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大人女子必見! 切なく優しい幸せ探しの旅『歓びのトスカーナ』- 古川ケイの「映画は、微笑む。」#16

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前作『人間の値打ち』が評判となり、イタリアの名匠の呼び声も高いパオロ・ヴィルズィ監督。最新作の『歓びのトスカーナ』では、精神診療施設から脱走を図ったふたりの女性の幸せ探しの旅を描きます。壮絶な過去により心に傷を負いながらも、旅を続けていく中でかけがえのない絆で結ばれるふたり。涙なくしては見られない心温まる感動作です。

大人女子必見! 切なく優しい幸せ探しの旅『歓びのトスカーナ』- 古川ケイの「映画は、微笑む。」#16

◼︎心に傷を負ったことのある女性は必見!

本日DRESS読者の皆さまにご紹介したいのは、イタリアのアカデミー賞と呼ばれる「ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞」で作品賞、監督賞、主演女優賞を含む5部門を受賞した、パオロ・ヴィルズィ監督による女たちの人生賛歌『歓びのトスカーナ』です。

イタリア・トスカーナ州ピストイア県の緑豊かな丘の上にある精神診療施設で出会った、”自称・伯爵夫人”のベアトリーチェと、やせ細った体のあちこちにタトゥーが刻まれた若く美しい新参者のドナテッラ。

ふとしたことで人生を踏み外し、社会のアウトサイダーになってしまったルームメイトのふたりの女性が、施設を抜け出して、過去の傷に向き合っていきます。

陽光まぶしいトスカーナが舞台の本作。華やかさや陽気さを持ち合わせながらも、大人の女性だけが感じることができる人生の悲しみや切なさ、ささやかな歓びを描いた胸に染み入る感動作です。

◼︎「わたしたち、何を探しているの?」「幸せをほんの少し」

イタリア・トスカーナ州の緑豊かな丘の上にある精神診療施設、ヴィラ・ビオンディ。

心に問題を抱えた女性たちが暮らすこの施設では、社会復帰に向けての療養と治療のプログラムがきめ細やかに組み込まれていた。

まるでこの施設の女主人のように振舞っている”自称・伯爵夫人”の女性ベアトリーチェ(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)は、ある日、新たに入所してきた全身にタトゥーが入り、やせ細ったひとりの女性・ドナテッラ(ミカエラ・ラマッツォッティ)と出会う。

表情は暗く、深い孤独感が漂うドナテッラには、想像もできない過去の深い傷があった……。

そんなある日、施設外の作業に参加したふたりは、わずかに得た報酬を手に、自由を求め、施設への帰り道とは別方向に向かうバスへと飛び乗ってしまう。

思いのままにショッピングをし、見知らぬ男の車に乗り込み次の街を目指すふたり。やがてたどり着いたドナテッラの生まれ故郷や、ベアトリーチェの元旦那が暮らす家で、それぞれの過去と向き合うこととなる。一方で、診療施設のスタッフはそんなふたりを必死で追いかけていた。

過去の出来事や深い傷を共有したふたりの女性。果たして、この旅の行方はどうなるのか。彼女たちが、施設を抜け出してまで、なんとしても叶えたかったこととは――?

◼︎イタリアを代表する名匠、パオロ・ヴィルズィ監督

本作の監督を務めるのは、イタリアの名匠との呼び声も高い、パオロ・ヴィルズィ監督。

1964年、イタリア・トスカーナ州リヴォルノ生まれのヴィルズィ監督は、ローマの国立映画学校の脚本コースを卒業後、TVドラマや映画の脚本を書き始めました。

注目を浴びたのは、イタリアのアカデミー賞と言われる「ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞」で7部門を受賞した2013年公開の前作『人間の値打ち』。

ミラノ郊外の豪華な邸宅を舞台に、複雑に交差する人びとの欲望を描き、人間の真の価値とは何かを問いたこの作品は、極上のサスペンスと話題を呼びました。

そんなヴィルズィ監督ですが、本作では一転、心温まる女性ふたりのヒューマンドラマを手がけます。

◼︎ベアトリーチェとドナテッラ、主演女優のふたりに注目

ベアトリーチェを演じるのは、1964年イタリア・トリノ生まれのヴァレリア・ブルーニ・テデスキ(52歳)。妹のカーラ・ブルーニは、サルコジ元大統領夫人としても有名です。

