岡本静香 連載 #2 こだわりの住まいで、理想の自分へと近づく暮らしをしたい。
8月に4年住んだ家から引っ越しを済ませた岡本静香さん。新居を決めるまで、にあった紆余曲折や事件(?)を振り返りながら、家や住まい選び、新生活について教えていただきました。
お盆シーズンに引っ越しをしました。
今の家に決めるまで、自分自身でいろいろ考えたこと、幾度にも渡る主人との話し合い……付き合い始めてから7年半、こんなに話し合うことはあったかなと思うほど(笑)、濃い日々を過ごした感覚です。今回は引っ越しと新生活について綴っていきたいと思います。
前の家には4年、お世話になりました。
壁も床も真っ白で、敷地内には緑があふれ、かわいらしいマンションで、一目惚れして空き待ちしたんです。
リビングには主人のオーディオスペースと私のドレッサースペースが共存し、遊びにきてくれた友人からは「ここから右はご主人、左は静香……と、ふたりの世界観がきれいに分かれてるよね(笑)」と面白がられたものです。
唯一気になっていたのは、洗面所とバスルームがあまり広くなかったこと。
美容が生まれるスペースなので「次に住む家ではこの2ヶ所が広々としていて、とびきり素敵なところにしたい!」と心に決めて、1年半くらい前からネットで物件探しをスタート。最初はよさそうな物件を検索するくらいでしたが、途中から物件探しが趣味化していました。
都内の特定エリアなら、今どこが空室か、相場はどれくらいか、不動産屋さんのようにばっちり把握していたと思います(笑)。
■歩いていて楽しい街、エネルギーをもらえる街に住みたい
『ふつうに過ごすだけでキラキラ変身していく』を出版した今年1月頃からは、徐々に内見も開始しました。
引越しをしたかった理由は、4年間住んで満足しきったことと、「魅力的な街に住みたい」という想いがあったからです。
前回の家はとても静かな環境にあり、周りにお店などは多くありませんでした。
実家住まいだった頃は最寄駅が栄えていたので、帰宅時はにぎやかな街からエネルギーをもらっていましたし、朝にすぐパソコンをしにカフェに行けることや、仕事へのアクセスの良さも魅力的でした。
あと数年間は仕事も家事も全力でがんばるイメージができていたので、帰宅してすぐに食材を買いに行けることや、荷物が多い撮影が続く日に一度帰ってまた出ることができるアクセスの良い場所に引っ越したかったのです。
家探しで私自身が譲れなかったポイントは、そういった場所と、心地よい洗面所とお風呂があること、お日さまの光がたっぷり入ること。
主人からは、具体的な平米数、アクセスが良いのはいいけれど必ず静かなエリアであること、ベランダが広いこと、リビングに大きな窓があること、緑がたくさん見えて景色もよいこと、そしてお料理好きなので、絶対にカウンターキッチンがいい、とリクエストがありました。
こうなるとぐっとぐっとぐっと絞り込まれます。ほぼ、ない(笑)。
そんなおうちをどうやって探すか?
私の場合、よく出かける大好きな街があり、そこから「徒歩20分」のエリアを歩き回りました。とにかく足を使って、このエリア内でもとくにどの地域が好きか、どこに住みたいかを特定したかったのです。
希望の住所を2ヶ所まで絞り込んで、その中で条件を満たす新着物件が出ていないか、毎朝ネット上でチェックしていました。お願いしていた不動産屋さんの誰よりも早く、情報を見つけていたと思います(笑)。
■夫婦ふたりの理想をすべて叶える運命の家との出会い
あるとき、今の家からすぐ先のところに、久しぶりにときめく物件を見つけました。内見の前日に、外から物件を見てみたくて、主人を誘って「外見」へ(笑)。
でも、物件の正面に高層マンションが建築されかけていたり、大通りが比較的近かったりと「うーん、ここじゃないな……」と肩を落としました。
すべての理想を叶える家に住む、と決めていたので、どんなにささいなことでも妥協したくなかったのです。
元気をなくして、とぼとぼ歩いているときに、ぱっと目に飛び込んできたのが、今住んでいるマンションでした。キラキラ輝いて見えて、心臓がどきどき。
住みたいエリアにこんなに素敵な物件があるなんて……これ以上のときめきはないと直感しました。
それからは、ネット上をくまなく探して、その物件が賃貸に出ているときの相場感を知ったり、どちら向きの部屋ならどう日が入るかシミュレーションしたりして、空き部屋が出たら即内見し、申し込もうと決めていたのです。
