NYで学んだこと vol.2 【松井里加のちょとメイクが好きになる話】
あなたは自分のアイデンティティーやオリジナリティーについて問われた経験はあるでしょうか。ニューヨークという誰もが必死で生き抜こうとする厳しい競争社会の中でそれをどう生かし築きあげ、表現していくのか。私は最初の1年でラッキーなことにそれを学んでいったのでした。
始めの数か月、英語学校に通ううちに同じようにファッションの仕事を目指している人達と知り合うようになりました。中でもカメラマンの友達が自分の先輩で仕事をしている人を紹介してくれ、その人がテスト撮影をするチームに入ることが出来たのです。その人達は、まず誰もやっていないオリジナルのアイデアで作品を創るというクリエイティブ魂で、その情熱は私の魂にも火を点けました。
とくにビューティーの作品はハイモードな服でなくてもアイデアさえ面白ければ雑誌に投稿が出来、ヨーロッパのファッション雑誌などに掲載されるチャンスが生まれるシステムでした。だからアートや映画などから掘り下げてアイデアを出すのだと言われ、必死に美術館に通い、本を買い漁り、古い映画を観まくりました。皆で面白いビューティーの作品を創るため日夜意見を出し合いました。
そして2つの20ページを超える作品が出来上がったのです。 1つは撮影したプリントの上にパウダーやエクステンションへヘアを載せて3Dに展開するダイナミックな構成によるビューティーでした。面白いと思ったのは書道や屏風絵のような日本的要素を意識していないのに作品に表れていたのです。
もう1つは文明の女神をビューティーで創るといった発想でマヤ、インカ、アフリカ、エジプト、中国などでメトロポリタン美術館に通い詰めました。アート色の濃い作品が出来上がりました。こうして最初の1年で共に刺激し合いながら、突き詰めて作品を創っていける素晴らしいチームに出会い、試行錯誤のテスト撮影を繰り返すうちに、自分の知識や感受性のオリジナリティーで勝負すること、またそれをどう掘り下げていくかを学びました。
1年間と決めていた留学をもっと彼らと作品を創りたいという思いに駆られ、ニューヨークに留まる決心をしました。この作品を持っていよいよニューヨークのエージェント周りが始まり、ファッションショーチームに参加出来ることになるのですが、そこには恐ろしい挫折が待っていたのです。
(VOL3に続く)