『賢者の贈り物』に学ぶ、大切な人に贈って本当に喜ばれるプレゼントの選び方
バレンタインデーや誕生日などの記念日に、恋人や家族、想いを寄せる人に、どんなプレゼントを贈ろうか悩んでしまうことはよくあること。値段は? ブランドは? パートナーが好きなものって何だろう……?
■本当に喜ばれるプレゼントって何?
みなさんは、愛するパートナーへどんなプレゼントを贈りますか? 自分があげたいもの? 相手が欲しいと言っていたもの……?
そんなプレゼントにまつわる、こんなお話があります。「1ドル87セント。それで全部。しかもそのうち60セントは小銭でした。明日はクリスマスだというのに。」
これは、有名な「賢者の贈り物」という物語の冒頭。アメリカの作家、オー・ヘンリーによる短編小説で、贈り物をめぐる行き違いを描いた作品です。
主人公は貧しい夫婦。夫のジムは、祖父と父から受け継いだ金の懐中時計を大切にしていました。でも、吊るす鎖が買えず、みじめな思いをしています。妻のデラは、美しく長い髪の持ち主で、くしが欲しいと思っていましたが、お金がないので、諦めていました。
貧しい夫婦でしたが、クリスマスには、お互いにプレゼントを贈りたいと思いました。夫のジムは、大切な懐中時計を売って、妻のためにべっ甲のくしを買います。妻のベラは美しい髪を切って売り、夫のために懐中時計の鎖を買いました。
髪を切ってしまった妻のベラにとって、くしは必要ないものです。同じく、夫のジムも、時計がないので鎖は必要ありません。ふたりは、お互いのプレゼントを買うために、自分の最も大切にしているものを犠牲にしてしまったのです。みなさんは、ふたりのクリスマスを、どう思いますか?
今回はこのお話しを元に、プレゼントについて考えてみましょう。
1.何が欲しい? と聞かなかった
ジムとデラは、お互いに相手の欲しい物を聞きませんでした。欲しい物を確認したほうが確実だし、自分だって欲しい物をもらえればうれしい。
でも、デラはジムが時計を大切にしていることを知っており、ジムは美しい髪を大切にしているベラが、べっ甲のくしを欲しがっていることを知っています。ふたりとも、互いを愛するがゆえに、相手が欲しいものをわかっているのです。
2.大切なのは金額やブランドではない
ジムの持っている懐中時計は、祖父と父から受け継いだものですから、お金で価値をはかることはできません。デラはジムに、プラチナの鎖をプレゼントしたいと考えます。プラチナも高価なものですが、デラは安易に高級品をプレゼントしようとしたわけではありません。ジムが大切にしているものに見合った物をあげたいと思ったのです。
ジムがプレゼントしたべっ甲のくしも高価なものですが、ジムもまた、ベラが何を欲していたのかを知っていました。ふたりの間には、相手に見合った価値を、互いに考えることができる信頼関係が存在しているのです。
3.どうやってプレゼントを手に入れたか
小説では、ジムがどれだけ時計を大切にしているか、デラの髪がどれだけ美しいかが詳細に描かれています。ジムは、デラのくしを手に入れるため、質屋にいき、交渉の末、なけなしのお金を手に入れます。デラもまた、自慢の髪を売ります。文中には美しい髪を刈りとられるシーンが、克明に描かれています。
ネット通販や量販店で簡単にものが手に入る時代。自らの足でお店にいき、時には手に入らないものを探し回って、相手へのプレゼントを手に入れることの大切さが、今こそ輝くのではないでしょうか。
■本当に大切なのは、時間と相手を想う気持ち
物語は、こうしめくくられます。
どこであっても、このような人たちが最高の賢者なのです」
お互いが欲しい物を理解できる深い信頼関係。それを手に入れるために、ふたりが費やした時間や労力は、お金やブランド価値に左右されるものではありません。相手のことを知り、自分のことを知ってもらう努力をすること。日々相手が求めることを考え、自分も相手にのぞむことを正直に伝えること。
妻のベラは、物語の最後にそっと涙を流します。最高のプレゼントは、物そのものの価値ではないようです。プレゼントするまでに何を考え、どう行動したかが、相手に伝わった瞬間……なのかもしれません。
「賢者の贈り物」は、青空文庫で全文読むことができます。とても短い物語ですので、この機会に本当に大切な贈り物について、考えてみてはいかがでしょうか?
恋愛ライター。LINE記事を得意とし、自立した女性へ向けた恋愛記事を多数執筆。