Text=鈴木ユミコ(MC & Writer)
勝負の日に“最高の私”になる!【元宝塚スター真織由季さんインタビュー #4】
元・宝塚の男役スターとして活躍していた真織由季さんのインタビューを全4回に分けてお届けします。今回は第4回です。
インタビュー #1
https://p-dress.jp/articles/1953
インタビュー #2
https://p-dress.jp/articles/1955
インタビュー #3
https://p-dress.jp/articles/2017
■共有できないから、共感したい
―― ストレスカウンセラーとして心がけていることは何ですか?
共感と同感は違うんですよね……。私は宝塚時代の1995年に阪神淡路大震災を体験しました。その恐怖は身をもって知っています。同じ体験をしたからこそできるのが同感。しかし、ガンや育児や離婚など、誰かの痛みや悩みをすべて体験し共有することはできない。だとしたら上手に共感をしていきたいな……と。ストレスケアカウンセラーとして、お客さまの心と体の両方から声を聴いて、寄り添って、少しでも楽になれるお手伝いがしたいですね。
―― 2年の沈黙を経て、今春から芸能活動を再開した理由は何でしょう?
私なりのアプローチでBTUのストレスケアについてもっと多くの方に知ってほしい、という想いがひとつあります。しばらく講師に専念しようと芸能活動を休止したのですが、宝塚でがんばった時期があったからこそ、理解や応援してくれる方が多いのも事実でした。ようやく講師としても軌道に乗ってきたので、今年2月の出版パーティで芸能活動の再開を宣言し、この5月にライブで本格復帰しました。これから7~9月にかけても、宝塚のOGたちとのショーを予定しています。
■幅広く活動する日々
―― 久々にステージに立ってみていかがでしたか?
お休みしていた間は、まったく歌わない踊らない日々で……ものすごく新鮮でした。ただ古巣に戻ったという懐かしい感覚ではなかったですね。稽古場に入った瞬間「あ、また新しい世界が広がった」と心新たな気持ちでした。それに図らずして、ストレスケアがボイストレーニングの要素もあったのか、声帯が強くなっていて昔より声が出るようになったんですよ。どんなに歌っても枯れないんです。宝塚時代は「絞り出すような声で歌わない!」と怒られていたのに(苦笑)。体も丈夫になったので、長時間ヒールで歌って踊っても全然大丈夫!!
―― 乳癌の会のボランティアもされているそうですが。
KSHS(キチンと手術。ホンネで再建)という乳癌の方を応援する団体です。
立ち上げた方は、あややこと溝口綾子代表で、かつて乳房の再建は保険が効かず整形扱いだったのですが、彼女が10万人の署名を集め、保険が適用されるようになったんです。
私は歯科学会の理事をしているのですが、その関係者の方に彼女を紹介されました。溝口代表はもともと宝塚がお好きだったそうで、ある懇親会でベルサイユのばら「薔薇は美しく散る」を歌わせてもらい意気投合したんです。以来、KSHS主催のトークライブや年末のピンククリスマスでのファッションショーなどでお手伝いさせていただいてます。
■今、ここで幸せになる方法を見つけた
「あんなに宝塚で苦しんだけど、こんなに大切な過去はない」と笑顔で断言する真織さん。
宝塚を退団してから本名の熊谷美奈子に戻そうと何度も考えましたが、やはり宝塚だった真織由季の過去を否定したくない、切り離したくはない、と今では誇りを持てるようになったそうです。
―― つらい過去をどうやって受け入れられるようになったのですか?
BTUのストレスケアで学んでゆく自己分析の中で、私が宝塚を目指したキッカケは「スターになって、たくさんの人に愛してほしい!」という愛に枯渇した感情だと知りました。「求められたい、認められたい」の欲求の塊で……。でもね、本当のトップスターはそうじゃないんです。「たくさんの人に愛を与えたい」と本気で思える人がなれるの。その動機が最大に違ったから、私は「もっともっと」と一人で勝手に苦しみ、心身のバランスを崩してしまった。上手くいかないこと全てを“悲劇のヒロイン”になって周囲のせいにして。滑稽でしたよね(苦笑)。そんな堂々巡りを脱出する方法は、とにかく現在(いま)に“感謝”すること。それまでの私は、何か上手くいっていても、すぐ他に不平不満を探す癖がありました。
「結婚すれば、子どもを産めば、何かが変わる」と、沖縄移住を考えたときもあったけれど、それって依存ですよね。この思考癖が続いてゆく限り、私は一生幸せにはなれないだろうな~とようやく気づきました。今なら「ここでもすぐ幸せになれる」と思えます。
―― 最後に、新しい目標(夢)=自分との約束は?
自分の人生を丸ごと受け入れること! 何か問題やトラブルが起きても「あらま、今度はそうきたぁ~」といった感じで(笑)。そのためには、やはり力を上手に抜くことです。
そして、今くすぶっている女子にストレスケアで突破口を見つけてあげて、全国にキラキラ&イキイキした女性をたくさん増やしたい!! それは私がトンネルの中の暗さも、トンネルを抜けたときの明るさも両方知っているからこそできることだと思うのです。