「不毛な恋」ほど忘れられない理由。依存を断ち切るためにすべきことは？
浮気や不倫、モラハラにDVなど、まともな関係を築けずに終わった恋愛でも、それが不毛であればあるほど実は依存が深く、未練を断ち切るのが難しくなります。ですが、よりを戻しても相手が変わらない限り、傷つく関係は変わりません。不毛な恋の依存を断ち切るためにある行動をとった女性の体験談を紹介します。
■傷ついた恋ほど忘れられない
35歳のある女性は、自己中心的で支配欲の強い男性とお付き合いしていました。最初は、その強引さや独占欲に「愛されている」と感じて愛情を覚えていた彼女ですが、いつのまにか彼の機嫌を損ねれば罵倒され、自分は悪くないのに謝罪させられるような関係になっていたといいます。
彼から食事に誘われたとき、そのあと彼女のほうから「次はどうする？」と言わないと「俺とはもう過ごしたくないんだろ」と決めつけて不機嫌になる。彼女が風邪をひいていても、「好きなら俺の心配をするはず」と仕事で失敗した自分を思いやらないことを責める。
どう考えてもおかしいと思う理屈でも、「ここで彼の言うことを聞かなければまた怒鳴られる」と彼女は必死に彼の満足を優先させていました。それが崩れたのは、ケンカ中に呼び出されてセックスを強要され、「今はそんな気分じゃない」と断った後のこと。
「あーあ、じゃあ風俗でも行こうかな」と突き飛ばされ、ショックを受けた彼女が部屋を飛び出しても一切のフォローはなく、数日後に「風俗に行ってきた。お前のせいだ」と彼から怒りの電話がかかってきたときです。この瞬間、彼女は彼に「今まで感じたことがないほどの嫌悪感を覚え、悪寒で体が震えた」そう。
ケンカ中にも関わらず呼び出してセックスを強制するおかしさも、断れば簡単に風俗を出すのも、そして実際に行ってきてそれを報告してくるおぞましさも、すべてが「生理的に無理」になった彼女。彼に別れを切り出し、“予想通り”それにキレた彼から、人格否定のような罵倒を散々ぶつけられて、関係は終わりました。
別れることができたのなら良かった。そう思っていたのですが、それから数日後、彼女から意外な言葉が飛び出します。
そわそわと落ち着かない様子で目を泳がせる彼女は、明らかに憔悴していました。それだけ別れた彼について考えていたのであり、彼女は「もう一度彼と話し合いたい」という願いを持っているのがわかりました。
あれだけ傷つけられ、自尊心を踏みにじられ、彼の姿に嫌悪感を持って自分から別れたはずなのに、いざ関係が終わってみればまた近くに行くことを考えてしまう。
これは、傷ついた恋ほど心に刻まれた衝撃が深く、その“刺激”を愛情と勘違いしてまた求めてしまう未練です。当然、よりを戻したところで同じことの繰り返しになるのは目に見えていて、彼女はまた大きな傷を受けるでしょう。彼からすれば「こんなことをしても自分を受け入れる彼女」の存在は傲慢さを許すばかりになり、むしろ以前より支配が強まる可能性があります。
それでも、彼女はそんな不毛な恋に自分の心を差し出すことを願ってしまうのです。
■「自分には彼しかいない」という依存
これだけ傷つけられても復縁の可能性を考えてしまうのは、「自分には彼しかいない」という依存があるから。
痛みの衝撃は、彼女から「自分は他人から大事にされるべき」という自尊心を奪います。軽々しく傷つけてくる彼は悪い意味で「普通じゃない」のですが、その認識が自分には“特別”に思え、いつしかまともな感情のやり取りを忘れ、「従う自分」「我慢する自分」を当然とします。
だから、別れてしまうと自分にとって特別だった彼の不在は不安定な気持ちを呼び起こします。「自分を痛めつける人」がいなくなったことで、これまで感じていた衝撃がなくなり、それが“愛情の喪失”のように感じられるのです。
「自分には彼しかいない」。こんな思い込みが、彼女にはありました。それが無意識であれ、別れたあとの彼女は「本当は反省している彼」「もっと話し合うべきだった自分」にしか意識が向かず、よりを戻す可能性にすがろうとするのです。
第三者から見ても、復縁したところで関係が改善されるとは思えません。ですが、彼女にはその現実が見えておらず、依存心に引きずられるまま元の泥沼に引き返そうとしていました。
■依存を断ち切るなら「音信不通」を選ぶ
「もし、彼が反省していなかったらどうするの？」そう尋ねると、彼女は黙ります。
「最後まであなたを罵るような言葉を吐きながら『俺も悪かったけど』って、自分のしたことについてはちゃんと謝ったの？」
「……」
彼女は気まずそうに横を向き、「でも、今なら彼も落ち着いていると思うし……」と、ぼそっとつぶやきます。別れてからまだ１カ月も経っていないのに彼との再会を望む彼女には、「早くしないと彼に忘れられてしまう」という焦りが見えました。
依存は、「自分を傷つける存在」の近くにいることを良しとします。ですが、それを許してしまえばまともな関係からは遠ざかるばかりで、結局いつまでも「本当はこうありたい自分」を見つけることはできません。
別れを選ぶ勇気を一度持てたのなら、元の泥沼に引き返す前に、まずは自分の心のケアに集中することが大切です。どうして別れたくなったのか。それは相手の姿に嫌悪感を覚えたから。その事実から目をそらさず、「相手を受け入れられなくなった」という感覚をきちんと理解することが、不毛な恋から自分を救う第一歩です。
そのためには、悪い依存によって引き寄せられてしまう彼の存在から、徹底的に離れる期間が必要になります。
不在にあえいでいる心は、彼の気配に敏感に反応します。彼を感じるたびに昔の衝撃を思い出し、そこに戻ることを意識します。なので、別れたのなら、次は音信不通を貫いて彼を遠ざけることが、正しく自分を取り戻すための努力です。
「彼のいない世界」で過ごせば、少しずつ心は回復します。 “痛みの不在による喪失感”は、実は愛情ではなく心の不安定さが呼ぶ空虚でしかないのだと実感すれば、彼のもとに戻るのがどれだけ不毛であるか、わかるはずです。
■「本来あるべき自分」を取り戻すこと
彼女はしばらく、彼に会いたい気持ちを抑えていましたが、「別れを決めたとき彼に対してどう感じたか」「彼のしたことを冷静に考えたときに許せるのかどうか」を突き詰めていくと、やはり「無理かも」と言いました。それが正しい感覚であり、そう思う自分の心こそ見るべきであり、やみくもに彼とやり直すのは自分をないがしろにすることと同じです。
そう伝えると、彼女はスマホを取り出しました。LINEのアカウントを削除し、電話番号は拒否し、SNSにあった彼のアカウントもブロックしました。
「もう、決めたときにやらないと自分が信用できない」彼女は低い声でつぶやきますが、内心では、こんなことをして彼の怒りを買う可能性に怯えているのがわかります。それでも、拒絶の姿勢を見せることは男性にとって大きなメッセージとなり、彼自身も彼女への依存を断ち切るしかない現実を知ることになります。
音信不通を貫くことは勇気がいりますが、その未練はそもそも間違いであり、「本来あるべき自分」を取り戻すために必要なステップです。自分を痛めつける人のいない世界で心をケアし、まともな感覚をもう一度つかみ直していく過程で、自分は本当はどんな関係を人と望むのかが見えてきます。
それを知り、叶えられる相手を見つけようとする心こそ、健全で愛情あふれる自分なのだと理解したいですね。
※ この記事は、2019年12月21日に公開されたものです。
