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映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』感想。美術館を舞台に人間の本質に迫る社会派エンターテインメント!

【シネマの時間】第26回は、リューベン・オストルンド監督の待望の最新作、映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』をお送りします。美術館を舞台に、格差や差別といった現代社会の問題をあぶり出し、痛烈な笑いを交えながら人間の本質に迫る話題の問題作! 4月28日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー!

映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』感想。美術館を舞台に人間の本質に迫る社会派エンターテインメント!

こんにちは。アートディレクターの諸戸佑美です。

新緑の季節、話題のアートスポットや美術館へのお出かけも気になるところですね。

今回ご紹介する映画は、美術館を舞台に人間の本質に迫る傑作社会派エンターテインメント!

『フレンチアルプスで起きたこと』の鬼才リューベン・オストルンド監督の最新作『ザ・スクエア 思いやりの聖域』をお贈りいたします。

有名美術館のキュレーターが発表した展示作品「ザ・スクエア」が、世間に思わぬ反響を生み、とんでもない大騒動へと発展していく皮肉な運命の悲喜劇です。

本作のアイディアは、2015年、スウェーデンのベーナムにあるデザイン美術館Vandalorumで催されたリューベン・オストルンド監督とカッレ・ボーマンのART PROJECT「THE SQUARE」からきています。

それは、スウェーデン全都市の中心部に人道的な聖域(枠内ではすべての人に平等な権利と義務が与えられる)を設置するというアイデアでした。

美術館の展覧会やイベントの仕事、PRプロモーションの裏側も多少の誇張はあるにせよ垣間見ることができ、メディアのあり方など問題点も提起し大変興味深く今日的です。

第70回カンヌ映画祭にて最高賞パルムドール受賞を果たし、ヨーロッパ映画賞で最多6部門を制覇、そして第90回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされるなど注目の問題作。

ぜひこの機会にお楽しみくださいませ!

©️YUMIMOROTO

■映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』あらすじー美術館を舞台に人間の本質に迫る、観るものすべての心が試されるヒューマンドラマ。

主人公のクリスティンは、権威ある現代美術館の敏腕キュレーター。

地位と名誉と容姿に恵まれ、洗練されたファッションに身を包み、バツイチですがふたりの可愛い娘を持ち、そのキャリアは順風万風そのもののように見えます。

彼は、次の展覧会で「ザ・スクエア」という地面に正方形を描いた作品を展示すると発表します。

「ザ・スクエア」とは、4メートル四方に四角く地面を区切っただけのもので、脇には「ザ・スクエアは、信頼と思いやりの聖域です。この中では誰もが平等の権利と義務を持っています」と記されています。

ザ・スクエアは、「すべての人が平等の権利を持ち、公平に扱われる」という「思いやりの聖域」をテーマにした参加型アートプロジェクトで、現代社会に蔓延するエゴイズムや貧富の格差に一石を投じ、世の中を良くする狙いがありました。

そんなある日、クリスティアンは、広場で人助けをした隙に携帯と財布を盗まれてしまいます。

犯人探しのために彼のとった軽率な行動は、思いがけず同僚や友人、自らの子どもたちをも裏切ることに。

一方、PR会社は、お披露目間近の「ザ・スクエア」を大々的に宣伝しようと画期的なプロモーションを持ちかけます。

それは作品のコンセプトと真逆のメッセージを流し、わざと炎上させて、情報を拡散させるというやり方でした。

その目論見は、見事成功したかに思えましたが、世間の怒りはクリスティアンの予想をはるかに超えて、大騒動になってしまいます。

クリスティアンは予期しないさまざまな困難に直面。いったい、どうなるのでしょうか……!

■理想と現実、あなたの心が試される

主演の敏腕キュレーターであるクリスティアンには、本作でブレイクを果たし、ヒット作『ドラゴン・タトゥーの女』の続編に出演決定したクレス・バング。

共演にHuluのドラマシリーズ『ハンドメイズ・テイル 侍女の物語』でエミー賞受賞、ゴールデン・グローブ賞受賞などに次々と輝き、脚光を浴びるエリザベス・モス。

また『シカゴ』などの演技派ドミニク・ウェスト、謎のパフォーマー役に『猿の惑星』のモーションキャプチャーを務めたテリー・ノタリーらがしっかりと脇を固めています。

アート界を舞台に、現代社会を生きる人々が抱える格差や差別といった不条理を抉り出し、本当の正義や生きていくことの本質を痛烈な笑いとともにユーモアたっぷりに描き出した本作。

“人を信用する”のか“人を信用しない”のか。

美術館の訪問客は、ふたつのドアのどちらかを選択しなければいけません。

主人公が窮地に追い込まれ、人間としての決断を迫られるたびに私たち観客は「自分だったら、どうするだろう……?」と考えずにはいられないでしょう。

■映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』作品紹介

4月28日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマ、立川シネマシティほか全国順次ロードショー
公式ホームページ:http://www.transformer.co.jp/m/thesquare/

原題:THE SQUARE
監督・脚本:リューベン・オストルンド
製作総指揮:トマス・エスキルソン、アグネタ・ベルマン、ダン・フリードキン、ブラッドリー・トーマス
製作:エリック・ヘルメンドルフ、フィリップ・ボベール
撮影:フレドリック・ウェンツェル
美術:ジョセフィン・アスベルグ
衣装:ソフィー・クルネガルド
ヘア・メイク:エリカスペツィク
音響デザイン:アンデシュ・フランク
ミックス:アンドレアス・フランク、ベント・ホルム
編集:リューベン・オストルンド、ジェイコブ・シュルシンガー
制作年:2017年
制作国:スウェーデン、ドイツ、フランス、デンマーク合作 / 英語、スウェーデン語
上映時間: 151分 / DCP / カラー / ビスタ / 5.1ch
日本語字幕:石田泰子
配給:トランスフォーマー
後援:スウェーデン大使館、デンマーク大使館、在日フランス大使館 / アンスティチュ・フランセ日本
©️2017 Plattform Produktion AB / Société Parisienne de Production / Essential Filmproduktion GmbH / Coproduction Office ApS

■映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』キャスト

クレス・バンク=クリスティアン
エリザベス・モス=アン
ドミニク・ウェスト=ジュリアン
テリー・ノタリー=オレグ
クストファー・レス=ミカエル


アートディレクション・編集・絵・文=諸戸佑美

諸戸 佑美

本や広告のアートディレクション/デザイン/編集/取材執筆/イラストレーションなど多方面に活躍。

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