女優だけでなく、映画監督としても多彩な才能を見せるヴァレリア。本作でベアトリーチェが病的虚言症である理由を「この女性にとってそれは、抑鬱症を防ぐための手段であるということが瞬時に理解できた」と語ります。

ヴィルズィ監督の前作『人間の値打ち』や、2015年公開の『アスファルト』など、これまで50本以上の映画に出演し、代表作の多いヴァレリアですが、DRESS読者の女性にぜひ押さえておいてほしいのは2004年公開の『ふたりの5つの分かれ路』。

フランソワ・オゾン監督が、ある夫婦の離婚から出会いまでを遡って描くこの作品は、大人の女性だけが理解できる「夫婦の不条理」を見事に描き切った傑作です。

ドナテッラを演じるミカエラ・ラマッツォッティの迫真の演技も必見。

1979年、イタリア・ローマ出身のミカエラは、イタリアの名優ソフィア・ローレンを継ぐ女優と言われ、多数の賞を受賞している実力派です。

プライベートでは、過去のヴィルズィ監督作への出演を契機に、2009年にヴィルズィ監督と結婚しています。

本作でこのふたりが演じるベアトリーチェとドナテッラは、一見すると”イタい女性”のよう。ですが実際は、内側に深い痛みと愛を抱えた、人間らしさにあふれる女性だということがわかります。

◼︎悲しくて、でも愛おしい。映画『歓びのトスカーナ』の見どころは

本作を撮るにあたり、「社会からレッテルを貼られ、無視され、避難され、遮断や隔離されている女性たちのように、繊細な人々が直面する不正や、支配、苦しみといったものにも光を当てたいと思いました」と語るヴィルズィ監督。

「苦しみについての物語を書きながら、私たちは笑ってもいいものでしょうか? それともそれは不適当で、不作法なことなのでしょうか? 私は前者であることを願っています」と語る同監督は、悲劇的なシーンも、なるべく明るい仕上がりになるように全力を尽くしたと言います。

私たちの周りでも「悲しい出来事が起きたときは、しおらしくしているべきではないか?」といった風潮があります。どんなに辛く、悲しいときでも、ユーモアを忘れず、前を向くこと。人間が持っているそんな強さを、ヴィルズィ監督は本作で力強く肯定してくれます。

「すべての映画には、ヒーリング映画のような側面があります。具体的に治療してくれるわけではもちろんありませんが、人生について理解する手助けにはなってくれます。日々のドラマや悲劇にユーモアを見いだしてくれる映画は殊更です」と語るヴィルズィ監督。

本作の撮影にあたり、たくさんのベアトリーチェやドナテッラのような女性と出会ったという監督は、彼女たちの側に立ちたいと強く願ったと言います。

本作には、拘束されたり、抑圧されたりしていても、そこに垣間見える歓び、幸せや拍動感ある興奮といったものが描かれています。すべてのシーンから、ヴィルズィ監督が持つ女性たちへの愛を感じることができます。

本編から滲み出るその優しい眼差しに、人生につまづいたことのあるすべての女性が涙してしまうことは間違いありません。

あまりに切なく、あまりに優しい人生賛歌――『歓びのトスカーナ』は、今週末7月8日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開です。

◼︎『歓びのトスカーナ』公開情報

『歓びのトスカーナ』
7月8日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
監督:パオロ・ヴィルズィ(『人間の値打ち』)
出演:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ミカエラ・ラマッツォッティ
配給:ミッドシップ
上映時間:116分
公式サイト: http://yorokobino.com/
COPYRIGHT(C)LOTUS 2015

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古川 ケイ

映画ライター。新作映画情報サイト「木曜日のシネマ」運営。 大学卒業後、インディペンデント系映画配給会社に入社し、映画業界誌の編集・ライター業務に従事したのち、宣伝部にて洋・邦映画作品の宣伝を手がける。その後テーマパーク運営...

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