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私、まだ「おばさん」じゃないですよね??【甘糟りり子の生涯嫁入り前】

年齢以上に若く見られることは、素直に喜ぶべきことか否か。

私、まだ「おばさん」じゃないですよね??【甘糟りり子の生涯嫁入り前】

厚化粧と若作りはしない。

いつ頃からか、老け込まないための、自分なりのルールになっている。厚塗りすると逆に肌の衰えが目立つ気がするし、若い子と似たような服を着れば、どうしたって自分の年輪が浮き彫りになる。
 
それから、筋肉を落とさないこと。ビンテージものの女の身体は、数字より形、形より質感が大切だと思う。正解かどうかはわからないけれど、美容の知識が少ない私は、その三つだけを頭の片隅に置いている。

四十代も残りわずかになってきた私だけれど、時々こんなことをいわれる。

「昔と変わらないね」
「その歳には見えませんね」

まあ、やっぱり、素直に嬉しいわけです。しかし、同時に若く見られて喜んでいる自分が、情けなくもある。それ、喜ぶことか?

年相応で若々しいのが一番かっこいい、というようなことを、数年前からいろいろな媒体で書いてきた。年齢を積み重ねたからこその貫禄があって、なおかつ年齢を感じさせない生命力がある人になりたい、とかなんとか。

 
しかし、あの頃、私はまだまだ若かった。青臭かった。正真正銘の「中年」、「おばさん」という年齢になると、年相応ってつまり、それなりに老けていなければならないのである。中年も真っ最中になって、やっと気がついた。

シワもシミもタルミも引き受けて、体型も多少は崩れているのが年相応。それが自然なことだ。
 

現実の私は、冬になるとレーザーでシミを焼いたり(海で遊ぶので、焼け石に水なんですけどね)、ジムに通ってトレーニングしたり、思いついたように食事制限をしたりもする。
 
そう、年齢を忘れるために必死なのだ。そりゃあ、多少、若くは見えるでしょうよ。全うに家族の世話をしている同世代の女性よりは。そんなこと、喜ぶべきではない気がする。
 

正直いうと、アンチ・エイジングという言葉はあまり好きではない。


最近よく見かける年齢不詳、実は中年っていう女性たちも苦手。美容医療で肌をぱんぱんにつっぱらせ、長い髪をふわふわと巻き、胸元のあいたミニ丈のワンピースでつま先立ちしている彼女たちだ。
 

自然に枯れていけないのはみっともない。でも、世の中をふたつに分けたら、エラソーなごたくを書いてばかりいる私も、同じ種類なのだろうなあ。

 
だからこそ、である。みっともないという自覚を持ちたい。この自覚があるかどうかは、けっこう重要だと思う。いい歳の大人なんだから。
 

年齢に抗うのはかっこ悪いことと自分にいい聞かせながら、それでもなお、抗いたい。ちょっとだけ。マイナス三〜五歳ぐらいをメドにね。
 

人間ですから、みっともないのは当たり前。って、ポエムみたいになっちゃった。
 

とはいえ、世の中には私なんかよりずっと、年齢を感じさせない、美しい四十代がたくさんいる。やっぱり、いいことだと思う。
 

いつだったか、十歳ぐらい年下の女友達に、私がいつまでもチャラチャラ楽しそうにしていると、勇気づけられるといわれたことがある。自分より上の世代が現役でいると、歳をとるのが怖くなくなるらしい。そんなこといわれたら、おだてに弱い私は張り切りたくもなる。

 

最後にひとつ、書き加えておきたいのは、もし、私が若く見えるのだとしたら、それは物書きとして発展途中もいいところ、半人前だから、かもしれない。これが私!  と胸を張っていえる作品を世の中に送り出したら、その時には少し貫禄がつくのではないかと、自分に期待している。

 

自分の最高傑作は次回作、そういえなくなったら、それが辞める時。いわゆる創造業(別のいい方をすれば、感動産業⇦かつて対談した時の糸井重里さんの言葉)に携わる人の間で時々、いわれる言葉だ。気がつけば物書きになって二十年近く。不安になることもあるけれど、そういう時はこの言葉を思い出す。
 
これをヒントに、こういい変えることもできないだろうか。
 
最高の自分は明日の自分。
 
多少のくたびれ感も味わいってことにしてしまおう。なんてことを書きながら、今日も私は少しずつ歳をとっているのだ。

Illustration / Yoshiko Murata

DRESS September 2013 P.35掲載

甘糟 りり子

作家。都市に生きる男女と彼らを取り巻くファッションやレストラン、クルマなどの先端文化をリアルに写した小説やコラムで活躍中。『産む、産まない、産めない』など著書多数。読書会「ヨモウカフェ」主宰。公式ブログ http://ame...

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