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私とあなた、私と社会、私と私――誰かと誰かをつなぐランジェリー「Albâge(アルバージェ)」

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吸いつくようになめらかな手ざわりと、指先さえもよろこぶ繊細なレース。緻密に生み出された「Albâge」の下着からは、なんだか生き物の呼吸が聞こえるようだ。ディレクターの高崎聖渚さんに、ランジェリーへ込める思いを伺った。

私とあなた、私と社会、私と私――誰かと誰かをつなぐランジェリー「Albâge(アルバージェ)」

「Albâge」というブランド名は、フランス語に由来する。石膏のように美しい白ときめ細やかな肌の質感を表す「Albatre(アルバトレ)」と、遺伝子を表す「Gène(ジェン)」を組み合わせた造語。そんなコンセプトで生まれたランジェリーは、日本人女性の肌を一番美しく見せてくれる。

目を引くのは、すこし大胆なデザインが多いこと。浅いカップを覆うレースに、大きくカットされたフロント部分。全面レースのショーツは、もちろんすべてをあらわにする。

画像提供/Albâge(@albage_lingerie

「そういうショーツを履くときって、アンダーヘアを処理しないといけないでしょう。そうやって、身につけた人に何かしらの行動を誘発できたらいいな、と思っているんです。飾りのリボンも普通は結びきりだけれど、あえて本当にほどけるものを使っていたりします。ショーツのリボンをほどいたり、結んだりする動きって、セクシーだから」

そこには、高崎さんが下着に込めた思いが垣間見える。

「些細なことでも行動が変われば、人は変わっていくと思うんです。『Albâge』の下着を身につけることで、女性として独り立ちできる精神力を持ってもらえたら、すごくうれしい。うまく自分や周りと付き合いながら人生を楽しみたい――これを身につけるとそんな気持ちになれる、という下着をつくりたいと考えています」

「Albâge」のブランドディレクターを務める高崎聖渚(たかさき・せいな)さん

■自分が素敵だと思うランジェリーを手に取ってもらうために、カルチャーをつくる

――高崎さんがランジェリーに興味を持ったのは、いつですか。

大人っぽい女性に憧れはじめた、13歳くらいのころです。当時思い描いていた“大人の女性の象徴”といえば、ハイヒールと口紅、そしてセクシーなランジェリー。すこし背伸びしたデザインのランジェリーをつけると、気持ちが高揚したのを覚えています。

そこから、自分で下着をつくりはじめるまでは、とても自然な流れでした。母がアパレルの仕事をしていた影響で、もともと自分で洋服をつくったりしていたんですよね。

――中高生のころからご自身でランジェリーをつくっていたなんて、本当に興味があったんですね。

高校に進んでからも“ものづくり”に興味があり、はじめの一歩を踏み出すには何がいいかと考えるうちに、下着が思い浮かびました。まずは、大好きなランジェリーのデザイナーとして、一人前になる。そしていつか、ファッションから他のさまざまなクリエイティブに手を伸ばしたカール・ラガーフェルド(※)みたいになりたい、と思ったんです。

高校卒業後は、ファッション専門学校「エスモード」パリ校にある、ランジェリー科に進学しました。2年間学んだあと、日本でのランジェリーブランド立ち上げに声をかけていただき、帰国したのが24歳のとき。それが、自身の初ブランドでした。これは「Albâge」の前にたずさわった企画です。

――パリから日本へ戻り、新ブランドの立ち上げ。どんなことに苦労されましたか。

日本とフランスでは、ランジェリーに対する視線が全然違うんです。たとえばパリでは、水着でもパットのないものが主流。バストトップが透けていても、誰も気にしません。それに、スーパーの片隅で売られているような安い下着のなかにも、洒落たデザインがたくさんあるんです。

その一方で、日本の下着に一番求められているのは、実用性ですよね。アクセサリー感覚でランジェリーを楽しむというカルチャーは、まだほとんどない。だからこそ、自分が素敵だと思う下着を日本で売るためには、カルチャーからつくっていかなければならないと感じました。

自分らしい世界観を失わず、だけどビジネスとしても成功するランジェリーをつくって、カルチャーを醸成していく。初めて立ち上げたブランドでも奮闘しましたが、未熟な私にはそのバランスが難しくて……一度は夢を諦めて、ランジェリーの現場から離れたんです。およそ1年半後にいまの「Albâge」を立ち上げるまで、まったく関係のないブティックで働いたりしていました。

■脆くて濃密な感情を乗りこなし、強く美しくなるための武器

――ふたたびランジェリーの世界に戻ってきたのは、何がきっかけだったんでしょうか。

やっぱり、自分の持っている武器は、大好きなランジェリーしかなかったんですよね。

以前の携わっていたブランドを離れたとき、信頼できる友人が「きっとふたりは合うと思う」と紹介してくれたのが、いま「Albâge」を一緒にやっている織田愛美でした。

20代半ばで経験もない私たちが、どうすれば世の中と渡り合っていけるか――そのためには私たちのことを伝えてくれるブランドが必要だと感じて、もう一度ランジェリーで闘っていこうと決めたんです。

