300年愛される楽器・ストラディヴァリウスであなたのクラシック感性を磨く
東京で初めての開催となるストラディヴァリウスフェスティバルが開催されています。クラシックファンも、クラシックにはあまり詳しくない人も、この機会に、300年前から変わらず人々を魅了してきた名器ストラディヴァリウスに触れてみませんか。
クラシックにはあまり見識がないという人でも、「ストラディヴァリウス」という名前を知らない人はいないのではないでしょうか。そう、ヴァイオリンをはじめとした弦楽器の名称です。
その価値は億単位と言われ、時には骨董品として扱われてしまうこともあるそうです。しかし、ストラディヴァリウスが真価を発揮するのは、「生きた楽器」として演奏されてこそ。
そんな「生きた楽器」としてのストラディヴァリウスを、さまざまな角度から楽しめるフェスティバルが2018年7月から10月にかけて東京で開催されています。
そこで、大人の教養を身に着けたいクラシック初心者のスタッフHが、フェスティバルの第一弾「ソロイスツコンサート」に参加してきました。実際にストラディヴァリウスの音色を聴いてみた感想と、フェスティバルの魅力についてお伝えします。
■完璧な造形を持つ300年の名器・ストラディヴァリウスとは
コンサートの感想をお伝えする前に、ストラディヴァリウスについて少し説明します。
そもそも「ストラディヴァリウス」という名前はどこから来ているかご存知ですか。
実は、人の名前から来ているんです。
17世紀から18世紀にかけて活躍した、イタリア北西部のヴァイオリン職人アントニオ・ストラディヴァリ、そしてその子らが制作した弦楽器が、現在ストラディヴァリウスと呼ばれているものです。
ストラディヴァリ父子は生涯で1000〜1100挺(ちょう)もの弦楽器を製作したと言われており、約600挺が現存しているそうです。彼らは、ヴァイオリンやヴィオラ、チェロなど、今日のクラシックシーンに欠かせない楽器から、なんとギターに渡るまで、多様な弦楽器を製作しました。
■フランス王妃マリー・アントワネットにも愛された楽器
ストラディヴァリたちが活動した17世紀は、教会や宮廷サロンをはじめとする室内楽が盛んに催され、ヴァイオリンが世の中に普及し始めた時代でした。
ストラディヴァリウスは当時から高い評価を受け、それが奏でる音はローマ法王やフランス王妃マリー・アントワネットにも愛されたと言われるほど。
多くの製作者がヴァイオリンを生産した時代にも関わらず、ストラディヴァリウスが突出して高く評価されたのは、徹底的に楽器の質にこだわり、隅々まで丁寧に作るという職人としてのこだわりがあったからだそう。
300年前に生きた職人が残した楽器……しかも、クラシック音楽の演奏シーンが室内からより大きなコンサートホールへと場を移した現代においても、なおその評価は上がっているのです。想像しただけでも、期待が高まります。
■コンサート第一弾は若手ソリストと次世代の才能の競演
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今回スタッフHがお邪魔したのは、若手ソリストと次世代を担う音大生たちのジョイントコンサート。
出演は、大河ドラマ『真田丸』のテーマ音楽演奏も話題になった新進気鋭のヴァイオリニスト・三浦文彰さん、チェリストとして国内外での活躍が目覚ましい宮田大さん。
そして、東京藝術大学・英国王立音より選抜されたソリスト4名もストラディヴァリウスを演奏。オーケストラは同2校によるジョイントオーケストラです。
■主役は楽器であるストラディヴァリウス
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プログラムはすべて、ソリストが使用するストラディヴァリウスの魅力を存分に堪能できる協奏曲で構成され、若手ソリスト2名、次世代ソリスト4名、計6挺のストラディヴァリウスの音を楽しめる構成です。
1幕では、三浦さんによるモーツァルトの「ヴァイオリン協奏曲」、宮田さんによるカバレフスキーの「チェロ協奏曲」の二曲を演奏。若手ソリストの技巧と、ヴァイオリンとチェロ、それぞれのストラディヴァリウスの音の違いを味わいます。
