更年期に起こりやすい動悸の症状と対策。体の不調との上手な付き合い方
更年期障害のひとつの症状にも挙げられる「動悸」。実際に動悸を感じたとき、ヒヤッと不安に感じて焦ってしまいますよね。実は、更年期だけでなく、さまざまな原因が隠れていることが多いです。あなたは、どれが当てはまりますか? もしもの時のために、今すぐできることも見つけられるかも。
■更年期になると起きる動悸について
走った後、久しぶりに身体を動かした後、会議前に緊張しているとき、ホラー映画で恐怖を感じたとき……。誰もが「心臓ドキドキ・脈打つ」感覚を感じます。思い出すことができませんか?
これは、心拍が交感神経と副交感神経からなる自律神経によってコントロールされているためです。不安や緊張などを抱えたストレス状態にあるときは、交感神経が活発になり動悸を感じやすく・呼吸は浅くなります。逆にリラックスしているときには、副交感神経が活発になり、動悸はしにくく・呼吸は深くなります。
一方で、何も特別なことがないのに「心臓がドキドキする」「心臓が脈打つ」「胸に違和感がある」と感じる症状を「動悸」といいます。つまり、いつもは意識することのない心臓の拍動に違和感をおぼえたり、強く・早く感じたりする症状です。
場所やシーンも問わず寝ているときに症状が出るケースも……。
■どうして更年期になると動悸が出るようになるの?
更年期で動悸が出る原因としてはっきり分かっているわけではありませんが、原因として考えられているものをご紹介します。
動悸の原因その1.更年期障害などによるホルモンバランスや自律神経系の乱れ
更年期の時期では、卵巣の機能が衰え女性ホルモンの分泌がうまくできなくなります。
女性ホルモンは脳の視床下部によってコントロールされています。そのため、いつもより体内の女性ホルモンが減ったとき、視床下部は「女性ホルモンが減った」という情報をもとに女性ホルモンをいつも通りに出させようと信号を送ります。
しかし、いくら信号を送っても卵巣からは上手く女性ホルモンを作り出すことができません。この変化に、視床下部はパニックに陥ってしまいます。
視床下部は、女性ホルモンだけでなく、自律神経や免疫系の信号も送る仕事があるため、パニックを起こした状態になると、そちらにも影響が出てきます。
先ほどのご紹介した通り、自律神経は交感神経と副交感神経のふたつからなり、以下のような影響があります。
動悸と感じるのは、交感神経の方に偏ったときです。
更年期となったときは、通常は何かあったときに交感神経に偏るものが、何も特別なことがないときに交感神経の方に偏りやすい状態といえます(ストレスや社会的、環境的な要因も関係していると言われています)。
そのため「自律神経失調症状」として動悸や息切れなどの症状が引き起こされてしまうのです。
動悸の原因その2.不安神経症やうつ病などの精神的な要因
精神的なストレスが蓄積されることでストレスホルモンが増加したり、自律神経が乱れて不安に感じたりすると普通に打っているはずの心臓の鼓動を「大きく感じさせてしまう」ことがあります。
更年期の時期は仕事や家庭でもストレスを感じやすく、また抑うつ感、いらいら、不安感など精神的な症状を感じる方も多いです。
もしも、動悸が起こる場面が、
「悩み事をモヤモヤと考えてしまっているとき」
「苦手な場所や人間関係の中にいるとき」
「緊張する場面にいるとき」
などのような場面であったら、それは精神的なものも原因となっているかもしれません。
■動悸の予防にできること
自分でできることとして、日頃からリラックスしたり、ストレスや疲れを溜めないようにしたりすることが、交感神経ではなく副交感神経に偏らせることとなり、更年期で感じられる動悸の予防につながります。
①適度な運動
運動によって心臓や肺を健康に保ち、運動不足による動悸や息切れの予防にも繋がります。
ストレス解消や質の良い睡眠、脳の活性化など、良い効果がたくさんあります。
②健康的な食事
もちろん、食事も大切です。
バランスよく健康的な食事を心がけたいですね。
③質の良い睡眠
睡眠も大切に。
睡眠時間の確保が難しい場合は、寝る前のストレッチ・スマートフォンは使わないこと・寝る2〜3時間前までの夕食などで、睡眠の質を上げるという方法もあります。
④深呼吸・マインドフルネス
深呼吸の中でも、「腹式呼吸」にはよりリラックス効果や自律神経を整える効果があることが分かっています。
たくさんある呼吸法の中から、「4-7-8呼吸法」をご紹介します。
一緒にトライして見ましょう !
