妊娠は「未病」!妊娠で起きる体の変化を知っている?

妊娠は「未病」!妊娠で起きる体の変化を知っている?

妊娠は病気のひとつ!? 『はじめてママになる人の「妊娠・出産」読本』著者のにしじまクリニック院長・西島重光医師が、妊娠に関する正しい情報や知識を全7回に渡って解説します。第3回目は「『妊娠』とはどういう状態なのか」についてお届けします。


「子供がほしい」と願う女性はたくさんいますが、実際に妊娠したら体はどのように変化するのか、具体的な知識を持つ女性は少ないはず。「妊娠する」とはどのような状態になることなのか、連載3回目ではタバコとお酒の危険性も交えてお話します。

■妊娠は病気のひとつ?

東洋医学に「未病」という言葉があります。未病とは、病気というほどではないけれど、健康でもない状態のことです。妊娠・出産も、いわば「未病の状態」といえます。

妊娠ではきわめて非生理的なことが起こっているにもかかわらず、妊婦さん側と医療者側の双方が、妊娠は生理的なこと、つまり「妊娠は病気ではない」と考えがちです。

しかし、産科とはある一定の頻度で母児生命を危うくする出来事が、短期間に次々と出現する医療現場なのです。医師の中には、「妊娠は病気である」と唱える者もいます。

過度の心配は不要ですが、楽観しすぎもまた良くないことだと知っておいてほしいと思います。

妊娠中、妊婦さんの体は短期間で次のような非生理的変化を強要されます。

・妊娠期間中、体重が平均20%も増加する
・全身の総血液量が40%も増加。心臓への負荷が増大する
・(お産の時に止血できるように)血が固まりやすくなる
・(胎児の発育を促すため)インスリン抵抗性増大が起こり、血糖値が上がる

多くの妊婦さんは、このようにさまざまな体の変化に柔軟に対応して、無事に出産することができます。しかし、この変化に耐えられない妊婦さんも少なくありません。

そのため、医療の発達していなかった昔は多くの妊婦さんが命を落としていましたが、現代になって状況は変わりました。

国が妊産婦10万人中の死亡数(妊産婦死亡率)の統計を開始した1899年の妊産婦死亡数は、10万人中409.8人(割合にすると全体の0.41%)でしたが、2013年には10万人中3.4人(0.034%)と、圧倒的に減少しています(※2014年人口統計資料集より)。

これらのデータは、自然に任せると高い確率で妊産婦の命が失われること、そして適切な医療の介入はそれらの未然防止に貢献することを示しています。

医療が介入しなければ命にかかわるという意味では、妊娠は病気と共通しています。

妊娠経過が順調でも、何が起こるかわからないのがお産です。妊婦健診を欠かさず受け、異常が発見されたら速やかに治療を受けてください。

■妊婦さんの体に良くない習慣

タバコの危険性

皆さんもご存知かとは思いますが、妊婦さんは喫煙と飲酒は厳禁です。妊娠中にタバコを吸うとニコチンが血管を収縮させるので、胎盤を流れる血液の量が減ってしまいます。

また、一酸化炭素は母体を低酸素の状態にするため、赤ちゃんに十分な酸素や栄養が運ばれず、2500g未満の低出生体重児や妊娠週数に比べて体重の軽いSFD児が生まれやすくなることがわかっています。また、流早死産や胎盤早期剥離などのさまざまなトラブル発生のリスクも高くなります。

さらに、喫煙妊婦から生まれた赤ちゃんは、乳児突然死症候群(SIDS)をはじめ、先天奇形や呼吸器疾患、あるいは注意欠陥・多動性障害(AD/HD)などの発達障害をきたす率が高くなります。

妊娠中の喫煙は、間違いなく赤ちゃんに悪影響を及ぼすため、喫煙している女性は妊娠がわかったその日からきっぱり禁煙するように努力しましょう。なお、周囲の人のタバコの煙を吸う「受動喫煙」も、自分が吸うのと同様に赤ちゃんに影響を与えることがわかっています。家族には妊娠を機に禁煙してもらうか、難しい場合はベランダなどで吸ってもらいましょう。

お酒の危険性

また、アルコール依存症の妊婦さんから生まれる赤ちゃんは、発育障害や知能障害、顔面異常などの障害が起こる確率が高くなります。これを胎児性アルコール症候群といいます。

アルコールは胎盤を通過するので、妊婦さんが飲んだアルコールはすべて胎児に移行します。胎児の肝臓は未熟なため、アルコールを分解できません。飲酒は絶対にやめておきましょう。

■まとめ

「妊娠は病気ではない」と過信せずに、「病気のように心身に大変な負荷がかかっている」と考えて、体調の変化によく注意することが大切です。

かといって、「あれもダメ、これもダメ」と神経質になる必要はありません。ごく普通に生活していれば、大きな問題もなく出産の日を迎えられるはずです。

妊婦さんでも、限度を超えなければ、妊娠を理由に自分の欲求を抑え込む必要はありません。体の変化に次第に生活を合わせていく心づもりでいるといいでしょう。

妊娠した途端に生活を改めないといけないということはありませんし、今まで通りの生活を続けて大丈夫ですが、妊娠前にかなり不規則な生活をしていた人は、妊娠を機会に生活態度を改める良いチャンスかもしれません。

また、「妊娠中は無理をしない」が原則です。妊婦の自覚を持ち、できるだけゆったりとした生活を送るようにしましょう。

西島重光(にしじま しげみつ)さんプロフィール

医療法人社団翔光会産婦人科にしじまクリニック院長。
昭和30年、福岡県生まれ。医学博士。日本医科大学昭和56年卒。
日本医科大学付属第一病院産婦人科などに勤務後、埼玉県富士見市ににしじまクリニックを平成10年に開院し現在に至る。これまで立ち会った分娩数は1万件を超す。著書に『コンパス産婦人科 医師国家試験完全対策』(メック出版)があり、改訂第8版のベストセラー。日本医科大学産婦人科学教室 非常勤講師。

HP
http://nishijima-clinic.or.jp/
『はじめてママになる人の「妊娠・出産」読本』
https://www.amazon.co.jp/dp/4344910478

この記事のライター

人生を自分らしく楽しむ大人の女性たちに、多様な生き方や選択肢を提案します。

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