あるとき新しくお願いした不動産屋さんから連絡をいただき、即日夫婦で内見へ。部屋に入った瞬間、大きな窓とベランダ、その先に緑あふれる光景が広がり、ふたりでしばらくポカーンと口を開けて立っていました(笑)。
まさに、ふたりの理想が全部詰まった最高の家。
1年半近くもの間、毎日物件をチェックしていましたから、もうこんな部屋に出会うことはないだろう、と確信していました。
■たとえ自分ひとりでも、そこで新生活を始めたかった
その日から4〜5日、主人と話し合いを続けました。
彼は堅実な人で、人生を逆算で考えるタイプ。一方で、私は「将来は◯◯のようになっている」と理想の自分を設定して、それが叶うと疑わずに日々努力するタイプ。だから「住む場所にこだわって、2〜3年は仕事を集中的にがんばって、素晴らしいものを発信し、理想を叶える」という考えは、なかなか理解されづらかったのです。
内見から5日目、朝食の席で、意思を固めた私は主人にこう伝えました。
「家探しを1年半やってきて、すべてを叶える家に出会ったから、私はあそこを借ります。一人で借りる場合はオフィスとして使い、夜はこの家に帰ってきます。でももし、あなたもあの家が気に入ったのなら、引っ越そう。二人で住みたい」
その瞬間、主人の表情が一気に変わって「そこまでの決意があるなら、わかった」と、引っ越すことが決まりました。
そこからは目まぐるしい日々。手続きや掃除や、あっという間に1ヶ月が経ち、様々なことを乗り越えて、主人とより仲が深まったと思います。
■「ベランダで食事」が定番に
さて、部屋が整い、落ち着いて暮らし始めて1ヶ月。
環境の変化とは面白いもので、暮らし方も変わるのですね。私の中でもいくつか変わったことがありました。
まずは、食に関すること。
前の家でもベランダで食事をすることは多かったのですが、天気があまりよくない日や暑い日は室内で食べていたんです。
でも、この家に越してからは、雨の日も風の日もベランダでごはん(笑)。
主人とふたりで料理をする機会も増えました。
キッチンが広くなったので、ふたりで作業をしていてぶつかることもなくなり(笑)、前菜担当、メイン担当と手分けして、休日は夫婦で料理〜食事までの工程をゆったりと楽しんでいます。
■引っ越しを機に習慣がより良くアップデート
もう1つは、お気に入りの街に暮らし始めたことで、ウォーキングをする時間が増えたこと。早起きしてスーパーに新鮮なジュースを買いに行ったり、夜帰宅してから足りない食材を買い足しに行ったり。
活気のある街からパワーをもらっています。
よりたくさん体を動かすようになったことで、食事の内容もますますヘルシーになり、一石二鳥です。
さらに、以前はふたりの世界観が分かれていたリビング(笑)でしたが、引っ越してからはトーンを統一しました。
鏡を置いていたドレッサーはパソコンスペースに。
やっぱりふたりで使うリビングだから、世界観をひとつに整えたかったのです。
今はドレッサーのコーナーで、本の原稿やブログ、コラムを書くようになりました。
代わりに、スキンケアやメイクは洗面所でするようになりました。
私の場合、メイクよりもスキンケアのほうが大切なので、スキンケア用品の棚を作りました。
■家を変えれば確実に心地よく暮らせる、というわけではない
今では夫婦ともども、この家に大満足しています。
引っ越しを経て、いくつか大事な発見もできました。
そのひとつは、素敵なところに住んでいても、自分の気持ちがトゲトゲしていると、居心地のよさを感じないということ。
理想を叶える家に住むと、自動的に生活も楽しく素晴らしいものになる、と思っていたのですが、実はそうではない。心地よい生活を送るための努力は、どんな家に住んだって、必要不可欠なのです。
家族と一緒に住むには、お互いの希望や考えていることを、優しい気持ちを持って話し合うことがとても大切だと思います。
もうひとつ、自分にとって家とは何だろう、と考える機会を得たのはよかったと思います。
私にとって家は、家族と人生を歩む大切な場所であり、起きて、食事をして、眠って、本やコラムを書いて、写真を撮って、ブログに載せて……と、いろいろなものを作ったり、発信したりする起点となる場所でもあります。
だから自分にとっての心地よさはもちろんですが、読者の皆さんが見て気分がよくなる場所、打ち合わせにいらした方も遊びに来てくれた友人も快適に過ごせる場所で暮らしたい。
家は一つひとつの瞬間を過ごす場所だから、そのときどきの自分に合った“最高に好きな場所”を選びたいと思っています。