セクシーな写真の撮り方。自分の体を好きになるランジェリー姿を 2/2
■いつの間にかセクシーな「艶っぽい私」に没入している
部屋を移動して壁に手をついて、おしりを突き出したポーズもとる。事前にらむさんから「ポージング例」をまとめたアルバムをLINEで共有してもらっていたが、「こんな海外の美人モデルさんみたいなポーズ、真似できるわけがない。顔もスタイルも全然違うし……」と、ポーズを練習することは一度もなかった。
そのことを、らむさんに正直に伝えると「任せてください」と言ってくれる。その人の魅力を引き出すポーズを、一つひとつガイドしてくれるので、それに沿ってくれたらいいという。
「〜なポーズを」「もう少しこちらにひねって」など、セクシーな写真を撮るカメラマン視点の指示通りにポーズをとっていく。本当にだんだん楽しくなって、いつの間にかノリノリになっていて、自分から「手はここでいいですか?」など、ポーズの提案までしていた。
ピンヒールを履いて鏡の前に立ったり、座ってあぐらをかいたり、シーツの上に寝転がったり――。引きで、上から、カーテン越しに、などいろいろな撮られ方を繰り返す。
らむさんはちょこちょこと動き回り、被写体と向き合い、その度にシャッターの音がやさしく響く。とにかく次から次へと撮ってもらううちに、時間の感覚を失っていた。
きりのいいところで、もう1着の白いランジェリーに着替えると、Tバックだったせいか「おしりが素敵!」「おしりばかり撮っちゃう」など、ベタ褒めされてうれしくなる。
自分の体に自信はない。むしろできることなら改造したい部位だらけだが、自己否定も度を過ぎるとつらくなるので、自己肯定感もどきで覆い隠すようにしている。
■セクシーな写真を撮ることは、なぜ「ヌードフォトセラピー」と呼ばれるのか
どうやら撮影時間は1時間半に及んだようだ。驚いた。着替えた後に2杯目のハーブティーをいただいて終了。
サロンを発ってから1時間程度で、130枚近い写真データが送られてきた。200〜300枚撮影してくれた中から、使えないものを抜いて、ほぼすべてデータとして受け取れる。
この日、センシュアルフォトを体験してみて、リピーターになる女性が少なくないこと、北は北海道から南は沖縄からお客さんが集うこと――その理由がはっきりとわかった。
ランジェリー姿で写真に撮られる、という非日常。モデルでもなんでもない自分が、被写体としてカメラに見つめられるこそばゆさ、快感。
包容力を感じさせる美しい女性・らむさんから、発せられ続けるポジティブな言葉。それによって、少しずつ湧き出てくる自信。
途中「こんな感じに撮れていますよ」と見せられる、予想外に艶っぽい自分の姿に「けっこう、いいかも?」とふくらむ自己肯定感。そういった諸々がやみつきになるのだと思う。
そういえば、ヌードになるわけではないのに、なぜセンシュアルフォトは別名「ヌードフォトセラピー」と呼ばれるのか――数日経って、自分なりに解釈できた。それは、体こそ裸にならなくても、カメラの前で心だけは一糸まとわぬ姿になる必要があるからだ。
そうでなければ、人前でランジェリーを着用しただけの姿で、リラックスなんて到底できない。カメラを向けられたら構えてしまうのが、ごく普通の一般人。
構えずに、カッコつけずに、脱力した状態でカメラに体を向けているとき、心は裸になっていた。不要なものを脱ぎ捨てていた。
送られてきた写真の、薄く笑っていたり、目を閉じてうっとりしていたり、やわらかく笑っていたり……そんな自分の表情を見ると、自宅でくつろいでいるかのような、いい感じに抜けた顔をしていた。
Photo/西川らむ
センシュアルフォト
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