上質な暮らしは「捨てる」ことで手に入る。
余分なものとサヨナラする3つの方法
すっきりしたシンプルな空間で、自分の大好きなものだけに囲まれる生活――「上質な暮らし」と聞いて頭に思い浮かぶのは、そんな情景ではないでしょうか。でも、それはあくまで理想の話。現実はものが増えていく一方……なんて悩みを抱える人は少なくないのでは。
ものが大量生産される時代はとっくの昔に終わったものの、ミニマムな生活を実践できている人は一体どれくらいいるのでしょうか。片付けや断捨離の本がベストセラーになるのは、そういった人たちが少数派だからかもしれません。
ハードルが高いように感じる上質な暮らし。それをやさしく解説するのが『上質なものを少しだけもつ生活』(加藤ゑみ子、Discover21刊)です。上質な暮らしを実践する秘訣を「捨てる」というキーワードを軸に読み解いた本書をから、いくつか選りすぐってご紹介します。
1.暮らしに必要なものを減らす〜毎日使いたくなるものしかもたない
上質なものは「たくさんもつ」ではなく、「少しだけもつ」のが鉄則です。上質なものを必要以上に多くもつと、贅沢をしているようにしか見えない、というのが理由。そのために最初にすべきは、どうすればシンプルな生活になるか、現状を見直すことだと加藤さんは話します。
たとえば服でいうと、部屋着用の楽なTシャツとお出かけ用のおしゃれなTシャツなど、用途別にもつのではなく、自分に似合うおしゃれなTシャツしかもたない、ということ。そうしておくと、いつどこで誰と会っても気まずい思いをすることはなく、クローゼットもコンパクトになります。
食器も同じです。加藤さんが勧めるのは、利用シーンを選ぶ柄物の皿ではなく、ベーシックな白い磁器の洋皿を中心に揃えること。シンプルで上質な洋皿であれば、普段使いはもちろん、来客時に使っても違和感はありません。盛り付けを工夫すれば和洋中問わず、どんな料理にも対応できるのです。
暮らしに必要なものを少なくすることで、クリエイティブなアイデアが自然と生まれるのに加え、毎日のように使うものを選ぶとなると、良いものや自分の感性に響くものを見抜く目も養われるはず。また、少なくもつことで長く大切に使い続けようとする心も生まれます。
2.趣味に合致しないものは捨てる〜気に入らないものを妥協して使い続けない
言わずもがな、生活の基盤となるのは家です。家とは自分にとってホームグラウンドであり、心を落ち着ける大切な場所。そんなところに「趣味に合わないもの」を置いて、ストレスや不満を感じるなら、それらを目に見えるところから排除するよう、徹底したいものです。
何かの御礼などで、友人・知人からものをいただくことはあります。それがどれほど高価なものでも、いつかは使うだろうと思うものでも、趣味に合わなければ人にあげたり売ったりして、身の回りに置かないことが大事だと、本書では語られています。
この姿勢こそが、余計なものを増やさないコツ。自分で買い物をするときも同じで、あまり気に入らないけれど、今必要だしと妥協して買ったものは、後々理想のものと出会ったときに、やはりこちらが良い……と買い直した経験はありませんか。
我慢してそのまま使い続ける選択肢もありますが、その場合は感性が損なわれてしまう、と加藤さんは指摘します。上質なものを見抜いて、選べる感性を持ち続けたいなら、心がときめくものに囲まれた環境づくりをする必要があるのです。
3.ムダな時間を捨てる〜「◯分かけているか」時間の感覚を体に覚え込ませる
本書では「時間」についても言及されています。ムダな時間を捨てることで、質の高い時間は増えていくもの。では、ムダな時間とは、たとえばどんな時間を指すのか。加藤さんいわく「他人との約束の時間や自分が予定した時間を守れないことで生じる時間」だとか。そんな時間が1日24時間のうち、何割を占めているか計ったことがある人はいないでしょう。
他人が関わるもの、自分だけで完結するものを問わず、時間を守るベーシックな方法は、5分、10分といった時間の感覚を体で覚え込むことだといいます。それには5分で何ができるか、10分だと何ができるかといった形で、自分のとる行動と時間とを結びつける経験を積み重ねることが有効です。
朝起きてから食卓につくまで、その日のコーディネートを選ぶまで、一食分の洗い物を終えるまで……一体何分かけているか、ストップウォッチを用意して計ってみるのです。こんなに時間がかかっていたなんてと驚いたり、逆にこんなに短時間で動いていたんだと感動をおぼえたりすることもあるはず。
時間の感覚を体で覚え込むことは、イコール自分が今そのときやっている行為に対し、常に意識的であるということに他なりません。つまり、今何をしているか、何がゴールか、進捗状況はどうかなど、状況をクリアに把握できているということ。結果、無駄な時間をなくすことにつながるのです。
捨てることは、自分の好き嫌いを知ること。好みではないものを捨て、好きなものを残す――その工程で自分のセンスと向き合うことになり、感性はどんどん磨かれていきます。捨てるという行為は、自分自身をアップデートするのに必要不可欠な“儀式”なのかもしれません。
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