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最愛の娘と私らしく暮らす今、失ったものは何もない【未婚の母という生き方 #1】

2年前、念願の子どもを授かり、未婚の母になる道を選んだ岩田笑子さん。妊娠を歓迎しなかった男性との同棲を早々に解消し、不安を抱えながらも娘を出産。父不在で子どもを産んだこと、母として、働く女性として奮闘する日々のことをリアルな言葉で綴っていただきました。

最愛の娘と私らしく暮らす今、失ったものは何もない【未婚の母という生き方 #1】

私が子どもを欲しいと切望したのは結婚をしていた頃である。結婚をしたら子どもを持つのが当然だと思っていた。しかし、待てど暮らせど赤ちゃんはやってきてはくれなかった。不妊問題、次第にセックスレス、夫の借金……よくある話だが自分に降りかかってくるなんて思っていなかった。

離婚に至った私は充実していた。夫の借金返済のための仕事ではなく、やりたかった仕事を存分にし、アフター5もしっかり楽しんだ。飲み過ぎた朝、隣に知らない男性が寝ていた。娘の父親である。

「げ! やってしまった!」心の声、いや、生の声であった。言い訳っぽく聞こえるかもしれないが、こんなシチュエーションは生まれて初めてだ。浅はか過ぎるアバンチュール。

一応気が合ったからそうなったのであろうと仮定して、もう一度会うことにした。2度目は、「はじめまして」というレベルで顔も何もかも覚えていなかった。1度目がよほど泥酔していたのであろう……情けない。なんだかんだで惹かれ合い、お付き合いが始まった。

■無意識のうちに、未婚の母になる予感か?

そして、1年経たずして思いがけず妊娠! 結婚していた頃は何の気配もなかった赤ちゃんがやってきたのである。不思議なものだ。

まだ検査薬も試していなかった時期のメモ書きが残っている。「赤ちゃんへ。お母さんのところに来てくれてありがとう。すごく嬉しいよ。お父さんはどうだか分からないけど、必ずお母さんがあなたを守ります」とある。

へ〜。まだ妊娠しているかも定かではないのに、私はすでにシングルマザーになることを予感したらしい。さすがだ。だてにバツがついているわけではないようだ。

産婦人科へ駆け込んで妊娠を確認し、男性へ報告したが、良くない反応が返ってきた。そして「私1人でも産んで育てようと思っている」と言う私に、男性はこう言ってのけた。

「ちょっと2人の関係に気持ちが揺らいでいたところだった。それに財産問題で揉めるのは困る。産まないでこのまま付き合ってはいけないかな」。は? としか言えない。

私は今ここに宿った命に喜びを感じている。そして、もういい年の大人だ。自分の人生は自分で決めたい。揺らいでいるらしいこの男との結婚は望まず、「1人で産みますので」と伝えているのだ。

それなのに、なぜ産むか産まないかを、この男の都合で決めなければならないのだ。産むのも育てるのも私だというのに!

男性は、私からするとべらぼうに金持ちであった。そしてバツイチで、すでに2人の子どもの父親。男性はもしも私が産んだ場合、将来の遺産相続の心配をしたのである。いや、そんなことを理由づけて、結婚や産まれてくる子どもの親になることから逃げただけだろう。

それにしても、まだ豆粒ほどの赤ちゃんが財産を欲しがっているとでも言うのだろうか。ただ命が芽生え生まれたいだけだ。許せぬ。絶対に許すまじ。心に誓った。

この時点で100年の恋から覚めた私は、とっとと同棲生活を解消し、引っ越した。妊娠判明からわずか2週間後には新居で暮らしていた。

■同棲解消からの別居、心に苦しみを抱えた日々

ここからが苦しい時期だった。だんだんとお腹が大きくなるにつれて、不安が大きくなっていった。1人で産む。1人で育てる。どうなるんだろうか。経済的に不安にもなった。

身重な状態でギリギリまで働いても、臨月と産後2〜3ヶ月は仕事ができない。というか、最低でも子どもが1歳になるまでは、ベッタリとそばにいたい思いがあった。

幸いにも、元夫との結婚生活で学んだ生きる術「ヘソクリは大事!」により、こっそり貯めてきた蓄えがあった。それでしばらくはなんとかなるだろう。しかし、その先、仕事に復帰したとしてもこれまでと同じような時間帯では働けない。保育園に預けている時間内で、娘を食べさせて育てていけるくらいは、しっかり稼がなければならない。私は決めた。産後は独立する、と。

男性に直談判しに行った。
「あなたが渋っている認知もいらないし、子どもが成人するまでの養育費もいらない。ただ、子どもが2歳になるまでに、私は独立して生活の基盤を作りたい。あなたはそれに対して全面的に協力してください」
男性はなぜかとても喜んだ。「カッコイイ女だ。惚れ直した。俺にできることは何でもする」と言った。結婚と認知はできないみたいだが。

とりあえず、男性の財力と権威にホッとした。私は未婚の母としては恵まれているほうだろう。しかし、認知もされないというのは、何の保証もないことにほかならない。案の定、男性とは連絡がとれなくなった。

そして、娘の戸籍の父親の欄は空白であり、父親から自分の子だと認めてもらうことすらされなかった。なぜこんなことになったのか……涙で枕を濡らすことは多々あった。まだ見ぬ娘を思うとごめんね、ごめんねと思うばかり。ツラくてたまらなかった。