2幕では次世代のソリスト4名が、ヴィヴァルディの「4つのヴァイオリンのための協奏曲」を。そして、フィナーレには三浦さん・宮田さんが競演し、ブラームスの「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」で幕を下ろしました。
ヴァイオリンだけでなく、チェロの協奏曲も盛り込まれているのは、「チェロのストラディヴァリウスもあることを知ってもらいたい」という主催者の思惑があってのこと。
スタッフHは、その思惑通り「チェロのストラディヴァリウス」の存在とその音に大変驚いたのでした。
特にフィナーレの二重協奏曲は、ソリストおふたりの魅力はもちろんのこと、ヴァイオリンとチェロのコラボレーションによって生まれる多彩な音の響きを堪能できる稀少な時間となりました。
■見えないはずの音が立体的に響いてくる感覚
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今回のコンサート会場は定員数約2000名、日本屈指のコンサートホールであるサントリーホール。
ソリストの後ろには何十人というオーケストラが同時に演奏します。それにも関わらず、ストラディヴァリウスの音色だけが、そこから飛び出して、客席の私たちの耳へとまっすぐ届いてきたのです。
音色の美しさは言わずもがな、立体的な響きは明らかにその楽器が特別なものであると示しているかのよう。
特に約5063挺しか現存していないというチェロが奏でる深みのある音は、心地よく耳に響くだけでなく、深く心にまで染み入るような感覚をおぼえました。
もし天国に召されるときには、ストラディヴァリウスの音色で送ってほしい……というのは半分冗談ですが、天使が奏でる音色はかくあらん、と思えるほど。
300年前に生きた人々も同じようにこの楽器に魅了され、あるいはその音をこぞって聴きたがり、あるいはその価値を神格化して所有を望み……。時代が移り変わり技術が進歩しても、人が「美しい」と感じるものは、そう大きく変化しないのかもしれません。
■素晴らしいものは人間の好奇心をも刺激する
クラシックコンサートに伺うのは、実に3年ぶりとなるスタッフH。これまで積極的には触れてこなかったクラシックを、この機会に改めて王道から学んでみようと思い、参加しました。
ストラディヴァリウスの美しい音色の響きは、確かに私たちの耳を満足させてくれました。しかしそれ以上に、素晴らしいものとは、人間の好奇心をも呼び覚ましてくれるものだと感じました。
科学技術が発達した現代でも完全には明かせていないその音の秘密とは一体何なのか。なぜこの音を、美しく、心地良いものと多くの人が感じるのか……。
コンサートを聴いておしまいにするのは、あまりにもったいない。だんだんとストラディヴァリウスについてより深く知りたくなるのです。
■「ストラディヴァリウス 300年のキセキ展」で深まるその魅力
今回のフェスティバルでは、実際にストラディヴァリウスが演奏されるコンサートのほか、歴史的・科学的な側面からその魅力を紐解く「ストラディヴァリウス 300年のキセキ展」が10月に開催される予定です。
展示会場では、楽器の製作過程をライブデモンストレーションで見ることができるなど、学術的な側面以外からもその魅力を徹底的に知ることができます。
音楽を聴くことに限らず、あらゆる芸術を自分なりに受けとめるには、ある段階からその感性を動かすための筋力のようなものが必要です。そしてそれは結局、知識や体験を自分で重ねていかないことには鍛えることができないのです。
スタッフHのように、普段あまりクラシックに触れる機会がない方こそ、ストラディヴァリウスをきっかけに、クラシック音楽と向き合う感性を磨いてみてはいかがでしょうか。
別に大勢が価値を認めているからといって、「美しい」とか「良いものだ」とか、無理に感じなくても良いのです。自分の心を動かすものは何なのか。それを模索することによって、自分自身を見直す機会にもきっとなると思います。
ストラディヴァリウスフェスティバル2018は、今回のコンサートの後、2回のコンサートを経て、「300年のキセキ展」へとバトンをつなぎます。生音を耳で聴いてから、エキシビジョンで楽器を間近に見たり、学ぶことで、その世界を深めてみてはいかがでしょうか。
■ストラディヴァリウス フェスティバル2018 詳細
