「不倫だけどひとりよりマシ」という言い訳が幸せを遠ざける。信じるべきなのは「男」ではなく「自分」
不倫をする理由に、「ひとりよりマシだから」と答えるアラサー女性。ドライな感情かと思いきや、その裏では「孤独が怖い」という不安を抱えていました。不倫は楽な関係に見えて、成就することのない気持ちばかりが溜まります。そんな彼女が信じるべきなのは、既婚の彼ではなく自分自身なのです。
■「ひとりよりマシ」=「ひとりが怖い」
「何で不倫なんかするの?」と思わず尋ねてしまう、まったく普通のアラサー女性。
正社員でしっかり働いていて、趣味も充実していて、その気になれば独身男性の彼氏なんてすぐ作れそうな可愛らしい雰囲気を持つ彼女ですが、不倫相手との関係が上手くいかないことに悩んでいました。
不倫なんて考えそうもないと一方的に思っていた私は、話を聞いてショックを受けます。
それは、不倫から遠いところにいると思っていた女性が実際は何年も既婚男性と付き合っていたことより、その理由が「だって不倫でも一人よりマシだから……」というものだったから。
「じゃぁ普通に彼氏を作ればいいじゃない」と言うと、「独身の男は結婚とかいろいろ面倒くさくて。そこまで考えてないし」というあっさりした答え。
そんなことより、彼女の頭の中は「どうやって不倫相手を引き留めるか」でいっぱいでした。
引き留めるならすごく好きなのかというとそうではなく、「また一人に戻るのが嫌。好きなときに会える彼がいい」と、何とも都合の良い気持ち。
でも、これを聞いたとき、「本当は一人になるのが怖いんだな」と私は思いました。
不倫というと既婚男性に振り回される独身女性を思い浮かべがちですが、実際は自ら望んで「成就しない関係」にすがりつく女性もいます。
絶対に幸せな結末にはならないとわかっていても、あえて不倫という関係を選ぶのは、孤独に耐えられない自分の心から逃げているから。
「不倫でも一人よりマシ」という言葉の裏には、「本当は真っ直ぐな恋愛が怖くて一人ぼっち。不倫なら責任を持たなくていいし、孤独を感じなくて済む」という弱さがあります。
■本当は愛されたい
彼女は、20代の頃付き合っていた男性に二股をかけられて、ひどく傷ついた経験があります。
それからいわゆる「男性不信」になり、自分に近づいてくる独身の男性に対して「裏があるんじゃないか」と好意を素直に受け止めることができなくなっていました。
信じていた男性に裏切られた痛みは、「男性の愛情を信じない」という形で彼女の中に居座り続けます。
それが不倫を選ぶことにつながります。
既婚の男性は、最初から信じることができません。つまり、「本当に私だけを愛してくれているのか」という疑いを持つことがないので、彼女にとっては楽な付き合いなのです。
会っているそのときだけ満たしてくれればいい。そうすれば、「本当は一人ぼっち」という事実から目を背けていられる。
奥さんがいるんだから、私だけを愛するはずがない。だからこちらも本気にならなくていい。
そんな気軽な付き合いを彼女は演じていたかもしれませんが、本当は猛烈に愛されたいと思っていたはずです。
「裸の写メを送って」とか、「下着が見たい」とか、危険な「痕跡」を彼女は既婚の彼に対してたくさん送っていました。
「それ、絶対止めた方がいいよ」と強く止めたのですが、請われるままに彼女は応え続けます。
そんな危険をどうして冒すのか。
それは愛されたいからです。
彼女が言う「不倫ならいつでも別れられるし」という言葉が本当なら、わざわざ相手のいやらしい要求に応えてあげる必要はありません。
むしろ、別れた後のことを考えると、そんな自分の姿を不倫相手の手元に残すことは避けるはずです。
それでも送ってしまうのは、相手に喜んで欲しいから。
もっと自分を求めて欲しいからです。
既婚の彼が欲しがっているのは自分の肉体だけだとわかっていても、「綺麗だね」「早く抱きたい」と返事がくれば嬉しい。
愛されていると実感できるから、それが幸せだから、言われるがまま送ってしまう。
本当は愛されたい。でも、男性を信じるのは怖い。
不倫なら「最初から結ばれない」という言い訳ができるから、信じて裏切られることがないから、諦めていられる。
傷つきたくない、というのが彼女の本音でした。
■信じるべきなのは「男」ではなく「自分」
結局、不倫相手の妻にふたりでいるところを見られ、彼が浮気を疑われた時点で、彼女は彼と別れました。
彼を自分の元に引き留めるために必死で「いい女」に磨きをかけていたのに、彼の方は「バレそうだから」とあっさり彼女から離れていきました。
何年も関係を続けていても、バレる危険性が出てきたら男性は一瞬で保身に走ります。
どんなに色っぽい姿を晒しても、要求に応えても、不倫相手の彼女を選ぶことはありません。
もちろん、そんな可能性を彼女も考えなかったわけではないだろうけれど、いざ別れが訪れるとひどく落ち込んでいました。
「頑張ったのになぁ」とため息をつく彼女に、私は「もう不倫は止めた方がいいよ。努力がもったいない。報われる相手にしなよ」と何度も言いました。
どんな形であっても相手のために努力できるのは、普通の恋愛ならもっと幸せなはずです。
彼女が本当に求めている「愛されること」は、不倫では叶わない。何度繰り返しても、結局孤独は変わらないのです。
男性不信を克服しろとは言いません。
信じるべきなのは、「男」ではなく「自分」。
「自分はまともに愛されるべき存在なんだ」と、まず彼女自身が思わないと、いつまでも「愛してくれない人」ばかり選んでしまうことになります。
傷つくのが怖いなら、傷つくであろう自分ごと、愛してあげる。
痛みは相手に癒やしてもらうのではなく、自分で癒すことができます。
■自分を愛することでまともな恋愛ができる
本当は、独身男性とまともな恋愛がしたいはず。普通に幸せになれるお付き合いを望むはず。
彼女にそう伝えることはなかったけれど「自分の幸せは自分で決められるんだよ」と言い続けました。
相手にコントロールされる不倫のような関係に望んで飛び込んでいては、いつまでも自分を愛することができません。
現在、彼女には独身の彼がいます。かつての不倫相手を忘れるために始めた趣味の場で出会った彼は、面倒見のいい優しい人。
今度はきっと、孤独に怯えることなく彼を愛することができる彼女になりますように。