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セックスせずに振られるのが一番嫌【さめざめ 笛田サオリインタビュー】

性欲があることは当たり前のこと。だけど、誰もが性をオープンにできるわけじゃないし、自分の欲望をさらけだす人たちが、みんな恥ずかしさを感じていないか、と言われれば、答えはNOだと思う。

セックスせずに振られるのが一番嫌【さめざめ 笛田サオリインタビュー】

性に奔放になる・自由になることは決していけないことではないし、むしろ健康の証。とは言っても、「ビッチ」「ヤリマン」と罵倒されそうで怖いし、性欲があることは自然なこと――と言ってもまだまだ恥ずかしいという気持ちは消えない。

『愛とか夢とか恋とかSEXとか』『コンドームをつけないこの勇気を愛してよ』など、性愛に関する女性の気持ちをストレートに歌い上げるミュージシャン「さめざめ」の笛田サオリさんも、そんな気持ちを抱える女性のひとりです。

ドキッとするようなワードが散りばめられた楽曲を制作する笛田さんですが、実は彼女自身、恋愛や性に悩みながらも勇気を振りぼってきた過去があります。

笛田さんは、性やセックスにどのような思いを抱いているのでしょうか。お話しを伺いました。

■性に関する曲は反論があって当たり前

笛田サオリ(@ samezame_tweet ):1982年生まれ。鎌倉出身。音楽家・文筆家・作詞家・アクセサリー作家など多彩な活動を広げる。2009年に「愛とか夢とか恋とかSEXとか」の誕生をきっかけに笛田さおりのプロジェクトとして“さめざめ”の活動を開始。2012年には、シングル『愛とか夢とか恋とかSEXとか』でビクターエンタテインメントよりメジャーデビューを果たす。

――タイトルに「セックス」や「コンドーム」と入っている楽曲はなかなか出会ったことがないのですが、笛田さんはなぜ、曲に取り入れているのでしょうか。

もともと、性の悩みをそのまま歌詞にしている方は少ないな、とは思っていたんです。規制されている部分があるからみなさん曲にしないのだろうとわかった上で、「じゃあ私が誰もやっていないことをやってみよう」と。実際その言葉をあけすけに言ったら、みんなはどう感じるのだろう? 思っていることをなぜ歌わないのだろう? と不思議に感じたので、私は自由に歌わせてもらっています。

――批判などはありませんでしたか?

以前YouTubeにアップしていた『コンドームをつけないこの勇気を愛してよ』のコメント欄は荒れました(笑)。でも、ある意味反論は求めていました。というのも、世の中にはたくさんの良い音楽があるので、「良い」と同じくらい「これどうなの?」と言われる作品でないと曲として日の目を見ないと思っていたんです。反論があって当たり前だと思って作った曲でしたし、反論があったとしても「そりゃそうだ」と(笑)。

――過去のインタビューでは「コンドームをつけなくていいと推奨している曲ではない」とおっしゃっていますよね。

ちゃんと歌詞を聴いてくださる方にはわかるので、そこはもう人それぞれの感覚なのかなと。そういう意味ではちょっとかじって「下品だな」とか「下世話だな」と感じる人がいてもいいと思っているし、そこから何周かして好きになってくれたらうれしいです。反響自体は各々でいいし、逆に何もないほうが悲しいです。

――性がタブー視されたり、隠されたりする中で、笛田さんが感じてきたことはありますか?

私は他の国のことを知らないのですが、もうちょっと保健体育で性について教えてほしかったなと今は思います。私が高校生だった頃はSNSも発展していなくて、情報がなかった。

そんな中、みんなでちょっとエッチな内容が載っている女の子向け雑誌の『エルティーン(※)』を回し読みしていました。高校卒業後は、少しずつ大人の階段を登っていく友達と情報交換をしていましたが、結局自分がセックスするときになってからでないとわからないことが多かったです。

あけすけでなくてもいいんだけど、もうちょっと親切に10代の女の子に性的なことを教えてあげる環境があってもいいのではないかと思います。

※エルティーン:近代映画社から発行されていた雑誌(1981年7月創刊/2005年に休刊)。主に10代の女子を対象とした誌面構成で流行のファッションを先取りした誌面や読者モデルが掲載されていた。


私と同じ30代の人でも、そういう道を通ってこなかった人は本当に何も知らなかったりします。女の子同士って恥ずかしくてエッチな話ができない人もいるんですよね。私の場合は、聞けばちゃんと答えるので「今までこんなに深く話ができなかったから助かった!」と言われたこともあります。

■衝動でセックスしていた20代。今は“選ばれし人”とセックスをしている

――笛田さん自身が「性」について意識し始めたのはいつからですか?

私、10代まではずっと剣道一筋で生きてきて、周りに比べれば恋愛や性に関して遅咲きだったと思います。高校は推薦で剣道の強い学校に進学したものの、なかなかレギュラーになれず挫折。そこからギターを弾き始めて音楽の道へ進みました。

クラスでも地味で名前も覚えてもらえないような存在で、男子ともあまりしゃべれない。彼氏ができたことはあったけど、男女が仲良くしているグループには入れませんでした。10代の頃は殻に閉じこもっていた感が強かったです。

でも、20歳になって、それまで付き合ってこなかったような人たちと合コンに行ったり、夜遊びをするようになったりして、「こんな人もいるんだ!」と価値観がグンと変わりました。それから、いろんな人を好きになって、振られて、というのを繰り返していくうちに、性に対する考え方が変わっていったような気がします。

――「性欲は健康なときにしか宿らない」とTwitterで発信されています。この「健康」という部分で笛田さんが意識されていることはありますか?

