綾野剛さん的「長身塩系グリーン」で旬なお部屋に。
条件は「贈る相手は男性」「観葉植物」「予算は1万円」。そんなときは“縦”にぐんぐん成長し、育てるのに手間のかからないものを選ぶのが賢い。
「金のなる木」が腐ったり、「幸福の木」が枯れたりすると、なんだかしゅんとする。運気の芽を自らつぶしてしまった気がして、苦いものを飲み込んだような気分になるのだ。
「うちの課の佐藤くん、新築マンションを買ったんだってさ。引っ越し祝い何がいい?って聞いたら観葉植物がいいって言うから、なんか適当にみつくろって贈っておいてくれない?」
夫の昭彦から、会社の部下に観葉植物を贈っておくよう頼まれた。
「そう言われてもなあ」
佐藤さんとは1〜2度あいさつしたことがある程度で、好みも全然わからない。下手に幸福の木なんて贈って、相手の負担を増やすのもどうかとも思う。
「こんなときは、グリーン王子に相談だ!」
グリーン王子は、近所の観葉植物専門店のイケメンお兄さんだ。ネルシャツを着た綾野剛みたいなルックスの王子は、私のどんな質問にも、いつもていねいに答えてくれる。
「なるほど、お相手の好みも、どんなイメージの家かもわからないわけですね」
グリーン王子は、強い日差しの下で少し切れ長の目を涼しげに細め、とろけそうな笑顔を私に向けた。塩顔と、意外に骨太な腕とのアンバランスがたまらない。
「ご予算は?」
「ええっと、上司からの引っ越し祝いだと、1万円ぐらいかしら」
「そうですよね。その金額の観葉植物が欲しいということは、ある程度の大きさがあるものがいいということだと思います」
「たしかに。小さな鉢なら自分で気軽に買えますもんね」
グリーン王子は、少し店内を見回してから、歯切れよく言った。
「そうしたら、長身塩系でいきましょう!」
「へっ? 何ですか? それ」
「日本のマンションに置くとなると、横に横に広がるものはじゃまになるから、縦に伸びる形がいいですね。鉢をそのまま床置きしたとき、グリーンがソファに座った目線より上にくる高さだと、部屋の雰囲気ががらりと変わる存在感が出ますよ。ただし相手の好みがわかないから、見た目のインパクトがありすぎず、暑苦しくないものがいいですね。
そしてもちろん世話が楽なもの。冬に葉が落ちず、急激に大きくならないものがいいと思います」
「こちらなんかいかがですか? インテリアグリーンの中でも、最近人気があるんですよ」
グリーン王子が指差したのは「エバーフレッシュ」というグリーンだ。細めの葉が光にあたって、涼しげに光っている。ネムノキの仲間だそうで、日中は葉を広げ夜は葉を閉じるという不思議な性質を持っているらしい。
“暑苦しくない長身塩系、手間がかからず一緒にいてラク”。まるで私の男性の好みストライクゾーンど真ん中ではないか!
「それ好きですっ。大好きですっ! それにします!」
勢い込んで私が言うと、グリーン王子は、にっこり笑い
「それじゃ、今配送のご用意しますね」
と店の奥へと消えていった。
いやいや、落ち着け私。私の好みの男性の話をしているのではないぞ。それにしても長身塩系グリーン、ひと目で気に入ってしまった。私も買って育ててみようかな。
+++ もなみのちょい足しポイント +++
観葉植物は、その育てやすさから、幸福の木と呼ばれるドラセナや、金のなる木という名前の多肉植物などが人気でした。
最近では、無印良品やIKEAなどの家具を使った、さっぱりスッキリな「塩系インテリア」が流行り始めていて、その影響からか、グリーンもさっぱり「塩系」で育てやすいものが、多く出回るようになっています。
「エバーフレッシュ」はその代表格で、繊細そうに見えますが環境適応力があり、育てやすい植物です。
ほかにもエアプランツやサボテンなど、ユニークな形の塩系植物もありますので、お店のかたにアドバイスをもらって選んでみてくださいね。