「鉄道は女性におすすめの趣味」――鉄道オタク女性(鉄子)に聞く
鉄ヲタなら誰もが知る漫画『鉄子の旅』。この「鉄子」は鉄ヲタな女性を指すときにも使われる言葉です。今回は鉄道ヲタクな女性をインタビュー。鉄道への愛を余すことなく語っていただきました。
何かを愛する女性は、情熱的で魅力的。その偏った愛を存分に楽しめるのが、愛するものに投資する財力・余裕のある、大人の女性の醍醐味ではないでしょうか。
今回は、鉄道を愛してやまない、コラムニスト・東香名子さんにお話を伺いました。鉄道を愛する女性のことを「鉄子」と呼びますが、鉄子の実態はまだまだ謎だらけ。
――鉄道ヲタクの種類として、「乗り鉄」「撮り鉄」などがありますが、東さんはどのタイプですか?
メインは「乗り鉄」ですね。休日ふらっと乗りに行くこともあります。朝起きて「あ、今日は〇〇線に乗ろう」と思いついてすぐに行動することも。路線図を見てコースを決めて、切符や時刻表を調べて。遠出するときは、切符の方がお得な場合もあるんですよ。あとは「音鉄」でもあるかな。たまに、駅メロを聞きに出かけることもあるくらい。
――駅メロですか? お気に入りの駅もあるのでしょうか?
もちろん! 福島の会津若松や弘前、函館……北の駅にお気に入りが多いですね。
■「ダサい格好で出かける」のは乗り鉄ルールのひとつ
――さすがですね! 東さんは、乗り鉄を楽しむ上でマイルールはありますか?
地元に馴染むことを意識しています。地方だと都内でするような格好だと、正直浮くんですよね(笑)。おしゃれに決め込むことはせず、カジュアルに動きやすいことがマスト。また髪型も電車に乗るとき、ポニーテールは絶対しません。座ったときに髪が崩れやすいヘアスタイルでは、電車を存分に楽しめないから。車内は空気が乾いているので乾燥対策も大切です。
――地元に馴染むのを意識するというのは、その路線への愛着やリスペクトからくるのでしょう。乗り鉄活動は、ひとりで行うことが多いですか?
そうですね。休日ひとりで時刻表を眺めて終わる日も(笑)。つい夢中になっちゃいます。ときどき乗り鉄仲間と一緒に活動することもありますよ。以前、鉄子3人でクリスマスパーティを電車に乗りながらしました。お酒を飲みながら、景色やガールズトークを楽しんだんです。他にも、ビアトレインというビアガーデンを車内で楽しめるものや、日本酒を飲む升がチケットになったイベントなど電車のイベントは日々進化しているんですよ。
■電車に乗っている時間は自分と向き合うための大切なひととき
――鉄子でなくても、興味がわいてきますね! 鉄道をこよなく愛する東さんですが、小さい頃から鉄道ヲタクでしたか?
私が鉄子デビューしたのは、大人になってからなんです。実際に乗り鉄として活動を始めたのは3年前。YouTubeで撮り鉄の人がアップした動画を見て、実際に自分も行ってみようと思い立ったことから。でも思い返せば、以前から片鱗がありました。
――というのは?
子供の頃、ゲームの「桃太郎電鉄」で遊んでいたときに、実際に行ってみたいなーと思っていました。大学時代には、成田エクスプレスでバイトもしていましたし、留学先のドイツの時刻表を見て国を跨ぐ路線にロマンを感じていました。
――それは、かなり鉄子の素質が詰まっていますね(笑)。現在、さまざまな路線を楽しんでいる東さんは、鉄子として夢はありますか?
いつか、シベリア鉄道に乗りたいと思っています。日本の路線ももちろん好きですが、国々を行き来する鉄道への愛は大きいですね。日本でもいつか、外国につながるような路線がデビューしたら興奮しちゃいます(笑)。
――鉄子ライフを満喫している東さん。今では、鉄道を楽しむ時間はなくてはならないそう。
忙しい毎日を過ごしていると、定期的に何もない山や海といった田舎の風景を見たくなります。そんなときにお気に入りの路線は東海道線。都会の景色から海が広がった瞬間の開放感は最高です。電車に乗っている間は、考えごとをしたり、自分と向き合えたりするので、今の私にとって必要な時間です。
■スムーズな乗り換えよりも、駅の散策を優先
――鉄子人生の中で、周りとの感覚とのズレを感じたことはありますか?
最近は、鉄道ヲタクへの理解が広がっているので、偏見は少なくなりました。ですが、友達との旅行では楽しみ方が異なることもしばしば。多くの人は、目的地に「いかに早く行くか」ということを重視して交通手段を考えますが、私は「どう行くか」が大切。乗り換えを素早く行うよりも、たっぷり時間を取り、駅を散策する方が好きです。ときには、現地で「乗りたい路線があるから、ここから自由行動しよう!」と別行動を取り地元の路線を楽しむことも(笑)。
――確かに、その発想はなかなかありませんね(驚)!
友達が私を理解してくれているのはありがたいなと思います。私は、鉄道ヲタクであることを公言しているので、同じように鉄子の友人にも出会いました。鉄道好き同士のラインでは、自分のことを路線で呼ぶんですよ。たとえば、「東線、ただいま遅延しております」など、路線をもじったトークはかなり盛り上がります(笑)!
■鉄道は、実はモテ趣味だった!
――それは、楽しそう! 他にも、鉄道好きであることをオープンにしているといいことがあるんだとか。
実は、鉄道はモテ趣味なんですよ。飲み会の自己紹介で話すと、意外と食いついてくれる男性も多くて、会話も盛り上がります。鉄道ヲタクでなくても、電車は全国どこにでもあるものなので、出身地の鉄道など話題は豊富なんです。実は女性におすすめの趣味!
――鉄道がモテ趣味だったとは! 東さんは、女性こそ鉄道好きになりやすいと語っていますね。
乗り鉄のバイブルとして、路線図ブックがあります。自分が乗った路線をどんどん塗りつぶしていくのですが、だんだん地図上に色が加わっていくのが快感! 鉄道はただ乗るだけなく、景色を楽しんだり、降りた駅で美味しいものを食べたりと、お出かけ好きな女性にとって楽しめるポイントがたくさんあるんです。
東さんの話を聞くと、筆者も鉄子ライフを楽しんでみたいと思わずには入られませんでした。鉄道への愛を語る姿は、キラキラと輝きその魅力に引き込まれてしまいます。
これからは、毎日乗る鉄道もスマホで下を向いてばかりではなく、景色を楽しむことから始めてみようと思います。
東香名子さん
1983年生まれ。コラムニスト。元女性サイト編集長。趣味は鉄道と語学。恋愛や著名人インタビュー、鉄道ネタなどを執筆。雑誌やWebで連載多数。テレビ、ラジオなどへのメディア出演も多い。
Text=横山智世
いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。