トレンチは本当に「定番」? 大人の春アウターに「革ジャン」のススメ
今年も厚手のウールのコートやダウンが重く暑苦しく感じる、でもまだシャツやニット1枚では肌寒い季節到来。この季節の変わり目に羽織るスプリングコートの代表格といえばトレンチコートだけれど、トレンチコートは選び方も着こなし方も実はとても難しいアイテム。この気温差の激しい期間を乗り越えるアウターについて考えてみた。
■トレンチコートは本当に定番アイテム?
トレンチコートは定番のファッションアイテムだ。マストハブ。誰もがそう信じている。
でも、本当にそうなんだろうか? 私は最近やや疑問に思っている。
春と秋になれば、毎年ファッション雑誌には、必ずトレンチコートの着こなしを紹介する記事が組まれ、モデルさんたちが洗練された着こなしを披露している。
私も今まで、さまざまなトレンチコートを何枚も買った。長い間、なんとかカッコよく着こなそうと奮闘した。
けれどはたと気がついて見ると、一度も満足できるトレンチコートに出会ったことがない。いや、トレンチコートが悪いのではない。自分のトレンチコート姿がイケてると思ったことが、ただの一度もないだけだ。
トレンチコートって、ある程度背が高くないと似合わない。首が長くないと似合わない。手足が長くないと似合わない。それらの条件を持つモデルさんのトレンチコートの着こなしと、自分が着た場合では、似ても似つかないものになるのは当たり前なのだ……と、ここにきてやっと気づいたのである。
■トレンチコートが難しい理由は?
トレンチコートを攻略するのは、ものすごく難しいと思う。その理由はいくつかある。
中に何を着るかが制限される
薄手のインナーやシャツ・ブラウス・ニットぐらいは問題ないが、仕事でジャケットを着用しているときに上からトレンチコートを羽織るのは、かなりもたつき、かさばる。スーツ姿の男性たちが楽々と着ているトレンチコートは、肩回りがかなりゆったりしているのだ。
最近の女性用のトレンチコートはデザイン性が重視され、上半身がかなりコンパクトに作られている。
だから中に着るものは、かなり薄手のものに限られてしまう、というのが私の実感だ。
コートのくせに(?)中に着るものを制限するなんて……。あまりにも使いにくいアウターではないか。そんな気さえしてくる。
とにかくボトムスの丈との相性が難しい
よく駅や街で、トレンチコートの裾から、スカートがチラチラ見えている女性を多く見かける。
その中途半端な丈の見え方が気になってしょうがない。
また最近流行りのボリューミーなロングスカートが、キリっとしたトレンチの裾からもっさりと見えているのもカッコいいとは言い難い。
とにかくトレンチコートとスカートの丈の相性は、一番気を遣う難題なのだ。
トレンチはパンツに合わせやすい
スカート丈との相性が気になるトレンチコート。逆にパンツスタイルなら、ほぼ気にせず済むので、私はむしろパンツスタイルのときにトレンチを羽織っている。前のボタンもベルトも留めなくても、サマになりやすい。
トレンチコートはパンツに合わせるべし。そう決めてしまうと気持ちは楽になった。
トレンチコートは大真面目に着るとカッコ悪い。微妙な気崩しが絶対必要!
