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稼ぐ、軽い……不倫する女性に共通する「4K」

「稼ぐ女は不倫する」。なんとも衝撃的な言葉である。『不倫女子のリアル』からその真意を読み解こう。

稼ぐ、軽い……不倫する女性に共通する「4K」

有名人の不倫騒動が相次いだ2016年上半期。関係者でないのはもちろんのこと、当事者から迷惑をかけられたわけでもないのに、多くの“部外者”が「不倫なんて最低」「許せない」と過剰なまでに怒りを露わにした。それらの態度は世間の不倫への関心度の高さを明らかにしたともいえる。はるか昔から不倫なんて珍しい現象ではなかったにも関わらず、である。

不倫には暗く、秘めやかで、甘美なイメージが長らくつきまとっていた。しかし、現代の不倫からは暗さや闇といった要素は消失したようにも思う。明るい不倫と言うつもりもないが、不倫の道を選択した女性たちは“湿度”を感じさせない。『不倫女子のリアル』(著・沢木文、小学館新書)を読んでそう感じた。

20年近く女性誌を中心に活躍する編集者/ライターの著者は、この10年で女性が男性化したと実感している。「エビちゃんOL」全盛期の時代、女性たちの間で目指すべき姿とされた「愛され系」ではなく、自立の道を選んで男性化した女性たちは、決して容姿端麗ではなくても、その安定感が魅力となり、自然な形で伴侶を見つけ、中には子どもを授かる人もいて、安定した家庭を築くようになる。あるいは結婚しなくても自分一人を養える経済力をつけ、自由に生きる幸せを謳歌している。

ずっと仕事を続ける彼女たちは、嫌なことや理不尽なことがあっても、意識的に「思考停止」させることで乗り切る術を獲得し、夫に苛立ちを感じることがあっても、その術を家庭でもフル活用する器用で賢い女性たちだ。そうするなかで、安定感にさらなる磨きがかかり、その隙間にふっと外部の男性が入り込んでくる。そうして始まるのが婚外恋愛、つまりは不倫。

本書ではこうした男性化した女性たち30名ほど(既婚、独身などステータスは様々)に取材し、自立した女性たちの不倫を詳しくリポートしている。そこで浮かび上がったのは「4K」の要素である。第1章では「稼ぐ女」、第2章では「キレイな女」、第3章では「軽い女」(編集注:尻軽という意味ではなく、体重と気持ちの“軽さ”を指す)、第4章では「堅実な女」として描かれる。

一見、不倫とは縁のないキーワードに見えるかもしれないが、そんなことはない。稼ぐ女の事例として紹介されている「ケース1 経済力で不倫をキープしたら家庭も円満!?」の水田さん(仮名、42歳、結婚歴14年、子ども2人)は年収800万円の皮膚科医。男性経験は結婚前は2人だったが、結婚後15人以上に跳ね上がる。

夫とは10歳の次男が誕生してからセックスレス状態だ。もともとセックスが好きな方でもなかったが7年前、夫以外の男性から誘われるようになる。自分を女性として見てくれて、性的に興奮してくれる相手に対し、衝撃と喜びを感じたという。そんな水田さんが不倫に到る前に夫の浮気が発覚していた。

それを見て見ぬふりをして“貸し”をつくるしたたかさをも持つ水田さん。自らも不倫経験を積み重ね、恋愛を楽しむ余裕があったのは、彼女に子どもふたりを一人で育て上げ、大学まで行かせられる経済力があったからだと著者は分析する。心とお金に余裕のある女性は自身の家庭はもちろん、相手の家庭も壊すことなく、つかの間の恋愛で気分転換をしているのだ。


彼女たちの心には「不倫」という意識や概念さえないようにも思う。それゆえ罪の意識もない。ただ単純に、家庭と恋愛にきっちり線引きし、家庭は家庭、恋愛は恋愛、とそれぞれを楽しんでいるのではないだろうか。

家族ならではの安心感や、付き合いたての恋人と月数回過ごすときのドキドキ感、高揚感といったあらゆる役目をたった一人の相手(夫)に求めるのは酷な話でもある。家庭を円満に回すためにも、ストレスをなくすためにも、外でときどき口にしたくなる贅沢なスイーツは必要だ。そんな感覚なのかもしれない。

イマドキの自立した自由な女性たちが、密やかに節度を持って向き合う不倫事例が9つ、加えて弁護士と探偵が見た不倫についても描かれた、タイトル通り実にリアリティのある1冊である。

池田 園子

DRESS編集長(2016年1月〜2020年1月)。

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