のときに、単身パリへと向かいます。
英語、フランス語の勉強をしながら、ファッションデザインの仕事につながり、そしてディオールのアシスタントデザイナーに。加えて日本の雑誌のスタイリングや、テレビ番組のルポなど、幅広く活躍するようになります。
そんな著者は、世界中のいろいろな街を訪れた中で、美しい街といえば、やはりパリであるといいます。街の景観そのものもシックであると同時に、住む人の美意識を育てるような街のあり方にポイントがあるようです。
日本の街中はパリほどには鏡がないのかもしれません。しかし、ショーウィンドウに映る自分の姿や、ちょっとした鏡を意識して探せば、パリジェンヌの美に対する意気込みを真似することができそうです。
正面から見た自分の姿だけではなく、街中に映る自分の姿をこまめにチェックして、パリ的・美の感性を磨きたいものですね。
■アクセサリーのつけ方で体型もイメージも変わって見える
まず、コサージュやブローチを着ける位置。
鏡を見ながら「ここだ!」と思ったところから5センチほど上、鎖骨の上ぐらいでしょうか。そこがバランスのいい定位置。そこに留めましょう。
たいていの方が下を見ながら着けているので、どうしても下のほうに着けてしまうみたいですね。なるべく上に留めたほうがシャープで洗練された印象を与えますよ。
(55ページより引用)
そもそも日本人には、若いうちから日常的にコサージュやブローチをつける習慣があまりないのかもしれません。つけ慣れていないからか、たまにつけると、とってつけた感がどうしても否めません。
フランス映画を見ていると、カジュアルなジーンズにストール、そして大きなブローチなんていう粋なパリジェンヌのスタイリングを目にすることがあります。
まずは、ジャケットの胸元に、巻き物のアクセントにと、コサージュやブローチに挑戦してみたくなります。つける位置も思い切って、「気持ち上目の位置」でチャレンジしたいものです。
著者はさらに、ネックレスとブローチの合わせ技の提案をしてくれます。細めのロングネックレスやラリエットを首にぐるぐると巻いた後、最後にブローチを引っかけるだけで、一味違う目を引くアクセサリーを演出できるといいます。
既成概念にとらわれないおしゃれの仕方、それがボン・シックのようです。
■老いが出やすいパーツの手入れを怠らない
手は年齢を如実に映し出す場所ですよね。私はまず日焼けをしないように気を付けています。
それから、朝夕の顔につけるクリームを手にもお裾分け。顔にクリームをつけるとき、私は左手の甲に乗せてから顔に伸ばしますが、このとき残ったクリームを左手の甲と右手の甲をこすり合わせて、両手首まで伸ばすのです。
たったこれだけのことですが、習慣化すればかなり差が出ますよ。
(132ページより引用)
著者は、姿勢、ヘアスタイル、爪などの手元に老いが出やすいといいます。
毎朝、自己流のストレッチで体をほぐし、髪の毛のカラーリングとツヤのお手入れは欠かさないのだとか。
爪については、お茶を出す、物を手渡す、口元に手を当てるなど、他人からよく見られやすいパーツです。著者は、短めに切った爪にピンクベージュのマニキュアをこまめに塗り替えているといいます。
そして手。何かと酷使する手は、どのようにお手入れすることがベストなのか、本当に悩ましいところです。
顔につけるクリームや化粧水を、ついでに手の甲につけるくらいなら、日常的に継続できそうな気がしますね。
効果的にポイントの部分をしっかりケアすることで、パリのマダム流・美しさをキープできるのではないでしょうか。
『パリが教えてくれたボン・シックな毎日』書籍情報
著者 弓・シャローさんプロフィール
1938年、東京麻布・鳥居坂に生まれる。1966年、渡仏。31歳でフランス人航空エンジニアのジャン・クロード・シャローと結婚し、ひとり息子をもうける。デザイナー、イラストレーター、スタイリスト、ジャーナリストとして活躍。