気持ち良さを求めてわかった、「抱かれたい」という欲求の正体
元AV女優で男の娘、現在は、タレント・作家、イベントプロデューサーとしても活躍する大島薫さん。そんな大島さんがオナニー(マスターベーション)に出会ったのは小学4年生のころ。性を追い求めることは悪いことではないーー性別にとらわれることなく、自身の気持ち良さを追求してきた彼が考える、性を楽しむ魅力とは。
■小学4年生、肛門に単四電池をいれてみた
アナルで物事を考えているなと感じる。
さて、急に飛び込んできた「アナル」という単語に皆さんはいまどんな感想を抱いていらっしゃるだろうか。
自分とは無関係な話題だなということで読み飛ばそうとしているところか、ダイレクトで性的なワードに顔を歪めているのか、またはワクワクとした好奇心を抱いているのか、もしくはそのどれでもないのか。
まずそれについてお話しする前に少し自己紹介をさせていただきたい。
ボクが男の娘AV女優として、男性でありながら女優という肩書でAV業界にいたのはもう4年も前のことになる。
元を辿れば18歳のころに生活苦からゲイビデオに出たのが、そういったメディアで男女問わず性行為を晒すきっかけなのだが、出演に至った経緯はもっと遡る必要がある。
だって、そうだろう。女性はともかくとして、男性に性器ではない穴を差し出すのなんて興味があったってなかなかできないものだ。知人のゲイ男性が痔になり、肛門科を受診した際も医者からこう言われたらしい。
「お尻の穴は一方通行ですよ」
数々のお尻を見てきた肛門科医ですらこういうのだから、まあ、アナルに異物を挿れるのにはそれなりのきっかけがある。
ボクの場合は小学校4年生くらいのころ。通学路で拾ったエロ本を見て女性がなにかを股間に挿入しているのを、これが自慰行為というものなんだと勘違いしてしまった。
女性の身体のつくりもしらないので、幼い当時のボクは「アナルに異物を挿れると、ひとりでも気持ちいいんだ!」と思ってしまったのだ。
だって、そうだろう。男性の自慰行為の姿を男性向けのエロ本が掲載するわけもなく、当時の大島少年からすれば初めて目にしたオナニーは女性のオナニーであり、オナニーとは挿入する行為なのだ。まったくもって純粋。ピュアの極み。
処理の方法がわからず、小4でありながら日々悶々としたものを抱えていたボクは、その日自宅に帰り、さっそく実践しようと試みた。
エロ本で女性がやっていたように、まずは指を挿入してみようとしたのだが、すぐに思いとどまった。小4とはいえ、なんとなく肛門は汚い場所という考えがあったのか、指が汚れるのではと思ったのだ。
とすると、汚れた指はどうする? 当然洗うだろう。それが問題なのだ。
だって、そのときのボクはそれがオナニーだと信じ込んでるわけだから、たとえば自室に籠っていた息子がいきなり洗面台で指を洗っている姿を見た父親はどう思うだろう、と。
「あ、こいつ、ヤッたな」
いや、そんなわけはない。そんなわけはないのだが、当時のボクにとっては父親もまた「肛門でオナニーをしている」と思っていたわけだから、これはバレるなと考えたのだ。
そこで目に飛び込んできたのが当時遊んでいたゲーム機の単四電池。これなら挿入後捨ててしまえばバレることはない。ちょうど棒状だし。それで、挿れてみたのだ。電池を。
初めて異物をあてがわれた肛門は、アルカリ溶液で満たされたその円柱形のものを飲み込んだ。いま思えば危険極まりない行為だが、結果無事だったのでそれは良しとしよう。
「良い子は真似しないでね」と当時良い子だった自分に代わり、ボクが付け加えておくことにする。
結論からいえば、初めて経験したその「オナニーらしき行為」は特別気持ちの良いものではなかった。ただ、いままで待ち望んでいたオナニーというものができたという達成感のみに興奮していたような気がする。
そんな「間違ったオナニー」をこのあとボクは中1まで続けることになるのだが、思えばそんな勘違いがなければ、生活に困ったからといって、「男性に抱かれよう」なんて発想も起きなかったのかもしれない。
いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。