■12月26日、最愛の娘が誕生


「神さま、私は一体どうすればいいのですか?」と泣き叫んだ。「すべてはうまくいっている」おじさんの声が頭の中に響いた。へ? 私はいよいよ頭がおかしくなってしまったのか? まぁ、頭がおかしくなっていただろう。それほど辛い時期だった。おかしくなったついでに、スピリチュアルモードに入った私は、このおじさんの声を信じることにした。

私は今人生の修業をしている。すべてはうまくいっている。これが私のベストであり、娘にベストな選択だ! こう信じて出産までの時期を過ごした。予定日は正月だったが、祝日料金での出産入院は避けたいところ。という勝手な母の都合で、「キリストさまと同じ日に生まれておいで」とお腹に呼びかけていた。

するとキリストさまの誕生日に破水。娘! 天才か。なんて親孝行な子なのだ。クリスマスに産まれようと意気込んだ娘は、なかなか骨盤に頭を入れることができなかった。

回旋異常というらしい。おかげさまで母は白目を向いて、娘は心拍が弱まった。「母さんが無理なお願いをしたせいだね……ゆっくり産まれておいで」と思った瞬間に骨盤に頭がスッポリと入った。いろいろと驚かされた出産劇だった。

そしていよいよクリスマスの翌日、娘がこの世に誕生したのだ。

■娘に必要なのは私。「父になるはずだった男性」はいらない

娘は今年の年末で2歳になる。

私の場合、産まないという選択肢を持っていなかったが、娘を産んで本当に良かった。娘は癇癪持ちの最強ベイビーであったが、近頃は「かあたん、ちき(はぁと)︎」とハグをしてくれる。元気いっぱい、おてんばに成長している。私はこれまでに感じたことのない幸せを日々かみしめている。

男性とは再び連絡がとれるようになった。どんな心境の変化があったのかは不明だ。もう会うことはないが、私の仕事に対してとても協力的で、とても助かっている。

娘が生まれた今、男性に対する気持ちはすごく変化した。怒りも恨みもない。娘に出会わせてくれてありがとうと、感謝しているほどだ。父親だと言われても「え? なんで?」というような感覚である。娘からしたら知らないおじさんでしかない。

娘にとって必要な人間はこのおじさんではない。だからこそ、とても良好な関係ともいえる。ちなみに元夫もできることはする! と協力的だ。あなたにできることはあまりないけどね。

仕事も最近になって、独立開業した。何もかも娘中心に物事を判断している現在は、とても健康的な毎日でもある。無理をしないというか、できない。それがかえって好都合なのである。仕事に夢中になっていても、娘のお迎えの時間になればパッと切り上げる。

母になる前の私はこうはいかなかった。ぶっ倒れるまで何かに夢中になり、わけがわからなくなるまで飲んだくれることもあった。つくづく母になるって素晴らしい。母性ってこうも人を変えるものなのか。

■娘に伝えたいのは「あなたは大切な宝物」だということ

だが、未婚で子どもを育てていくことには、簡単には解決できない問題もある。たとえば、2人より3人の方がどう考えても賑やかだ。じゃあ、妹か弟を作ってやりたい。母子家庭だからこそ境遇を分かち合って支え合えるキョウダイを! と思っても、母子家庭だからこそ物理的にキョウダイは作れないのだ。

そのほか、ちょっと抱っこしてて〜! と頼める人がいないとか。しかし、これは母子家庭に限らずあり得るシチュエーションである。考えてみると未婚で母になったことで不都合はあまりない。むしろラクだ。夫の食事や世話を考えなくて良いし。娘と自分のラクちんハッピーな暮らしだけを考えて毎日過ごしている。

未婚の母であることを恥じることもない。私は普通の母になっただけなのだ。

これから先、娘には母が未婚で産んだこと、父親がいないこと、認知されていないことに苦しむときがやってくるかもしれない。そのときはきっと一緒に胸を痛めるであろう。

しかし、恥じる必要はないことを伝えたい。あなたはたった1人の大切な大切な宝物だと伝えたい。愛されていることを感じてもらいたい。自分大好き人間になってほしいと思う。やりたいことを自由に選択し、のびのびと育ってほしい。

お母さんは、自由にのびのびとあなたを産む選択をした。そんな自分が大好き人間なのだ。そしてあなたのことが大好きだ。

「何かが足りない」と感じさせない母親でいたい。娘の笑顔をいっぱい見たい。そのためには、私が楽しく満ち足りていればいいのではなかろうか。

未婚の母になって失ったものは何もない。得たものは山ほどある。心の平穏、健康、やりたい仕事、そして最愛の娘。

未婚の母になった私は私らしく生きていると感じる。今すべてはうまくいっている。

Text=岩田笑子

2014年に未婚の母となる。その後、アーユルヴェーダ、ヒプノセラピーサロンをオープン。日々、仕事に育児に奮闘中。枠にとらわれない生き方を実行中。ニヤッとしてしまう毎日が大好き。
育児ブログhttp://s.ameblo.jp/smile25nico-koto/
サロンブログhttp://s.ameblo.jp/smilecoto/

DRESS編集部

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