他人の価値観で生きていると、人生が苦しくなる
結婚したい。世間一般で言われるような結婚制度に当てはまるかどうかはわからないけれど、誰かの人生を支えてみたいし、自分も誰かに支えられてみたい。ただ、他人が「素敵」とか「良いね」と思うような価値観で自分の人生を歩んでしまうと、苦しくなるような気がする。イラストレーター・進藤やす子さんが考える自分らしい結婚とは? 恋とは?
■「結婚」という言葉にセンシティブになっていた
エルメスのバーキンが似合わないオンナ……。千本ノックを受けるように仕事をしていた31、32歳のときの私のことです。当時はブランド品などを次々と手に入れて、武装していました
選んでいた“武器”は、みんなと一緒の流行のものや、ブランドのロゴがわかり易いもの……。バーキンも店で無難だとすすめられた、最もスタンダードな色とサイズのものでした。今なら、自分らしい赤やオレンジを買うべきだったとわかるんですが(笑)。
結婚という言葉にセンシティブになっていた時期でもありました。専業主婦の母が、私に結婚の話題をするだけで「そんなのわかってる!」って反発したりして。振り返ってみると、まだ仕事を断る勇気もなかったし、自信もなくて必死だったんでしょうね。
子どものときは優等生だったんですよ。小・中学生のときの通知表はずっとオール5。目標を持って達成するのが大好きだったこともあって、勉強の計画表をテストの1カ月前から作ってコツコツやっていました。
高校生になって勉強が嫌いになったのは、イラストに興味がわいたから。ちなみに我が家は、父母はもちろん祖父母までマンガ大好き家族。私が今の道に進むことは、みんなが応援してくれました。その後、美大に進学。「イラストレーターになる」という目標は、その“達成”に向けて、私を突き動かしました。まずは、社会経験があったほうがいいと考えて就職。大手のメーカーでデザイナーの仕事に就きました。
■目標や努力のベクトルは、すべて仕事に向いていた
じつは会社はすぐ辞めるつもりだったんですが、やりがいもあり、あまりに居心地が良すぎて定年までいそうになっていたんです。だから5年後の退職は、自立のための一歩でした。独立後は、イラストレーターとして、自分計画に沿って活躍の場を広げました。
思えばこのとき、周囲の友達はあの手この手で、人生のパートナーを探していたんですよね。けれども私の場合、目標や努力のベクトルは、すべて仕事に向いていたんです。
でも私、どちらかというと恋愛至上主義なんですよ。仕事より恋愛での落ち込みのほうが大きいタイプ。以前、ふられたときは、この世の終わりかと思うほど打ちのめされて、変な占いにもいっぱい行っちゃいました!
そして今。結婚。したいです。はい、結婚したい(笑)。いや、“結婚”という言葉が合っているのかは、わかりません。誰かの人生を支えてみたい。そしてやっぱり自分も誰かに支えられたい。夜中に起こして「ねえ、聞いて」って言える相手って、親でも女友達でもなかったりするんですよね。そんな風に支え合って生きていくことは、私の人生にとって大切なこと。それに近いのが結婚だとすると、結婚したい。
■どちらかというと恋愛至上主義
パートナーに求めるものは本当に年々、少なくなっています。仕事というぶれない軸がしっかりしたから、相手に安定や収入なんて求めなくなったのかな。人としての魅力という点では、あえて言えば、仕事が好きな人がいいです。どんなに一流な肩書きの男性でも、働く事が嫌いな人の仕事の愚痴を聞くのが、私は嫌いなんだって自覚したから。それでも昔は、やっぱり世間的に「いいね」と言われるパートナーを選んでいた気がします。高級というだけで、周りのみんなと同じバッグを選んでいた頃の話です。
これから生きていく中ではっきりと言えるのは、他人の尺度で測った価値は、苦しくなるということ。一般論でもなく、他人の評価でもない。自分のものさしで判断して、人生を進んでいくことが大切だと実感しています。
ただし恋愛は……。自分だけの気持ちじゃダメなんですね。さらに私は、友達に「アイツはやめとけ」って言われても、ときに聞けないこともあったりする。でも自分の価値観で始めた恋は、たとえ失恋しても自分らしい、いい恋だったかな。
そして計算とか余計なものが抜けて、土台がしっかりしたから? 頭で考えずに、相手にダッシュできずアラフォーからの恋が、すごく楽しい。
告白すると、現在はリハビリ期間中。終わった恋を引きずっています。でも大丈夫。この冬は写経セットや温泉旅行を用意していますから、それで乗り越えようかと! そしてしっかりと“さみしさ”を受け止めて、また新しい恋を始めるつもりです。
その恋が、形式的な結婚というカタチに収まるかどうかはわかりません。でも間違いなく、私らしい素敵な恋です。
[終]