性欲って本当に元気がないと湧いてこないじゃないですか。なので、楽しい恋愛をしていないと性を楽しもうってなりにくい。仕事や日常生活で疲れているとダメです。性欲は食欲と睡眠欲が満たされていなければ生まれないと感じています。

――相手と自分の気持ち良さを求めてセックスするのと、相手に嫌われないようにする依存的なセックスは違うような気がします。

そうですね。私の場合、セックスへの価値観は、年齢ごとに変わってきているんですよ。20代の頃は衝動的に生きるのが好きで、当時はセックス相手に依存に近いものを感じていました。ただ、誰でも良かったわけではなく、相手に興味があればするっとセックスできたという感じ。

30代になった今はその「果て」を考えてしまい、ちょっとめんどくさいなぁと思うこともあります。本当に好きでこの先付き合いたいという人ならばいいのですが、20歳の頃のように、興味本位だけでは動かなくなりました。慎重になっているというか。

――慎重になっているとしても性欲はありますよね。

ありますね。だから、選ばれし人とします(笑)。

――選ばれし人……?

結局、あまり好きでもない人とセックスをしても何も満たされない。20代のときもそうだったのかなと今振り返ってみて思います。どうでもいい人と5回セックスをするとか、興味が持てない5人の人とセックスをしても満たされない。だったら本当に自分が好きな人に雑なセックスをされたほうがまだマシかなと。

■セックスしないで後悔するよりも、セックスして後悔したい

――笛田さんは恋愛と性欲の区別をつけていますか?

つけられればいいんですけどね(笑)。

20歳のときは本当に区別をつけずにセックスできていたんですよ。それが30歳を過ぎてから多少なりとも自分に恋愛感情がないとできなくなってしまった。これはある意味自分の中の反省点です。もうちょっと気にせずに今まで通りできればいいのにと思うのですが、省エネになっています。

――自分は相手のことが好きだけど、相手はそうでもないという場合でも満たされますか?

満たされるよう脳のスイッチを変えます。

「自分は好きだけど相手はそうじゃないだろうな」とわかる場合でもポジティブに考える。それが悪い方向に発展することもありましたが……それでもしないよりはセックスしたほうがいいと思うタイプです。しないで後悔するより、して後悔したほうがいいなと(笑)。

「あのとき振られていたとしても告白しておけばよかった、セックスしておけば良かった」と。そのときの自分が「こうしたい!」と思ったことはしないと自分が納得しないというか。

――性的衝動に駆られる、というよりは、好きになった人との未来を描いているからこそセックスをする。でも、もしも相手が自分のことを性欲をぶつける対象としか見てくれなかったらどうですか?

そうですね。特に私の周りにいる女性は、その場の雰囲気でセックスしたとしても冷静になって考えている人が多いんです。でも、男性の中には目の前にあるセックスのことしか考えていない人もいます。

冷静にその先のことを考えている女性からすれば、好きな人とセックスするんだったら先にちゃんと告白してもらったほうが安心ですよね。そういったプロセスをすっ飛ばして、先にセックスしちゃうと、結局男性は何も考えていない……と思ってしまうのはあるかもしれません。

■性に奔放だとしても、恥ずかしさは消えない

私が最近困っているのは、恋愛に奥手な男子が増えていること。いわゆる世間では草食系男子と言われている人たちのことだと思うのですが、数年前、いいなと思っていた男性と4~5回デートして、最後には家の前まで連れて行って「送ってもらったし、よかったら家どうですか?」と言ったのに家も入ってくれなくて断られた経験があります。

こちらとしてもすごく勇気を出して誘っただけに落ち込みました。「君のおちんちんはどうなっているんだ!」っていう(笑)。

私にとっては、セックスをしないで振られるのが一番嫌。言い方は悪いけど「私と一回ヤってみたらどうですか? そしたら何か違う魅力があるかもしれないですよ」と思っているんです。ただ、そのときは相手が「一度関係を持ったらこの女、めんどくさくなる」と思われていて、そのステージまで進むことができなかった。

――セックスをする前から判断してほしい、と。

草食系を自称する男友達に「女性とセックスしたいとは思わないの?」と聞いたら「わかってくださいよ、もうちょっと誘ってくださいよ。傷つくのが嫌なんで」と言われて。こちらとしては「いやいや、グイグイいってますよ! それでさらに誘えって……」という気持ち(笑)。性に奔放な曲を作っているからといって、私も恥ずかしい気持ちがゼロなわけじゃないし、傷つくことを多少は覚悟している。それなのにもっと誘えっていうのはなかなか残酷だな、と。

歌詞にはできますが、気持ちを本人に伝えるってなかなか簡単なことじゃない。伝えた時点で何かが変わってしまうかもしれないし。そういう核心を突くものは慎重にいきたいし、シラフで言ったほうがいいときはシラフで言うけど、シラフじゃ通用しない相手もいるから、そのときはお酒の力を借りることもあります。

――笛田さんは遅咲きということですが、非常に濃い経験を積まれているように感じます。性に関して悩みのある女性に何かアドバイスをいただきたいです。

恋愛や身体、性の悩みは誰しも持っているものだと思います。

だから、相談できる人に打ち明けてみてほしいです。相談する相手は、自分と同じような友達よりも、自分よりお姉さんだったり経験を積んでいたりする人のほうが柔軟性はあると思います。

恋愛の相談もそうですけど、浮気されたこともしたこともない人に浮気の相談をしたとしても「もうやめなよ」としか言えません。どうしよう……と一緒に悩むのではなく、自分よりも性の知識がある人が身近にいれば一番いいですよね。

11月特集「性欲と情熱」

姫野 桂

フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やWebなどで執筆中。専門は性...

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