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私たちが今、「自由」に惹かれる理由

『DRESS』「Project DRESS」での人気連載や書き下ろしコラムを収めた経沢香保子さんの新刊『すべての女は、自由である。』が本日発売に。この自由な時代に、自分が望む人生を創り上げるヒントが満載です。WFP 国連世界食糧計画(国連WFP)職員の田島麻衣子さんによる書評をお届けします。

私たちが今、「自由」に惹かれる理由

「すべての女は、自由である」

この言葉に内心ドキッとさせられない女は、いないはずだ。

教育の機会が男女の差なく普遍に保障されるようになり、就職の機会も望めば建前上は一応均等に与えられるようになった世の中にありながら、私たち女はまだ「自由」という言葉に一種の憧れを抱いて生きている。

なぜだろう。

たとえばそれは、私たちが今日もたくさんのプレッシャーと闘いつつ、生きているからだ。

見えない将来への不安、常に仕事で結果を出さなければならない責任感、またその仕事を続けるか結婚を取るかの選択の難しさ、そして育児と仕事の両立への不安。昨日もそうだったし、明日もそうかもしれない。ああ、せめてこの悩みから自由になることができたなら。今日も笑顔で頑張りながら、皆、心のどこかでそう思いながら生きている。

そんな私たちに、「一度きりの人生だからこそ、そして選択肢が広がりつつある今だからこそ、自分の力で自分を幸せに」と力強く励ましてくれる本に出会った。経沢香保子さんの新著『すべての女は、自由である。』がそれだ。

社会が多様に変化しロールモデルが存在しない今こそ、チャンスの時期だと彼女は言う。今だからこそ、女性として生まれた幸せを最大限享受しながら、幸せな人生を自分自身で創りあげるべきなのだ、と戸惑い気味の私たちの背中をそっと押してくれる。

そしてこの本は同時に、彼女自身が自分の人生を通して挑戦し続けてきた「自由な人生」への挑戦記でもある。彼女自身が十字架と呼ぶ仕事上での失敗、そして介護を必要として生まれてきた御長女のこと。そこに綴られている出来事は建前などからはほど遠く、自分自身の人生と真剣に向かい合ってきた経沢さんの心の声と学びの数々に満ちている。心を揺り動かされずに読み進められる人はいないだろう。この彼女の学びの数々に耳を傾ける貴重な機会を、逃してはならないと思う。

■だから私たちが「自由に生きる」ために今、必要なこと


この本のメインテーマは、女性の自由な生き方について、である。

自由とは、字の通り、自らに由ると書く。私たちが普段なにげなく使うこの言葉は、実は仏教用語でもあるという。すなわち、自分の足で立つこと、自立をすること、そして限られた選択肢の中から、自分でよく考えて決断することを指すのだそうだ。

仕事上、途上国でたくましく生きる女性たちに長年接してきた私は、現場で女性たちを縛る社会的な慣習やプレッシャーを身近に見てきた。だから選択肢という視点から見れば、今の日本社会の幅の広がり方は完璧ではないにしろ、女性にとって追い風であることは事実だと思う。制度について不満を述べ始めたら、きりがないのはよくわかる。でも同時にこう考えることは、できないだろうか。

私たちの自由を今も縛っているのは、もしかしたら自分自身の思考かもしれない、ということを。

たとえばこうだ。


・失敗したらどうすればよいのか、という不安
・こんなふうに行動したら周りからどう思われるだろうか、という恐れ
・そして自分を不自然に追い込まなければ周りから認めてもらえないのではないか、という焦り

日常のこれらの思いに縛られて、もともと自らに由って立ち、自分でよく考えて決断できるはず力を、自らが放棄してしまっていることはないだろうか。もしどこかに心当たりがあったとしても大丈夫。なぜなら、私もその一人だから。


こうして失敗を恐れて自由な一歩を踏み出せない私たちに、経沢さんはこの本を通じてこんなエールを投げかけてくれる。「苦しい経験こそ、本質への近道」と。何歳からでも人生はやり直せるというその言葉は、2014年にカラーズを創業した勇気と実行力そのものをあらわしていて、説得力があることこの上ない。そうだ、失敗とは思い通りにいかないことではなくて、そこから何も学ばない姿勢を言うんだった。苦しい経験を乗り越えた私たちは、きっと人の痛みをもっとわかる人間になるだろう。そう。苦しい経験、ウェルカム。


そして周りの視線を恐れて自由な決断のできない私たちに対しては、「世間や他人の声に左右されない。自分のキャリアは自分で決める」ことをこの本は気づかせてくれる。最優先すべきは自分が本当にやりたいこと。好きなことに全力で取り組めば成果は必ず出る、という言葉はシンプルで力強い。私たちは他者目線ではなく、自分に与えられた「自分で選ぶ力」をもっと活用すべきなのだ。


また周りに認められたいがために、つい自分を不自然に追い込んでしまう私たちに対してはどうだろう。経沢さんは、「“好かれたい”を捨てて。“すべての人に信用されたい”は不可能」と強く語りかけてくれる。全員から好かれることが目的なのではなく、自分の想いを形にしていくことが人生。つまり順番が逆なのだ。周りから反対されたとしても、自分のしたいことに忠実に結果を出したとき、やがて周りからの信頼やサポートは自然とついてくるだろうと、彼女は言う。大切なのは自分という独自の色。私もその通りだと思う。

■自由に人生を歩む女性の後ろ姿は、凛としてキレイ

自由とは、他者によってではなく、自分の意思と責任によって進むこと。そんな人生を歩む人の後ろ姿がまさに凛として美しいことを、経沢さんは自分自身の人生をもって私たちに教えてくれているように思えてならない。

だから、どんな一歩でもいい。今人生の新たなステップを踏み出そうとしている人には、是非この本をお勧めしたいと思う。

「今がチャンス。そして私は一人ではない」

この本のページを最後までめくったとき、きっとそう思える自分と出会えるはずだ。そして自由な一歩を踏み出したあなたの後ろ姿に、憧れる誰かがきっと出てくるはずだから。

text=田島麻衣子


英国オックスフォード大学院修士課程修了。KPMG Japanを経て、現在、WFP国連世界食糧計画(国連WFP)職員。本年5月に第一子を出産予定。著書に『世界で働く人になる!』(アルク)。
Twitter:maiko_tajima
ブログ:http://maiko-tajima.jimdo.com/

国連WFPの公式ホームページ(日本語版)www.wfp.org/jp

DRESS編集部

いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。

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