「至高のセックス」のための映画5選 二村ヒトシ監督が厳選紹介
めくるめく映画の世界のなかにも「至高のセックス」のヒントは隠されているかもしれません。なまめかしい性描写によって性感を高められそうなものから、深い考察が得られるものまで。日本を代表するAV監督の二村ヒトシさんに、鑑賞後、パートナーとのセックスが盛り上がる映画5選を聞いてきました。
5本ともモロにセックスをテーマにした作品ですが、ムラムラするだけでは終わるのではなく「セックスとは何なんだろう?」と考えさせられるような映画を選んでみました。
至高のセックス映画1.『そこのみにて光輝く』
14年公開。監督:呉美保
綾野剛さんと菅田将暉さん、池脇千鶴さんが出演する作品です。
池脇さん演じる千夏は、北海道の田舎町で売春をし、年配のヒモ男を養っている女性。
既婚者と不倫中といったような方は自分と重なってしまう部分があるかもしれません。
というのも、自分の愛情を切り売りするみたいな部分が描かれているんです。
セックスには、大きく分けて「お互いに心の傷を癒し合えるもの」と「愛を得るために受け渡すもの」という意味があると思いますが、現代には後者が多い。
そういった愛されるためにセックスを差し出すことの虚しさが描かれていますね。
セックスシーンはものすごくエロいです。
綾野さんや菅田さんのイケメンふたりも体当たりで演じていますし、池脇さんは今濡れ場を演じさせたら日本でもトップクラスな女優さん。
いい意味で素朴感があるので、観ている女性も感情移入しやすいと思います。
至高のセックス映画2.『愛の渦』
14年公開。監督:三浦大輔
現在上演中の『娼年』の監督もされている三浦大輔さんの映画で、乱交パーティーを描いた作品。
とにかくずっとセックスしている衝撃作です。
門脇麦さんの脱ぎっぷりがすごくて、まあエロい。これを観たという30~40代の既婚者女性に感想を聞いたら、皆さん「ハプニングバーに行きたくなった」と言っていました(笑)。
ただし、「セックスはすれどもコミュニケーションはできない」という深く、苦い部分も描かれている。『愛の渦』と『娼年』をあわせて観てみると面白いでしょうね。
至高のセックス映画3.『ニンフォマニアック』
13年公開。監督:ラース・フォン・トリアー
デンマーク映画にして、『愛の渦』以上に変態性あふれる作品です。
平凡な女性がセックスに取り憑かれてしまって、なんでこんなにもセックスやオーガズムにこだわるのか、いろんな変態行為が世の中にはあるということを非常に丁寧に描いています。
作中でセラピストみたいな男性がつべこべと分析するんですが、なんだか的外れで、「結局男って何もわかってないね」と(笑)。
これってきっと「結局は男と女ってわからないよね」というメッセージでしょうね。監督は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラース・フォン・トリアーですが、笑える映画でもあります。コメディ映画ではないが、当事者性を持って笑えますよ。
至高のセックス映画4.『お嬢さん』
17年公開。監督:パク・チャヌク
「男が女のことをわかってない」という意味ではこの映画もおもしろいですね。
イケメンも美少女も出てきますが、単純なラブストーリーとしては描くのではなく、作品自体はミステリー。
セックス狂いの金持ちの男がいろんな変態行為をしていくのですが、彼の財産を狙うふたりの女性たちとの騙し合いを繰り広げ、しかし、最終的には……と、とにかく観てくださいとしか言えない映画です。
エロい描写というのはどうしても単調になりがちですが、この作品はお金をかけて丁寧に作られていますね。韓国で国民的大ヒットを記録したそうです。
至高のセックス映画5.『アデル、ブルーは熱い色』
13年公開。監督:アブデラティフ・ケシシュ
レズビアンのふたりの愛を描いた作品。
これまで紹介してきた5本の中では、もっとも「セックスを通じた愛」というものが伝わってくる、ある意味で王道的なラブストーリーと言えます。
興味深いのが、レズビアン同士なのにその中で男性的な役割の描写がでてくるところ。片方がセックスしようと誘ったときに、もう片方が「今日は生理だからダメ」と断るんですよ。その言い方が、我々男性の言う「今日は疲れているから無理」と似ていて。
別にレズビアンふたりの物語でも、結局は男役と女役をやっているし、逆に言うと我々男もおちんちんがついているからといって「男」なわけじゃないんだなと。
セックスシーンがたっぷり描かれていますが、とにかくふたりの少女が美しく描かれていますあし、ランス映画らしくおしゃれな空気感も味わうことができます。
なによりも、鑑賞したあとには「セックスっていいよね」と思える映画ですね。暴力的じゃなくてお互いを大事にするセックスが描かれている。
現実のセックスの参考になるので、カップルで見るといいと思います。
以上5本お伝えしましたが、気になる作品はありましたか? Have a nice sex life!
取材・Text/加藤純平
二村ヒトシプロフィール
’64年、東京都生まれ。’87年よりAV男優として活動を開始したのち、97年にAV監督としてデビュー。以降、日本を代表するAV監督として作品を発表。痴女、レズ、女装娘AVの育ての親でもある。著書に『僕たちは愛されることを教わってきたはずなのに』(KADOKAWA)ほか多数。
いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。