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「お母さんがふたり」もひとつの家族の形

東小雪さんと増原裕子さんのコミックエッセイ『女どうしで子どもを産むことにしました』のブックレビューをお届けします。

「お母さんがふたり」もひとつの家族の形

市区役所が同性パートナーシップ証明書を発行したり、保険会社が同性パートナーでも死亡保険金の受け取りを可能にしたりと、LGBTと呼ばれる性的マイノリティーの人々が、生きやすくなるような取り組みが広がっています。

さて、DRESS世代の女性にとって、ぱっと思い浮かびやすい女性同士のカップルといえば、2013年3月、東京ディズニーシーで初の同性結婚式を挙げ、国内外で話題を集めた東小雪さんと増原裕子さんではないでしょうか。

2015年には渋谷区パートナーシップ証明書の認定カップル第1号となりました。そんなふたりは今春、コミックエッセイ『女どうしで子どもを産むことにしました』(著:東小雪、増原裕子 漫画:すぎやまえみこ)を刊行しています。

そもそもどうすれば、女性同士のカップルが子どもを持てるのか――よくわからない、という方もいるでしょう。いくつかある方法のなかで、シリンジに入れた精子を排卵日にあわせて膣内へ注入する「シリンジ法」が、ふたりには合っているようでした。

シリンジ法を実行するには、ネット通販などでシリンジを入手するだけでは足りません。当然欠かせないのは、精子提供者(ドナー)。ふたりは周囲の信頼できる男性数人と会い、真剣にお願いするものの、OKしてくれる相手はなかなか見つかりません。

精子を提供する男性にとって、産まれてくる子どもは、戸籍上関係を持たないとはいえ、自分の分身という意識もあります。それもあって、家族やパートナーまでも巻き込む、大きな問題になることも。それだけに気軽に「いいよ!」と即答できない事情があるのです。

ドナー探しに難航したり、テレビ出演で妊活中だと語ったことで、世間から「産まれてくる子どもがかわいそうでは?」と言われたり……苦戦する時期がしばらく続いたふたりでしたが、数ヶ月後、一度はドナーになることを断られた友人の「コウくん」の協力が得られることになりました。

シリンジ法を試して、その後どうなったかは本書には綴られていませんが、今後の進展はおふたりの口から直接語られることになるでしょう。家族とは何か、親子とは何か、どんな家族の形があっていいじゃない。おふたりが生き方を通じて、そう示してくれているような気がします。

世の中にはさまざまな人がいます。今はまだ、その多様性が肯定・理解される土壌が整備できているとはいえないと思います。LGBTを含め、旧来の生き方や固定概念にとらわれない、あらゆる人々が心地よく生きられる社会にするには、私たち一人ひとりの自覚も関わってくるのだろう――そう考えさせられる1冊です。

池田 園子

DRESS編集長(2016年1月〜2020年1月)。

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