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詩が生まれる瞬間に立ち会う――谷川俊太郎×覚和歌子「対詩ライブ」

「朝のリレー」や「生きる」などの詩で親しまれている谷川俊太郎さんと、「千と千尋の神隠し」の主題歌の作詞で知られる覚和歌子さん。ふたりの詩人が観客の目の前で交互に詩を紡ぐ「対詩ライブ」という試みが、密かな注目を集めています。言葉のイメージ力で空間を変えていくスリリングなイベント、「対詩ライブ」の魅力とは?

詩が生まれる瞬間に立ち会う――谷川俊太郎×覚和歌子「対詩ライブ」

こんにちは、島本薫です。

「対詩ライブ」というイベントを耳にしたことはありますか? ふたりの詩人が数行ずつ言葉を紡ぎ、観客の前で一編の詩を書いていく「即興詩のかけあい」です。

本日は、詩人を身近に感じられる「対詩ライブ」の魅力をお届けしましょう。

■「対談」でも「対戦」でもない「対詩」のライブ

詩人がいかにして詩を創作するのか。
詩人とはどんな人たちなのか。
詩と詩人を身近に感じられるイベントです。
主催obla()t

隣人のように、詩人を身近に。
文学ではない場所で「詩的なもの」と出会う。

そんなコンセプトで始まった「対詩ライブ」。「対詩」とは、ふたりの詩人が交互に5行以内の詩を書いて、12の倍数でひとまとまりの「詩」とするもので、複数の詩人が詩を書き継ぐ「連詩」の一種です。

リレー形式の即興詩という世界初の試みを続けてきたのは、詩人の谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)さんと覚和歌子(かく・わかこ)さん。

観客を前にしたそのライブでは、書き手はひとり静かな場所で自分と向き合いながら言葉を紡ぐわけにはいきません。ライブ終了までの限られた時間の中、どんなテーマの詩を書くことになるのかもわからない未知の旅に出発するのです。

言葉を選び直したり、行をまるごと削ったり。詩作の様子はスクリーンに映し出され、詩が生み出されるスリリングな一瞬一瞬を、観客も共有します。

「できました」という声を聞くどきどき感は、ライブでしか味わえないもの。また、短い詩がひとつ誕生するたび、詩人自らによる朗読や解説を聞くことができるのも、ライブならではの魅力でしょう。

ところが、対詩ライブの面白さはそれだけではありません。

観客は、生まれたばかりの詩や創作について、詩人にたずねることができるのです。

■詩や詩人との距離が近くなる

「対詩」では、ひとつの詩が出来あがると相手に詩作を引き継ぐわけですが、次の詩ができあがるまでの時間は待つ方の詩人と観客とのトークタイムとなり、さまざまな質問が飛び交います。

「初めに書かれていたものからまったく違う詩になりましたけど、どういう流れでそうなったのですか?」
「朗読で『工場』を『こうば』とお読みになっていましたが、『こうじょう』という読み方ではないのですね」

谷川俊太郎さんも覚和歌子さんも気さくに質問に応じてくれ、「自分の書いた詩を発表していくにはどうしたらいいでしょう」といった創作の悩みから、時には「才能の源泉とは?」という難しい質問までもが飛び出します。

「相手の詩ができあがるのを待っている間は、どんなことを考えているのですか?」
「ひとりで詩を書くのと対詩とは、どんなところが違いますか?」

そんなやりとりを重ねていくうちに、詩や詩人が身近になり、言葉というものがより愛おしくなっていく――それこそが「対詩ライブ」の魅力であり、多くのリピーターを生む理由なのでしょう。

■連句から連詩へ、そして対詩へ、読者の心の中へ

連詩には何を書くかを自分で決めなきゃいけないというストレスがない。よく自己表現と人は言うけれど、実は自己表現というものも他からの働きかけがあってはじめて可能になるんだってことを連詩は教えてくれるんです。
谷川俊太郎

日本の伝統文芸には、上の句(五・七・五)と下の句(七・七)を順に読んでいき、ひとつの詩を作り上げて楽しむ「連歌(連句)」という形式がありますね。これをもとに始まった詩の共作が「連詩」です。

「他人がいると、思いがけないことがきっかけとなって言葉が出てくる」と語る、谷川俊太郎さん。

「連詩は誰が作者というわけではなく皆で創るもの。こうした世界観は日本独特のもので、いい意味で我が消えているすごく美しい世界だと思うんですね」と話す、覚和香子さん。

そんなふたりの創作の裏側や推敲の過程まで見せてしまう、スリリングなステージ上の連詩「対詩ライブ」。9年に渡る対詩作品と解説が、このたび一冊の本になりました。

ライブは毎回チケットが完売という人気ぶりですが、詩が生まれる瞬間に、あなたもいつか立ち会ってみてください。

■対詩ライブ:関連情報

◆主催:obla()t(オブラート)

谷川俊太郎公式サイト

覚和歌子公式公認ファンサイト
 

島本 薫

もの書き、翻訳家、ときどきカウンセラー、セラピスト。 大切にしている言葉は “I love you, because you are you.” 共感覚・直観像記憶と、立体視不全・一種の難読症を併せ持ち、自分に見えて...

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