1:息を完全に吐き切ります。
2:鼻から息を吸いながら4つ数えます。
3:息を止めて7秒数えます。
4:8つ数えながら息をゆっくり吐き出します。
これを2〜4回繰り返します。
行ってみて、いかがでしたか ?
あなたの日々の意識が、感じている症状を楽にしてくれるかもしれません。
■病院に行くとしたら ?
動悸には、更年期だからこその原因の他にも、さまざまなものがあります。
ここでは、あなたの「動悸」の原因をはっきり突き止めることはできません。ですので、可能であれば病院に行き、検査を受けていただければと思います。ここでは、病院への行き方についてご紹介していきます。
ステップ1
心臓や肺など呼吸・循環器系の病気がないか、まずは呼吸・循環器内科を受診して検査をしましょう。甲状腺疾患の可能性もあります。受診された医療機関でご相談ください。
ステップ2
ステップ1で、心臓や肺など呼吸・循環器系の病気ではないことが分かったら、ストレスの影響や精神疾患などがないか、精神科や心療内科などの医療機関で相談してみましょう。産婦人科外来もしくは更年期専門外来にて対応が可能です。
■その他が原因の場合も
更年期だけでなく、複数の原因が関係してくることもあるので、ぜひ一緒にチェックしてみてください。
その他の原因その1.心臓の拍動の異常によるもの
心拍数が急に速くなったり遅くなったりするなど、心臓のリズムが乱れたとき、または心臓の収縮力が強まったときに、動悸として感じられます。
心臓の病気(不整脈や心不全など)が隠れていることがありますので、胸の痛みがともなう場合や呼吸困難もしくはふらつきがある際は、医療機関へのご相談を検討してください。
その他の原因その2.貧血
血液に含まれる赤血球の成分である、ヘモグロビンが不足することで、「動悸」「息切れ」「めまい」などの症状が現れやすくなります。
また、その前段階となる「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏症)」でも、身体に必要な鉄分が不足してしまうことで、さまざまな不調を感じることがあります。
その他の原因その3.バセドウ病
バセドウ病が原因で起こる動悸は、手の震え・体重減少・発汗多量・頻回の便・疲れやすくなる、などの症状 をともないます。
その他の原因その4.肺の疾患による酸素不足
慢性の肺の病気が進行するにつれて徐々に動悸も現れてくることがあります。
他にも、「蜂に刺される」「薬の副作用による急性の重症アレルギー症状」「ぜんそく発作」「食中毒」「熱中症などによるひどい脱水」「急性アルコール中毒」など、動悸の原因は本当にたくさんあります。
あなたはどれが当てはまりますか?
ひとつだけとは限りません。年齢に合わせた変化以外にも思い当たるものがあったら、それだけ対策できることの幅が広がるということですよね。
その中で、背景に重大な病気が隠れている場合があることを忘れてはいけません! もし動悸で悩んでいたら、まず最初に身体の病気について検査をすることがおすすめですよ。
医師監修プロフィール
院長 南 真実子
祖父や父が産婦人科医であったことから医師を志し、自身も大阪医科大学医学部へ進学。
卒業後、初期研修を経て大阪医科大学産婦人科教室に入局。主に腹腔鏡手術、不妊治療、周産期治療などに従事し、産婦人科専門医を取得。
検診業務にも従事し、マンモグラフィー読影認定医を取得。女性がいつまでも健康で美しく輝いていられるよう、さらなる高みを目指して、美容医療、アンチエイジング医療を行う。大手美容クリニックで活躍後、2017年に大阪美容クリニックを開院。婦人科・美容皮膚科を通じて、女性をトータルにサポートできるよう診療を行っている。
看護師保健師、ライター、テレワーカー、隠れ貧血女子。新しい挑戦をすることをこよなく好んでいます。