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映画『ザ・サークル』に考える、未来のSNS社会の光と影- 古川ケイの「映画は、微笑む。」#28

Facebookでの「いいね!」や、インスタ映えを意識した写真撮影などの日常に、"SNS疲れ”を感じている人も少なくないのではないでしょうか? 今週末公開となる映画『ザ・サークル』が描くのは、まさにすべてがオープンになった「完全な」社会。人類の明日を予見するSNSサスペンスに、エマ・ワトソンとトム・ハンクスが挑みます。

映画『ザ・サークル』に考える、未来のSNS社会の光と影- 古川ケイの「映画は、微笑む。」#28

◼︎原作は全米ベストセラー小説『ザ・サークル』

全米で2013年に発行されるや否や、瞬く間に大ベストセラーとなった小説『ザ・サークル』。

原作を手がけた、ピューリッツァー賞、全米図書賞ノミネート作家のデイヴ・エガーズが脚本にも参加し、遠くない未来に待ち受けるSNS社会の光と闇をスリリングに描き切ります。

◼︎巨大SNSが掲げる理想とは? 『ザ・サークル』ストーリー

派遣で始めた水道会社の電話対応の仕事をしながら、地元でサエない日々を送るメイ(エマ・ワトソン)。そんなメイは、大学時代の親友アニーの計らいで、世界最大のSNS企業・サークル社に入社することになる。

サークル社を業界No.1に押し上げたワンアカウントの実名登録サービス「トゥルーユー」の顧客対応の職に就くことになったメイは、最先端のオフィス環境に感激するのだった。

入社して1週間が経ったころ、サークル社のカリスマ経営者として崇められるイーモン・ベイリー(トム・ハンクス)は、社員の前で新たなテクノロジー「シーチェンジ」を発表する。

「シーチェンジ」は超小型高性能ワイヤレスマイクで、利用者が好きな場所に設置することができるというもの。

ベイリーは、「シーチェンジ」で美しい形式や体験をシェアするだけでなく、犯罪やテロをも根絶できると宣言し、拍手喝采を浴びるのだった。

ベイリーの発表に、プライバシーがなくなっていくことへの恐怖を拭えずにいたメイは、社内の野外パーティーで「トゥルーユー」の開発者であるタイと出会う。

「サークル社を変えなくては。僕の当初の構想とは大違いだ」とタイから打ち明けられたメイは、ますますサークル社への違和感を募らせていく。

そんなある日、幼馴染のマーサーが手作りした鹿の角のシャンデリアの画像をSNSにアップしたメイは、突然会社を訪れたマーサーから猛抗議を受ける。

メイの投稿がきっかけで、マーサーには「鹿殺し」と非難が集中し、なんと殺人予告まで届くようになっていたのだった。そしてついに、メイはマーサーから「君の世界の一部になりたくない」と別れを告げられてしまう。

そんなある日、メイに事件が起きる。

悲しい気分を変えようと、他人のカヤックを持ち出して溺れかけたメイは、たまたま「シーチェンジ」でアザラシを見ていた会員からの通報で命を取り留めたのだった。

この事件をきっかけに、メイはベイリーから、シーチェンジカメラを24時間身につけて、自らのすべてをオープン化しないかという提案を持ちかけられて……。

◼︎二大ハリウッドスターが魅せる! 演技合戦に注目

本作の見どころは、エマ・ワトソンとトム・ハンクス、ふたりの二大ハリウッドスターの共演にあります。

エマといえば、『ハリー・ポッター』シリーズのハーマイオニー役で知られていますが、今年はディズニー・アニメの不朽の名作『美女と野獣』の実写化で、新たに大人の女性としての一面を見せてくれたばかり。

自らも約2500万人のTwitterフォロワー数を誇る彼女が、本作では、SNSに批判的な思いを持ちながらも、自らの24時間をSNSにオープン化することになってしまうヒロイン・メイを見事に演じます。

また、SNSによって犯罪やテロを根絶やしに、世界を改革しようとするカリスマ経営者イーモン・ベイリーを、二度のアカデミー賞に輝くトム・ハンクスが演じます。

トム・ハンクスというえば、愛嬌たっぷりの役柄のイメージが強いですが、本作では一転、翳(かげ)りのある演技で、自らの野望のためにメイを利用しようとするベイリーを熱演します。

本作は、自らの24時間をオープン化することになったメイの周りで起きるさまざまな事件を描きます。フィクションではあるものの、そこに描かれる光景は、やがてやって来るかもしれないSNS社会の光と闇をスリリングに映し出します。

嘘も隠し事もない世界は、果たして本当に理想郷なのか――。

本作が問題提起するSNS時代のプライバシーのあり方について、観客は自問せずにはいられません。あなたもぜひ映画館で、あらためてSNSとの付き合い方を考えてみませんか?

『ザ・サークル』は11月10日(金)より全国公開です。

◼︎『ザ・サークル』公開情報

『ザ・サークル』
11月10日(金)全国ロードショー
監督:ジェームズ・ポンソルト
原作:デイヴ・エガーズ
出演: エマ・ワトソン『美女と野獣』、トム・ハンクス『フォレスト・ガンプ/一期一会』
配給:ギャガ株式会社
上映時間:110分
公式サイト:http://gaga.ne.jp/circle
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古川 ケイ

映画・ファッションライター。女性誌や女性向けWeb媒体を中心に、新作映画やオススメのファッションアイテムなどを紹介しています♫

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