ありのままの胸を好きになるために――大きなバストを美しく見せるランジェリーブランド「ivyy」原田奈津美さん
小さくても、大きくても、女性にとっては悩みの種になりやすい“バスト”。生まれ持った自分の体をそのまま愛せればいいのだけど、なかなか難しいことも。今回は、胸の大きな人に寄り添うブランド「ivyy」を立ち上げた、原田奈津美さんにインタビュー。自身のバストに悩んだ経験や商品開発の経緯、ブランドが掲げるメッセージを伺いました。
■かわいい下着を気軽に買える選択肢を作りたい
――原田さんが立ち上げた、Eカップからのランジェリーブランド「ivyy」。まずは、ブランドが大切にしていることを教えてください。
私がivyyを立ち上げたのは「胸が大きいとかわいい下着がない」っていう、本当に単純な理由からなんです。一般的なサイズのバストなら、友達と買い物に行った延長で下着が買えるでしょう。でも、胸が大きいとラインナップがなかったり、別のお店に行かなきゃいけなかったりする。それでも選択肢が少ないから、結局デザインや価格を妥協するしかありません。だからivyyを通じて、胸の大きい女性がもっと気軽に、かわいい下着を選べるようになってほしいと思っています。
――ブランドを作ろうと決意するまでには、原田さんご自身にも、胸の大きさゆえの悩みがさまざまあったことと思います。
サイズのせいで素敵な下着をつけられないことは、ずっとコンプレックスでしたね。私はモデルの仕事をしているので、余計にそう思う場面が多かった気がします。20歳くらいでショーに出たとき、着替えはみんな大部屋。ずらりと洋服が並んだ場所で、それぞれが下着になって衣裳を身につけていくんです。そのとき急に、かわいくない下着をつけている自分が恥ずかしくなって……なんで下着のことでこんな気持ちにならないといけないんだろうって、いたたまれなくなりました。
友達と旅行に行くときも、そう。裸を見られるよりも恥ずかしい感覚があったから、みんなでお風呂に入るときは、お手洗いでこっそりブラを外してきたりしていたんです。洋服代を削ってでもかわいい下着をつけようと思いはじめたのは、そのあたりからですね。
でもやっぱり、大きなサイズが一般的じゃない日本で買うと高かったり、デザインが気に入らなかったり……しばらくは海外で買ったりしていましたが、自分で作ろうと考えるようになりました。
――「ないなら自分で」と思えるなんて、バイタリティにあふれていますね。
タイミングもよかったんだと思います。どうにかオリジナルの下着を作ろうと自分で動き始めた矢先に、TOKYO GIRLS COLLECTIONで開催されるビジネスアイディアオーディション「Win Girls Project」の案内が届いたんです。そこで思いの丈を企画書に書いて、グランプリをいただいてから、半年後には社長になっていました(笑)。
もちろん商品ができあがるまでは、何が大変なのかわからないくらい怒濤の日々。もともとパソコンもろくに使えないし、敬語やビジネス用語も知らないことばかりだったから、メールが来ても「これはいったい何の連絡ですか?」ってなったりして(笑)。でも、一緒に商品開発を進めてくれるさまざまな方の力を借りて、なんとか形にしていきました。
■悩んでいる本人だからこそ作り出せる、自由な発想のランジェリー
――ivyyの商品のこだわりを教えてください。
好みの問題はあるでしょうが、まずは、カップが大きくてもかわいく見えるデザインを目指しています。シンプルだけどスタイリッシュで、洋服にも響かないもの。なるべく価格をリーズナブルに抑える努力もしていますね。国内のブランドでEカップ以上の下着を探すと、平気で2~3万円くらいしますが、ivyyはショーツとセットで1万円台がベースです。
それから、フィッティングを大事にしているのもポイント。オンラインストアでも、サイズ交換は無料なんです。自分に合うサイズやデザインを、心ゆくまで選んでいただきたいと思っています。
――ブランドの肝となるそのデザインは、どのように作られているのでしょうか。
私がざっくりと絵を描いて、細かい作りの要望も含めてパタンナーさんに相談し、型紙を起こしてもらうのが基本です。
たとえばこの「MOKARA」は、大きな胸を支えつつ洋服にも響かないように、型押しでつくるモールドカップを採用しています。それだけだと見た目がさみしいから、カップくり(カップの下部まわり)にサテンのリボンをつけたかった。
でも、ワイヤーが入っていてカーブする部分だから、パタンナーさん曰く、本来は装飾をつけるのが難しいんですって。私はデザインの知識がないので、こういう普通ではないオーダーをしてしまうけれど、パタンナーさんが一緒になって実現方法を考えてくれるんです。
今度の新作「Aster series」にも、細かい工夫がいっぱいあります。脇とブラの間って、どうしてもぷにっとしたお肉が乗っちゃうじゃないですか。
それをなんとかカバーするために、サイドベルトに高さを持たせ、伸縮性のあるチュールを使いました。脇からサイドベルトにかけてあしらったレースも、すっきりした見た目をつくるポイントです。
総レースのデザインはカップが大きく見えるかもしれないけれど、それでも上品な印象を与える、機能的なランジェリーができたと思っています。
――実際に身につけたお客様からは、どんなリアクションがありますか?
