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「お洒落をしたい、を平等に」Fit Me Order Madeが叶える“既製服ではできないこと”

「年齢や体型を超えて、女性がキラキラ輝くお手伝いをしたい」と会社員時代に、ライフワークとして「Fit Me Order made」を起ち上げた星田奈々子さん。フルオーダーメイドの洋服に込めた思いを伺いました。

「お洒落をしたい、を平等に」Fit Me Order Madeが叶える“既製服ではできないこと”

恵比寿駅からほど近い場所にある「Fit Me Order Made」(フィットミーオーダーメイド。以下、フィットミー)のサロン。広々とした部屋の一角には、ワンピースやジャケットをはじめとするさまざまな洋服が並べられています。

既製品ではあまり見ないような珍しい柄や形も豊富で、眺めているだけでワクワク。これらの洋服のほとんどが1万円台で、しかもフルオーダーで購入できるというから驚きです。そのビジネスモデルや創業の経緯を、フィットミー代表の星田奈々子さんに伺いました。

■友人の悩みをきっかけに、会社員を続けながらの創業

もともとアパレルに関しては何の知識もなく、自分でボタンを縫い付けることもできなかったという星田さん。広告系の会社に勤めてブライダルに関わる仕事をしていましたが、2005年頃に転職を意識し始めます。そのころの友人との会話が、フィットミーを始めるきっかけになりました。

「胸の大きい友人が服のボタンがかけられずに悩んでいて『ジャケットの前がしめられるものなら着る』と言っていました。私はよく海外でオーダーメイドで洋服を作っていて、それをまわりから褒められることが多かったんです。だから彼女もそうすればいいのでは? と思ったんですが、『1着で5万円ぐらいするから無理』と諦めていて。彼女の言葉をヒントに『オーダーメイドの洋服が1万円台で注文できるようになったら、みんな喜ぶのでは』という発想が生まれました」

■広告を打たずに口コミで拡散 フィットミーの集客モデル

2006年3月、星田さんは会社員を続ける傍らフィットミーを創業。2013年に出産したことをきっかけに、勤めていた会社を辞め、本格的に事業を開始しました。現在は年6回のオーダー会を中心に、それ以外の時期も週5日随時オーダーを受け付けています。基本料金はワンピース17,000円、ジャケット18,500円など、すべて生地代・縫製代なども含んだ一律価格。フィットミーがここまでリーズナブルな価格を実現している理由は2つあると星田さんは言います。

「1つは、広告を打たないので広告費がかからないこと。創業当初は会社員だったので大量に注文を受けることができなかったというのもありますが、広告系の会社にずっといたので、自分が事業を始めるときは広告に頼らず、商品の魅力で動いてくれる仕事をしたかったんです。

もう1つは、商品をベトナムの工房で作っていること。向こうでは生地や縫製料金が安く、型紙を作らない方法で縫製するので、日本では1パターンの型を作るだけで数万円かかるものが一切かかりません。

また、注文を受けたらまず仮縫いをして、OKだったら本縫い、納品という流れが一般的なんですが、フィットミーは仮縫いをせず完成品が工房から送られてきて、日本でお直しをして納品、という形をとっています。仮縫いの工程を省くことでその分の費用も抑えられているんです」

広告を打たずに、どうやって集客をしていたのでしょうか? 星田さんはまず、「知り合いを中心に、20名に1着ずつ無料でオーダーできる」という大盤振る舞いで人を集めます。無料オーダーで洋服を作った20人の女性たちは、その仕上がりを気に入って今度は友人を連れてサロンに再訪する。そうした口コミの力でじわじわと顧客を増やしてきました。

「1万円台で洋服が作れるとなると、仕事帰りや食事に出かけるついでなどで友人を誘いやすいのでは」と星田さんは分析しています。

■アパレルの知識がないからこそ消費者の視点になれる

予約してサロンに来店したら、まずはデザインを決めるところから始まります。切り替えの位置や胸元の開き具合など、気になる部分も細かく採寸。気に入ったワンピースを柄や素材違いで注文し、オールシーズン着ているという愛用者もいるそうです。

忙しいビジネスウーマンが一度で大量にオーダーしたり、トレンドを抑えた洋服をリーズナブルに手に入れたい人が集まったりと、フィットミーを利用する人の目的はさまざま。その中でも一番多いのは、体形に悩みを抱えている人たちです。

ふくよかで既製品では似合う服がない人、極端に瘦せていて服のお直しをするだけで1万円以上かかってしまう人など、悩みの数だけフルオーダーのニーズがあります。

「コンプレックスをカバーするだけでなく、どうすれば一番きれいに見えるかということを皆さん考えているんですが、既製服はそこまで考えて作られていないですよね。そこをクリアして、自分にとって『これがベスト』と思う採寸でオーダーできるから、着ている方も気持ちがいい。

私はアパレルの知識はありませんが、そのぶん『こうしなければいけない』という業界特有の思い込みみたいなものがなくて、消費者視点になれる。それが自分の強みになっているのかなと思いますね。在庫をたくさん抱えてセールで売るよりも、一着一着好きなものを低単価で作る方がいいですから」

■「みんなが好きな洋服を着られるようにすること」は人を幸せにするビジネス

フィットミーの画期的な試みが評判を呼び、現在は東京を中心に全国から多くの人がサロンに訪れます。遠方から旅行を兼ねて来る人もいるため、今後は出張オーダー会の開催やEC事業化を目指しているそうです。

「一度サロンや出張オーダー会に来ていただいて採寸したら、それ以降はECサイトで注文できるようにしようという方向で動いています。フルオーダーでネット注文できるのは、おそらくどこもやっていないはず。

今は要件定義をしている段階ですが、やっぱりハードルは高いです。だからこそ楽しいなとも思いますね。また、地方展開に向けて先日初めて鎌倉で出張オーダー会も開催しました。今後は大阪・名古屋・福岡など主要都市でもやってみたいと思っています」

さらにトランスジェンダーやアレルギーを持っている人など、体型以外の理由でもフルオーダーへのニーズは高まっています。そういう人たちに向けても告知を拡大し、多くの人が心地よくなれるサービスを提供していきたいと星田さんは語ります。

「フィットミーのコンセプトは『お洒落をしたい、を平等に』。年齢や体型を気にせず、みんなが好きな洋服を着られるお手伝いをするってとてもやりがいのあるお仕事だと思いますし、フィットミーとしての事業価値も上がっていく。

私はアパレルがやりたくて始めたのではなくて、人を幸せにするビジネスがしたかったんです。皆さんがオーダー会にフィットミーの洋服を着てきてくださったり、普段フェミニンな格好をしない人がオーダーしたワンピースを喜んで着てくださったり、そういう姿を見られるのが本当に嬉しいです」

Fit Me Order Made
http://www.fitmejp.com/

Text=芳賀直美

DRESS編集部

いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。

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