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【俳優・内谷正文さんインタビュー #4】 「弱味や弱点をさらけ出す女性のほうが魅力的」

舞台を中心に俳優として活躍するのと並行し、2005年から薬物依存症をテーマにした一人芝居【ADDICTION~今日一日を生きる君~】を全国で公演する内谷正文さん。自身も薬物経験者。その活動を始めたきっかけや願いについてインタビューしました。 

【俳優・内谷正文さんインタビュー #4】 「弱味や弱点をさらけ出す女性のほうが魅力的」

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■自分をさらけ出すことは心地よい

(写真)川久保繁樹

――DRESS部活には〔観劇部〕があるんですよ。

年内は一人芝居がコンスタントに入ってるのと、夏と秋と冬に他の劇団の舞台に客演として出演します。ぜひ企画して観にいらして下さい! もっと小劇場の面白さを知ってほしいですね。私自身の劇団は【フランクエイジカンパニー】という男3人のメンバー構成です。来年の舞台では戯曲も書くつもりです。私たちの得意なハートフル・コメディになるかな~。

――役者以外の活動として「自己表現レッスン」をされているそうですね?

依存症専門のクリニックで自己表現レッスンという独自の指導を定期的にしています。もう7~8年になりますね。あと中高生対象の塾にも時々伺っています。どんな分野でもコミュニケーションは一番大事です。コミュニケーションをとる前に必要なのが自己表現! 私は自身の体験を表現してさらけ出すことによって薬物から回復してきました。だから私のレッスンでは一人ひとりに一人芝居を作ってもらうんですよ。自分で台本を書いて、自分で衣装や音楽を決めて、自分を表現する……。そこに自分にしかできない何かが見つかるんです。私は依存症や共依存症という病は、すべて人間関係から起こるものだと思っています。人という字は人と人が支え合っていると書きますが、支え方を間違えないようにしたいものです。

――大人の女性でも自己表現レッスンはできますか?

もちろんできますよ。人間って、特に女性は、弱味や弱点がチャームポイントに見えて、むしろ魅力的だったりするんです。私が変わってるのかな(笑)。まずは自分をさらけ出すことが自己解放へのスタートです。自慢話より失敗談の方が共感を得られ、心もぐっと近づきます。そのうちDRESS世代向けの自己表現&解放レッスンなんてやりたいですね。プログラムは我流です。というより、その人その人に対応させてもらう感じですかね。その人の心の中は、その人にしかわかりませんから、想いを外に出すお手伝いをするだけです。私は別に医者でもないしカウンセラーのでもないので専門知識やスキルなんてないけど、何よりも人前で自分をさらけ出すことの気持ち良さを教えてあげたい(笑)。よく子どもたちにも言うんです。「悩みがあったら何でも話してよ」「解決はできなくても一緒に考えることはできるから」と。

内谷正文さん
俳優&モデル 1969生まれ 湘南生まれの埼玉育ち
舞台俳優として活動する傍ら、薬物依存をテーマにした一人芝居をライフワークとし、全国の学校等で数多く公演を行っている。また自身の劇団【フランクエイジカンパニー】をはじめ、他の劇団の客演としても幅広い役柄で活躍中。
内谷正文HP http://bumi.jp 

(写真)川久保繁樹

■泣いたっていい、そのあと笑えるなら

――何かの依存症や共依存症気味だと自覚してツラいときは、どうすればいいですか?

ツラいときは、まず誰かに話すこと。これが一番大切です。話す相手がいない人は、それもツライけど……そんなときは泣いちゃっていいと思います。泣いた後に笑えればいいんですから。たとえば薬物依存症の家族会の場合、初めて私の芝居を観た人は苦しくて切なくて泣きっぱなしです。でも、そこで少しずつ自分の胸にあることを話せて、似た経験をしている人を見つけ、個人的に相談したりしているうち、表情も明るくなってくるんですよ。すると家族会に来ても「今度、子ども(薬物依存)のことは少し忘れて旅行にでも行きますか」などと言い始めるお母さんたちがいる。こういう母親の子どもの方が早く回復してゆきます。「私が産んだ子なんだから私が何とかする!」と言う母親の子どもは、むしろ回復の兆しが遅い……。問題を一緒に抱え込むのではなく、あえて突き放すことで、母親自身も共依存症から回復し、それが薬物依存の子供本人にも良い影響となり、結果的に回復が早まるんですよ。必ずしも真面目に悩み続けることだけが解決につながるとは限らないんですね。

――これからの大きな夢はありますか?

今の一人芝居や演劇は一生広げ続けながら、もっといろいろな人と出会い、視野を広げていきたいです。俳優としては日本舞踊も好きでやっているので、いつか時代劇の舞台や大河ドラマとかも出られたらいいですね! 私は全国の子どもたちと触れ合うことが多いのですが、本当に子どもからはたくさんの勇気とパワーをいただいてます。次に生まれ変わったら先生になりたいなぁ~なんて思ってるんですよ(笑)。

――最後に、いまはまだ苦しみや悲しみの最中にある方々へ一言お願いします。

人はすぐに生まれ変わることはできないけれど、新しい生き方を見つけることはできます。薬物だけでなく各依存症を断ち切りたかったら、覚悟を決めて新しい生き方を見つけることも必要です。そして、そこにはいつも必ず人がいるということ。新しい生き方とは、要は新たな人間関係を作ってゆくことなのかもしれません。私の場合は一人芝居をすることで、過去をさらけ出し、家族の恥をさらし、現在回復中の自身の物語を表現し続けることで薬物依存の世界から離れられています。それが誰かの希望にもなれたら最高です。これがいまの私の生きる術(すべ)なんですよ。とりえず今日一日だけ生きてみる。あと一日だけがんばってみる。その繰り返しで現在(いま)がある。だから今日一日だけはしっかり進みます! 今日一日ありがとうございます!!

(写真)川久保繁樹

取材・構成=鈴木ユミコ(MC & Writer)

〔今日一日を生きるLIVEプロジェクトVol.3〕~Goodbye Drugs, Goodby Addiction~

1)一人芝居 【ADDICTION今日一日を生きる君】…内谷正文
2)体験談「壁のない生活」~聴者と聾者の生活~&手話パフォーマンス…三浦剛×忍足亜希子
3)トークセッション「マイナスをプラスに!」…内谷正文×三浦剛×忍足亜希子
(司会)篠原あさみ

◎入場無料
・日時…2016年6月11日(土) 14時~16時 (開場13時15分)
・場所…志木市民会館パルシティ   
     (埼玉県志木市本町1-11-50  TEL 048-474-3030)
・アクセス…東武東上線〔志木駅〕下車  東口より徒歩15分
・問い合わせ先…志木市役所 生涯学習課 TEL 048-474-1111

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