買ったばかりのパリパリなトレンチコートをそのままストンと着るのは危険。いかにも「着られている」という感じになってしまうから。
私の友人は、新しいトレンチコートを買ったら、しばらく数日の間、家の中で着て、簡単な家事をするという。
袖をまくったり、襟を立てたり、ベルトをいろいろなところで結んだり。いい具合にシワが寄り、体に馴染み、トレンチが自分のものになった……と感じてから外で着るという。
「トレンチは完全に自分のものにしないと、カッコよく着こなせないのよ」という彼女の意見を聞くと、ますますトレンチコートはハードルが高いアイテムだと思う。
以上の理由から、トレンチコートは万能な定番コートではないし、1枚持っていると便利なアウター、でもない。その攻略は誰にでもできるものではない、実は難易度の高いアウターだと思う。
だからこそ、うまく着こなせれば、めちゃくちゃカッコいい。
私は諦めずにトレンチコートを買い続けている。簡単には着こなせない難しいアイテムだからこそ、取り組み甲斐がある。それがトレンチコートの最大の魅力なのだろうと思う。
今年も懲りずにどうやったらカッコよく着られるか? の試行錯誤は続いている。
私が現在所持しているトレンチコート2枚。上はビジネスでも違和感なく使える濃紺のトレンチでunacaのもの。ベージュ色よりもきちんと感が出せて、休日コーデのデニムにも合わせやすい。
下は、薄手の羽織りやすいSHIPSのコート。風を通さない素材ゆえに、軽いのに春先の冷たい空気から身を守ってくれる。生地が柔らかいので、堅苦しくなく、中の服も選ばない。
■Gジャンは危険アイテム
春のアウターとして、デニム素材のジャケット、すなわちGジャンを愛用する方も多いかもしれない。
私の場合、「Gジャンが似合わなくなった」と感じた30歳のときに処分したきり、一度も買ったことはない。
肌や髪に輝きがないとGジャンは似合わない。そのツラい(笑)事実と向き合い、上半身にデニムを持ってくることには慎重になった。
街中でGジャンを着ている私と同年代か年上の女性を見かけることは多いが、正直に言わせてもらうと、似合っていて素敵に見える女性はあまりいない。上質な革素材のジャケットや薄手のハーフコートの方がきっとお似合いのなるだろうに……と思うことがしばしば。
Gジャンって、大人の女性にあまり似合わない。もちろん似合う方もいると思うが、普通に着てしまっては、どうしても「がんばっている感」もしくは逆に「どうでもいいのよ感」がにじみ出てしまう。
ましてやダメージが施されていたり、ギラギラな装飾、刺繍が施されていたりするGジャンはさらに危険。
ここは冷静になろうと思う。
■トレンチコートの代わりに革ジャンを
前述の通り、トレンチコートは特にスカートのときにバランスを取るのが難しい。
スカートにも合わせやすく、さっと羽織れて、かつオシャレに見える春のアウターはないものか? と考えて、少しずつ揃え始めたのが革素材のジャケット。
丈が短いので、スカートでもワンピースでもバランスよく合わせられる。映画館やカフェなど、脱いだ先でもショート丈ゆえに、扱いやすい(ロングのトレンチコートはこの場合かさばって意外に不便)。
なにより革素材なので、とにかく暖かい。そして一気におしゃれ感が出る。さまざまな理由で革ジャンを気に入り、愛用中。
数年前から黒のライダースが大流行しているが、これも多くの女性が、
「トレンチコートより使いやすい! 合わせやすい! 便利!」
と密かに気づき、革ジャンの着まわしやすさに目覚めたからではないだろうか。
特にここ数年の、長くボリュームのあるスカートの流行には、トレンチコートより断然ライダースジャケットの方が、バランスがいい。
さらに、襟がない革ジャケットはさらに使いやすい。そのことに気づいてからは、襟のない革ジャケットで色が綺麗なものを探すようになった。
コツはとにかく思い切って上質な革のものを買うこと。合成皮革は劣化も激しく、安っぽさが大人の女性を残念に見せてしまう。いい革のものはずっと長く着られるので、結局は残る服になること間違いなし。
真夏以外、ヘビーローテーションな私の革ジャケット。
一番左:襟なしのカーキ色の革ジャケット。さっと羽織やすく、スカートでもパンツでも合わせやすい。明るい色の革ジャンは春に最適だとわかり、綺麗なベージュ色のものをウイッシュリストに追加中。ノーカラーの革ジャンは、インナーも選ばず、襟もとに盛ることでイメージも変えられる本当に使いやすいアイテム。
真ん中:こげ茶色の革ジャケットは、かなり昔に買ったイタリア製の革のもの。いい革は着れば着るほど柔らかくなり、自分の体に馴染み、着心地抜群。襟元までボタンを留めれば真冬でもOKなくらい防寒機能があるため、気温差の激しい春先に羽織るのにも最適。
一番右:これまた10年以上前に買った黒の革ジャン。ハードなイメージなので、甘辛MIXコーデがしやすい。こちらも上質な革が馴染み、着心地◎。
■春アウターの役割は温度調節! 短期間の羽織りものを楽しもう
春のスプリングコート。アウター問題。
実は着用するのはほんの少しの期間。何を羽織ったらいいのか悩んでいるうちに、季節はあっという間に5月になり、半袖を着られるほどの気候になったりする。
けれど、この短い、やや肌寒さを残す春の不安定な季節をうんと楽しむためにも、納得できる愛せる春アウターを手に入れたい。
春のコート、羽織りものの一番大事な役割は、細やかに温度調節ができること。
春風にコートをたなびかせて、颯爽と街を歩こう!