熟練の職人技が光るイタリアのウエディングドレス〜ミラノ通信 #11
6月のジューンブライドにさきがけ、ミラノではブライダルウィークが開催されました。華やかなドレスはそれを支えているデザイナーや職人たちの力なくして存在しません。ミラノ在住の河見恵子さんにレポートしていただきました。
6月といえばジューンブライド、最も結婚式の多い月と言われています。
ミラノでは、5月と10月に「ミラノスポーザ(Milano Sposa)」というブライダルウィークが開催されます。今年5月は19日から22日まで、華やかなブライダル週間でした。
モーダ、ファッションだけでなく、ウエディングの世界でもそのセンス、イタリアの誇る織物、職人技の卓越した素晴らしさは群を抜いていると思われます。
全世界の女性に夢と希望を与える華麗なるウエディングドレスの数々、そしてそれを支える人々をご紹介します。
■カッティングの美しさに見惚れる。ピーター・ラングナーが手がけるドレスたち
アトリエに並ぶ今期のドレスの数々
ミラノのショッピングストリートとして名高い、モンテナポレオーネ通りからほど近い閑静な通りに、そのアトリエはあります。
ピーター・ラングナー(Peter Langner)ドイツ出身、ロンドン、パリの名だたるメゾンでの経験から自身のアトリエをオープン、今年で25周年を迎えます。
デザイナー、ピーター・ラングナー
ピーターのドレスは、何と言ってもエレガントなラインの美しさが際立ちます。
袖を通すと、その流れるような上品なシルエットはまるで女神のよう。すべての女性が内面に持つ女性らしさを表現すること、シルクひとつ取っても白からシルクホワイト、サンド、シャンパーニュ、アイボリーのナチュラルカラー、そしてクオリティーによりさまざまな表情を持つため、厳選された最上の素材を用いて、ドレス作りは行われます。
厳選された織物、こだわりの素材で作られるドレス
■ドレスやヴェールに縫い込んであるのは、陶器でできた花のパーツ
今期のコレクションでは、新たにポーセリン(陶器)が加わっています。なぜなら、陶器の持つ素材感はとても女性的だから、とピーター。そしてポエティックでユニークなところが今回のコラボレーションの決め手に。
陶器で作られたフラワーはミラノ出身デザイナー、タチアナ・ラッザーロ(Tatiana Lazzaro)のTAALAというコレクション。優しいカーブでフェミニンなポーセリンフラワーは、ヘッドドレスだけでなくドレスやヴェールに、職人が一つひとつ丁寧に縫い込んでいきます。
ひとつひとつ手縫いされたポーセリンフラワーをまとう
■デザインを表現し切れるのは熟練の技術があってこそ
エレガントで美しいデザインを、イタリアの素晴らしいファブリックを用いて忠実に表現するのは、熟練した職人技があってこそ。
アトリエではパタンナー、カッター、そして長年の経験を積んだ素晴らしいお針子たちが、舞台裏を支えています。
ウエディングの象徴とも言えるヴェールも、ドレスとともに花嫁の神秘性を増し、ドレスと引き立て合います。こちらにも、クリスタルやパールを一つひとつ手作業で埋め込み、チュールと呼ばれる薄い網状の織物が、素晴らしいヴェールになっていく瞬間は感動的です。
洗練されたエレガントで美しいドレスは、生涯の最も大切な日、花嫁を輝かせます。
魅惑と神秘で溢れる花嫁にふさわしい一着を、という情熱から生まれるアーカイブ
■大規模な展示会が開催されるブライダルウィーク
ブライダルウィークの期間中、ミラノではたくさんのデザイナーのショールームで美を極めたドレスが発表されます。一方、市内中心地に近いフィエラシティ展示会場では<Milano Sposa>ドレスやシューズ、小物などの展示会が開催されます。
展示会場となるフィエラシティは1923年オープン、43000㎡のミラノ随一の規模を誇る会場でした。2005年にはミラノ郊外に新たにその8倍の大規模展示会場ができて、以来、シティ会場では繊維やウエディングなどより専門的な分野のフィエラが行われ、来場者もバイヤーやプロ限定、出展社数は200余りを数え、今年で40回目の開催です。
会場ではファッションショーも開催、ドレス姿のモデル、出展者、買い付けに来るバイヤー、TVや雑誌のレポーターで賑わう4日間となります。
フィエラ会場、ドレス、シューズ、小物など200を超える出展社で賑わう。
■ファッション誌がその世界観を表現した空間も
街なかでは、ファッション誌の『VOGUE』や『ELLE』のパーティーも開催され、華やかなドレスにふさわしい華やいだ演出がなされ、日が長くなって21時まで明るいミラノの夕暮れ時、訪れたゲストを夢の世界に誘います。
ガーデンでカクテルパーティー
ヴィラ・ネッキ(Villa Nechi)で行われた「Vogue on stage」では、庭園でカクテルパーティー、ヴィラの中では、『VOGUE』の世界を体現した舞台が部屋ごとに用意され、モデルがテーマごとにドレスやナイティをまとってその部屋の住人となっている設定。訪れた人々はそれぞれの感性で部屋の外から好きに撮影できるのですが、まるで雑誌の1ページのような優雅で楽しい世界はため息ものでした。
『VOGUE』の世界観に感動!
■伝統的な職人技に目を見張る、ミラノのブライダルウィーク
メイド・イン・イタリーのウエディングドレス、これからも世界中の幸せな花嫁の元に届くよう、そしてその幸せが永遠であるよう、願わずにいられません。
今回、改めて思うこと。
ウエディングドレスはもちろんのこと、ファッション、アクセサリー、靴や鞄などの革製品、家具など、イタリアの職人技は本当に素晴らしい。
もともと家族経営の多いイタリアですが、代々受け継がれるその伝統的な職人技は、眼を見張るものがあります。
職人の魂と、熟練した技を、余すところなく発揮されたメイド・イン・イタリーの数々は、時代が変わってもどんなときにもたくさんの発見や感動を与えてくれるのです。
安価量産に傾く時代に、本物の持つ素晴らしさ、丁寧に作られた魂を感じるものの価値について、いま一度想いを馳せてみたいものです。
ショップ情報
今回展示されたドレスの一部は、以下の店舗で見ることができます。
MICIE
東京都港区元麻布3-4-26-B1
Tel 03-5475-5120
LIVE LOVE LAUGH
横浜市中区山下町50-1
Tel 045-681-3223
MARIE CLASSE
東京都中央区銀座2-6-5 銀座トレシャス5F
Tel 03-6228-6877
PRINCESS GARDEN
横浜市中区寿町2-6-10
Tel 045-681-3152