[コンサート]徳永二男 プレミアム・リサイタル ~巨匠が奏でる、世界の名器ストラディヴァリウス~
日 時:2018年8月17日(金) 19:00開演(18:30開場)
会 場:ヤマハホール
東京都中央区銀座7-9-14
東京メトロ銀座線/丸ノ内線/日比谷線「銀座」駅A2出口より徒歩4分
都営地下鉄浅草線「新橋」駅、「東銀座」駅より徒歩7分
JR線「新橋」駅より徒歩7分
出 演:徳永二男(ヴァイオリン)、坂野伊都子(ピアノ)
曲 目:P.サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン Op.20
C.サン=サーンス/序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 Op.28
H.ヴィエニャフスキ/華麗なるポロネーズ 第1番 ニ長調 Op.4 ほか
チケット(全席指定/消費税込)
6000円
チケット取扱い
チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード:114-774)
主催:東京ストラディヴァリウス フェスティバル 2018実行委員会
監修:日本ヴァイオリン
共催:ヤマハ株式会社
お問い合わせ:株式会社1002[イチマルマルニ] 03-3264-0244
※都合により、出演者・プログラムが変更になる場合がございます。予めご了承ください。
※未就学児のご入場はご遠慮ください。
[コンサート]マキシム・ヴェンゲーロフ ストラディヴァリウス・リサイタル 2018 ~世界最高峰のヴァイオリニスト、2挺本のストラディヴァリウスストラディバリウスに挑む~
日 時:2018年10月1日(月) 19:00開演(18:30開場)
会 場:サントリーホール 大ホール
東京都港区赤坂1-13-1
出 演:マキシム・ヴェンゲーロフ(ヴァイオリン)、ルスタム・サイトコーロフ(ピアノ)
曲 目:J.ブラームス/ヴァイオリンソナタ第1番「雨の歌」作品78 第2番作品100 ほか
チケット
(全席指定/消費税込)
SS 25000円
S 20000円
A 18000円 B 15000円 C 10000円 学生5000円
チケット取扱い:
チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード:114665)
e+(イープラス)
サントリーホールチケットセンター 0570-55-0017
主催:ネオクラシカ
協賛:東京ストラディヴァリウス フェスティバル 2018実行委員会
お問い合わせ:株式会社ネオクラシカ info@neocl.co.jp 03-3461-0508
[エキシビジョン]ストラディヴァリウス 300年のキセキ展
至高の響きを生むための完璧な造形を持つと称されるストラディヴァリウス。
実物はもちろん、その誕生の系譜から、制作環境、所有者の履歴、その秘密を解き明かすための科学的実験に至るまでを展示する壮大なエキシビジョン。
ストラディヴァリウスの響きが人間に与える美しくも不思議な現象を“f”enomenonと称し、4つの視点から分解する。至高の楽器のその所以を深く知った上で、会場内ステージで貴重な生音も実際に体験できるまたとない機会になります。
会場:森アーツセンターギャラリー 実施期間:2018年10月9日(火)〜15日(月)
https://tsf2018.com/programs/exhibition/
会 期:2018年10月9日(火)~15日(月)
開館時間:10/9(火) 15:00~22:00
10/10(水)10:00~17:30
10/11(木)12:00~17:30
10/12(金)10:00~17:30
10/13(土)10:00~22:00
10/14(日)10:00~22:00
10/15(月)10:00~17:30
チケット情報:一般 2300 円、中・高・大学生 1500円 、小学生 800円、小学生未満は無料
※障がい者手帳をお持ちの方とその介助者(1名まで)は、当日料金の半額となります。
ご入館の際に、チケットカウンターにて障がい者手帳をご提示ください。
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