成功した夫から捨てられない妻になる心得
貧しいときからともに苦労を重ねてきた妻は、成功した夫から大事にされ続ける――それは幻想かもしれません。『糟糠の妻はなぜ捨てられるのか』ブックレビューをお届けします。
「男は成功すると、支えてくれた女を捨てる!」
この衝撃的な一文は『糟糠の妻はなぜ捨てられるのか』(著:大西明美)第一章のタイトルです。これをひどい! と思うか、やむを得ないよね、と納得するか。反応は大きく2つに分かれるでしょうが、読み進めていくと「捨てる男」の気持ちが、手に取るようにわかります。
本書では、糟糠の妻を捨てる男=成功男と定義されています。彼らは努力の末、苦しい時期を乗り越え、大きな責任を伴う仕事を担うようになり、周りからの評価を上げ、女性たちからモテ始めるというのです。
指標としては、年収が1000万円を超えた頃から、成功男にはモテ期が訪れるのだそう。たしかに、仕事ができてお金持ちな「持っている男性」がモテないわけがありません。既婚者でもモテます。しかし、なぜ各種「誘惑」に負けて、妻以外の女性に走ってしまうのでしょうか。
著者の大西さんは、成功男が不倫をする理由に「時間的制約」と「過剰なエネルギー」をあげています。1つめの時間的制約による理由はシンプルで、多忙な成功男は自宅に帰る時間帯が遅く、妻とすれ違いがちになるというもの。結果、セックスを含むコミュニケーションをとる機会を失いやすい、というわけです。
2つめの過剰なエネルギーによる理由は、やや難易度が高いかもしれません。別名“闘争ホルモン”とも呼ばれるテストステロンをおさえ、バランスを保つためには、“幸福ホルモン”と呼ばれるセロトニンが欠かせません。
幸福ホルモンはセックスによって得られますが、それに達成感もプラスされなければ、過剰なエネルギーは解消されないというのです。となると、努力しなくてもできる妻とのセックスをしたところで、達成感なんて得られない。そのため、妻以外の女性を“クリア”し、達成感を手にする……なんとも説得力のある話です。
しかし、成功男が単なる不倫をしただけでは、糟糠の妻が捨てられることはありません。成功男に「家族を捨てて、彼女と一緒になりたい」と思わせ、行動にまで移させる実力派の女性(本書では「最強の女」と定義されています)が現れない限り、妻の座は奪われないともいえます。
最強の女とは簡単に言うと、成功男の仕事への姿勢や思いを深く理解・尊敬し、不安を解消し、彼にとっての最高のパートナーとなる女性のこと。それだけの要素を兼ね備えた女性はかなり少数でしょうが、糟糠の妻としては捨てられないために、どんな備えをしておけばよいのでしょうか。
答えは簡単で、最強の女を超えた存在になることです。つまり、最強の女が持つ要素を標準搭載し、さらに常に自分自身を成長させ、成功男にとって刺激的な存在、信頼できるパートナーになることです。具体的なハウツーは本書を参照してください。
一度離婚を経験した筆者としては、なんとも共感度の高い内容の本。本妻の座を得たからといって、油断したり気を抜いたりするのは論外です。生きている限り自己をアップデートさせ続けない限り、成功男は「この女、つまらない」と感じて、徐々に離れていくものです。
相田みつをさんの「一生勉強 一生青春」を思い出しました。学ぶことで変わり、進化していく――そうして、ひとりの人として、女性として、いつまでも夫にとって「面白い女」「失いたくない女」であり続けたいものですね。