下着ってすごくセクシャルだし、色っぽいけれど、本当は衣類ですよね。でも、私は衣類じゃなくて、アートとして下着を見ている。最初のブランドのときは自覚もしていなかったけれど……きちんとそこに共感してくれたのが、織田だったんですよ。

――よき理解者を得て、「Albâge」が動きはじめたわけですね。ブランドとして、「Albâge」が大切にしていることは何ですか。

まず、手ざわりはとても気にしています。吸いつくようになめらかで、着心地が軽いのが最高。蛇や石膏のように、しっとり冷たい湿度を持った質感が好きですね。

色遣いにルールはないけれど、生命力や毒っ気の強いカラーが多いです。だから、黒や赤が定番で、ときどきホワイト。東京の暑い夏をイメージしてつくったシリーズには、モンステラの葉っぱみたいにさわやかなグリーンを使いました。

――デザインのインスピレーションは、どんなものから得ているのでしょう。

気に入った映画や絵画などをクリッピングするんですが、ほとんどは日本画ですね。

とくに、悲劇の女性を描いた美人画が好き。悲恋のすえに心中するとか、好きな男にふられて狂って江戸中を燃やすとか、美人画に出てくる女性って全然強くないんですよ。でも、大切なもののためなら破滅してもいいという脆さが、とても官能的。

ネガティブで濃密な感情から生まれる美しさはそのままに、その強い気持ちを乗りこなして、凜とした女性になれたらいいな、と思っているのかもしれません。

画家・池田蕉園の「夢の跡」

――その世界観を伝えていくために、工夫していることはありますか。

押しつけがましくなく、寄り添いながら広めていくこと……でしょうか。

あまりランジェリーのカルチャーが発達していないこの街で、どうやったらこういうモノに触れてもらえるかを、第一に考えています。

たとえば、デザインには欧米らしいテイストを残しながらも、日本人が手に取りやすい工夫をしています。パットのないブラでは、ダーツの縫製がトップに重なるよう調整して、さりげなく乳首を隠す仕様にする。エッジの効いたデザインでありつつも、日常使いできるスタンダードなアイテムを増やして、世界観と使い勝手が共存するように心がけているんです。

■「男/女」ではなくて「私/他者」の境界線を、やさしく越えていく

――「Albâge」はこれから、どんなランジェリーを生み出していくのでしょうか。

男女の性差を越えて、人生を引き立てるアイテムがつくりたいと思っています。たとえば、女性のランジェリーを男性がつけてもいいし、姉妹ブランド「Algesso(アルジェッソ)」のメンズ下着を、女性が履いてもいい。

男性性や女性性が強いことにも魅力はあるし、製品ではあえて明確に表現しているけれど、本当はそこに垣根がないんです。しいて言うなら「男性/女性」ではなくて「私/他者」という境界線があるだけ。

私自身、バイセクシャルの経験があったり、LGBTの友人が多かったりしたから、そう思うのかもしれません。もちろん、女性用のランジェリーを男性がつけるためには、制作に工夫が必要なんですけど……そこは、これからの課題ですね。リサーチしていたら、当事者の男性に「こういうものが履きたいんじゃない」と言われちゃったりもして、試行錯誤しているところです。

――では最後に、「Albâge」の下着に託した役割について、教えてください。

下着は、誰かと誰かをつなぐものだと思うんです。その対象は「私と社会」だったり「パートナー同士」だったり「自分ともうひとりの自分」だったりもする。

お客様から寄せていただく感想も、そういう声が多いんですよね。

「美しい下着を身につけることで、夫婦のセックスレスが解消された」「産後静まっていたセックスへの気持ちが高まった」っていう声をいただけるのが本当にうれしくて。これからもそんなふうに、さまざまなコミュニケーションを誘発するアイテムを、つくり続けていきたいと思っています。

※カール・ラガーフェルド:1938年ドイツ生まれ。若くしてさまざまなファッションブランドを渡り歩くが、64年ごろにアートを学ぶためにイタリアへ。約3年後にファッション業界へと戻り、1983年に「CHANEL(シャネル)」のデザイナーに就任。

取材・Text/菅原さくら
編集・Photo/小林航平

取材協力/Albâge

公式ホームページはこちら

Instagramのアカウントはこちら@albage_lingerie

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菅原 さくら

1987年の早生まれ。ライター/編集者/雑誌「走るひと」副編集長。 パーソナルなインタビューや対談が得意です。ライフスタイル誌や女性誌、Webメディアいろいろ、 タイアップ記事、企業PR支援、キャッチコピーなど、さまざま...

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