20世紀の女性賛歌『20センチュリー・ウーマン』は胸に響く珠玉の名作- 古川ケイの「映画は、微笑む。」#13
ゲイをカミングアウトした自身の父親を題材に描いた前作『人生はビギナーズ』で大絶賛されたマイク・ミルズ監督が、自身の母親をテーマに6年ぶりに発表した新作『20センチュリー・ウーマン』。本年度アカデミー賞で脚本賞に見事ノミネートされた本作は、ミルズ自身の母親だけでなく、20世紀を生きたすべての女性たちへ贈るラブレターだ。
◼︎アカデミー賞脚本賞ノミネート! マイク・ミルズ監督の長編映画3本目
本日DRESS読者のみなさんにおすすめしたいのは、マイク・ミルズ監督の『20センチュリー・ウーマン』です。
前作『人生はビギナーズ』(2010)で、ゲイであることを75歳のときにカミングアウトした自身の父親との関係性をテーマに描き、大絶賛された同監督。
続く本作では、今度は自らの母親をモデルに「母と息子」の物語を書き上げ、自身初のアカデミー脚本賞にノミネートされました。
◼︎『20センチュリー・ウーマン』気になるその物語は?
1979年、サンタバーバラ。
55歳の誕生日を迎えたドロシア(アネット・ベニング)は、一人息子のジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)と共にスーパーにパーティーの買い出しにきていた。
ジェイミーは15歳、ドロシアが40歳のときに産んだ子だったが、ほどなくしてドロシアは離婚。以来、メーカーの製図室で働きながら、母ひとり子ひとりで暮らしている。
築70年以上の古いが大きな屋敷で暮らすふたりは、余っている部屋を20代半ばの写真家アビー(グレタ・ガーウィグ)や、元ヒッピーの便利屋ウィリアム(ビリー・クラダップ)に貸していた。
また、ジェイミーの部屋には、彼の2歳年上の幼なじみ・ジュリー(エル・ファニング)が忍び込んでいた。次から次へとボーイフレンドを乗り換えていくジュリーにとって、ジェイミーだけが唯一心を許せる存在。
ドロシアは、ジェイミーと年の近い、アビーとジュリーのふたりの女性に、思春期を迎えた息子を見守ってくれるように頼むが……。
◼︎マイク・ミルズ監督による、息子から母へのラブレター
マイク・ミルズ監督ならではの美しい映像と音楽に乗せて本作で描かれるのは、不器用な親子と、ふたりの個性あふれる女性。
戦前の「大恐慌時代」に生まれたシングルマザーと息子の一夏の物語を、自身の母親をモデルとして魅力たっぷりに作りあげています。
そして、20世紀の終わりにかけて力強く突き進んだ女性たちへの賛歌となっている点が、この作品の見逃せないポイント。
いつの時代も変わらず、悩み、もがきながらも美しく生きようとする女性たちの姿に、思わず涙がこぼれます。私たちの母親や、そのまた母親世代に思いを馳せながらご覧ください。
1979年という歴史の転換期、パンクロックやフェミニズムと、語るに事欠かないテーマがあふれる本作『20センチュリー・ウーマン』は、今週末6月3日(土)より全国公開です。
◼︎『20センチュリー・ウーマン』公開情報
『20センチュリー・ウーマン』 ※PG12
6月3日(土)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国公開
監督・脚本:マイク・ミルズ『人生はビギナーズ』
出演:アネット・ベニング『アメリカン・ビューティー』、エル・ファニング『ネオン・デーモン』、グレタ・ガーウィグ『フランシス・ハ』
配給:ロングライド
上映時間:119分
公式サイト: http://www.20cw.net/
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