少しずつリピーターが増えてきて、うれしい声をたくさんいただいています。こないだは「いままでつけた下着のなかで、MOKARAしか合うものがありません」と言ってくださった方もいて! MOKARAの型で、もっとデザインや色のバリエーションを増やしてほしいというご要望もあるんですが、なかなか資金がかかるんですよね……。
喜びの声が聞こえてくると、うれしい反面、悩んでいる人がいっぱいいるんだなと感じる。だからこそ、時間がかかっても少しずつ、そういう声に応えていきたいと思っています。
■当たり前の日常を、胸の大きな女性にも
――8月5日からは、同じく胸の大きな方向けのアパレルブランド「HEART CLOSET」とコラボしたクラウドファンディングが始まっていますね。胸の大きな人に向けたルームウェアのプロジェクトだと伺いました。
そうなんです。ある媒体での対談がきっかけで「HEART CLOSET」の黒澤さんと知り合い、飲みに行って、何かコラボしたいねって話になって。お互いに興味を持っていたのがルームウェアだったんですよね。私がデザインを描いて、一緒に生地屋さんを回って……HEART CLOSETで使っている型をベースに、ゆったり着られるルームウェアを作りました。
私自身は、市販のパジャマもなんとか着られるんです。でも、「HEART CLOSET」の黒澤さんはHカップだから、いろいろと問題がある。ボタンが留められなかったり、裾が浮き上がってお腹が冷えちゃったり……1日中きちんとした格好で働いていて、帰宅したらリラックスしたいのに、またパジャマで締めつけられちゃうわけです。だから、胸の大きな人が普通にリラックスできるルームウェアを作りたかった。特別なことじゃない“当たり前”の日常を、胸の大きな子にもプレゼントできたらって思っています。
両ブランドのデザイン性・機能性・世界観を反映させた、着心地のよいルームウェアを限定発売するクラウドファンディングプロジェクト。「HEART CLOSET」からはワンピースの限定販売、「ivyy」からは新作ランジェリー「Aster series」の先行販売もある。チケットの販売は8月31日まで。
■自分の大きなバストを愛するための、希望の光に
――これからどんなものを作っていきたいか、ivyyのアイテムをどんなふうに使ってほしいか、聞かせてください。
たとえば水着やナイトブラ、授乳ブラといった日常のありふれたものを、胸の大きな人のために作っていきたいと思っています。下着は、日本人にとって毎日使うもの。いわばパートナーなんですよね。パートナーが最高であればあるほど、自分のテンションも上がります。かわいくなかったり、肩が凝ったり、人に見せたくないと思うような下着を手放して、大好きなものを身につければ、きっともっとハッピーな毎日が過ごせるはず。自分が好きな洋服を着て気持ちを高めるように、ランジェリーもそんな存在になってほしいと思います。
ivyyというブランド名は、英語で「蔦」をあらわす「ivy」からきています。蔦って街にありふれている植物だけど、すくすく伸びれば日よけや風よけになるし、小さな花も咲かせるんです。だから、みんなにアイビーのような強い女性になってほしい。バストのことで悩みがあっても、私たちが小さな花のような希望の光になる――そんな想いを込めて、ブランド名をつけました。
ivyyの商品は、胸を小さく見せるブラではありません。自分の大きな胸を、きれいに見せるブラなんです。かわいいランジェリーが、いままでコンプレックスだった自分のバストを好きになるきっかけをくれるかもしれない。ありのままの自分を受け入れていくために、ivyyのランジェリーがお役に立てたら、それが一番うれしいですね。
「Aster Black」セクシーだけじゃない。上品さも忘れない女性らしさを...。
――自身のコンプレックスから始めたブランドで、同じように困っている女性たちを救いたい。そう語る原田さんは、とても晴れやかな笑顔を浮かべていた。かわいいランジェリーを手に入れたことで、自分の体を心から愛せるようになったのが伝わってくる。
どうすることもできない体の悩みに直面したとき、それでも前に進めるかはまず、自分自身の強さ。そして、前に進みたいと思っている人を後押しするのが、ivyyのランジェリーのように愛のこもったアイテムなのだと思う。
(取材/Text:菅原さくら)
今回お話を伺った人:原田奈津美さん
モデル、タレントとして、東京ランウェイやInterFM、動画配信サイト「FRESH!」などに出演。2015年、“自分にフィットするサイズの品数がない事が理由で、アンダーウェアのおしゃれに妥協をしてしまっていた女性のために”をコンセプトに、Eカップからのランジェリーブランド「ivyy」を始動。
美しいおっぱいを目指すために――DRESS特集はこちら
1987年の早生まれ。ライター/編集者/雑誌「走るひと」副編集長。
パーソナルなインタビューや対談が得意です。ライフスタイル誌や女性誌、Webメディアいろいろ、
タイアップ記事、企業PR支援、キャッチコピーなど、さまざま...