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私はどんな40歳になりたいんだろう

自分の好きだったものへの情熱が薄れてきた。年齢を重ねる中で、自分がこれからどう生きていけばいいのかわからない。漠然とした靄を抱えてきた。今もまだ答えは出ない。ちょっと暗い話になるかもしれませんが、どうかお付き合いください。

私はどんな40歳になりたいんだろう

「言うことは立派なくせに、中身が伴ってないよね」

新卒のときに上司に言われたことがある。一生忘れない、悔しくて自分が情けなくなった言葉だ。たしかに私は周囲の目を気にして良い人、“意識が高い”ことを言いがちな人間だと思う。

■新しく見つけた好きなこと

私は今まで人に趣味を聞かれて、明確に答えたことがない。
どちらかといえば、趣味と言えるほど何かに熱中できることがない人生を送っていた。

就職活動をしていたとき、エントリーシートの趣味欄に「映画と読書」と書いていたが、面接官からその欄に関して尋ねられたこともない。ありきたりだったからだろうか。でもなにか質問されたとしても、きっと相手に響くようなことは語れなかった。そんな自分をつまらない人間だとも感じていた。

でも、30代に入りやっと“趣味”と呼べるようなことができた。育児と仕事の両立にも慣れてきて、仕事でも責任あることを任されるようになったころ。気分を変えるためになんとなく赤リップを新しく買った次の日の朝、早く使いたくてメイクすることにワクワクしている自分がいた。

それまでは、出産を経て仕事復帰という流れの中で数年間の記憶を消失するほど忙しく、心身ともに余裕のない日々を過ごしていた。化粧品も何を使用していたのか全く覚えていない。

だから、次の日の憂鬱な出勤も、新しいコスメを買えば前向きになれるなら安いもんだなと思ったし、実際に気に入っているコスメをまとっている自分は気持ちも少し強くなっている気がした。お気に入りの化粧は自分にとって「武装」だ。

化粧品は開封したばかりの凜とした佇まいがとても美しい。開封直後は形を崩したくない気持ちと、早く使いたい気持ちが入り混じる。その瞬間を写真に撮るようになり、使用したものが良かったらうれしくなって、備忘録代わりに感じたことをSNSにあげるようになった。

「化粧品を買って、可愛さや使用感をSNSにアップすること」。

それが新しくできた“趣味”だった。

■「気分爆上げだわ」

最初は独り言のようなものだからと気楽に続けていたが、ひとつの変化があった。コメントのやりとりをする方も何人かできてきて、その中で実際に会って話したり、“コスメが好き”という共通の趣味を持った友人ができたのだ。
その友人は転勤が多い仕事をしており、初めて会った際も遠方から来てくれた。それまでLINEでやり取りはしていたけど、その日の帰り際、またしばらく会えなくなるのが寂しくて、思わずハグをしてしまった。
普通の知人友人に「シャネルの新色のリップが可愛すぎて選べなかったから3本買ったよ、でも気分爆上げだわ」なんて話はできないのだが、趣味の友人なら「それ最高」と言ってくれる。

それまで趣味の濃度が薄い人生を歩んでいた私からしたら、30歳半ばで職場以外の人と繋がりを持てることも、深く付き合える友人が新しくできることも信じられないくらい幸せなことだ。

化粧品に関する記事の依頼を頂けるようになったことも私にとっては大きい。好きなことについて発信できる自己表現の場をいただいたのは新しい挑戦でもあった。仕事や発信を通じてまた新しい人と繋がれる。趣味は人生を豊かにするって本当だと心から思う。

■40歳に向けて私はどうなりたいのだろうか

「化粧品」という趣味を持ってから、そのときの悩みや興味に応じて情報収拾をし、買える範囲でさまざまなアイテムを使用してきた。最初はブランドごとにどんなアイテムがあり、どんな特徴があるのか知ること。その中で自分が好きで、自分でも使いこなせるものがあるかどうか。そんな流れでコスメを手にしていった。だんだん似合う色と、そうでない色があることに気づき、自分に似合う色を探し始めてきた。

しかし人の好みは移り変わる。置かれた環境によっても自分にフィットするものは変わる。結局その瞬間、自分が“良い”と思ったのがそのときの私にとって正解。化粧品もそうだ。流行りは変わり、年齢とともに悩みや価値観、優先順位にも変化が起きる。

最近は以前ほどこういった情熱をコスメに注げなくなってきている。流れてくる情報に対してアンテナが立たなくなってしまった。アンテナが立つ瞬間があるとしたら、香水に対しての方が多い。気になる香りに出会えたときの喜びは、まだかろうじて残っている。

化粧品を探し求めることは「すごい! 素敵! あんな自分になれるかも……!」という驚きや発見、「理想の自分を武装できるのかも」という期待感に出会えるから。今もその出会いを楽しみにしているが、自分の気力がついていかない。

未熟な自分に対して自信をなくし、感受性が疲弊しているのが原因なのかもしれないなと思う。そもそも自分が思い描いている理想の自分に、化粧による武装で近づけるのだろうか、自分自身が変わっていくしかないのかもしれないと思うことがありすぎる。

あの上司の言葉は呪いとなって自分を縛り続けている。

「足りないと感じても、そんな自分を受け入れる」「ダメな自分でも愛してあげる」「生きてるだけで価値がある」。最近よく聞く言葉だ。それができたら本当に素晴らしいと思う。「足りない部分がある自分もOK、だってこっちは得意だもん」とか、「他人がどう言おうが、自分はこう!」と思えたら、すごく幸せだと思う。

そういう人はすごく強いと思うし、自分もそうなりたい。でも私はどうしてもそう思えない。いつも高い理想ばかり考えて、辛くなりがちだ。ストイックに努力してるのかって言われたら、必ずしもそうじゃなくて弱音ばかり言うこともある。弱さを共有できたっていい……と頭ではわかっていても心が抵抗をする。

20代を育児と仕事の両立で悩み苦しんでもがいてきた。
30代で仕事することの楽しさと、趣味を持つことの楽しさを知った。
40代に向けて、私はどうなりたいのだろうか。仕事のスキルを高めたいし、メンタルバランスを自分で整えられるようになりたい。「中身もちゃんと伴ってるじゃん」と自分にOKが出せるなにかを、私はまだ探しあぐねている。

ゆっこ

化粧は武装。主に赤茶・茶・オレンジを偏愛する。デパコス・プチプラ問わず、自分に似合う、自分がアガるコスメを探すのが好き。

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