窮鼠猫かみパワー~恨みとは恐ろしや~【塩村あやか】
都民ファーストの会が圧勝した都議選が終わりました。2月、次期衆院選で、民進党(広島3区)から立候補すると表明した塩村あやかさんが、今回の都議選を振り返ります。
小池都知事を生んだ昨年の都知事選から、先般の都議選。巨大第1党(会派)の自民党が大敗しました。都民ファーストの会は国民ファーストの会になろうとしています。
都議選から一夜明けた7月3日、小池知事は国政進出への考えを問われ、記者団に対し、こう答えました。「私どもは都民ファーストならぬ、『国民ファースト』を考えていく必要がある」と。
自民党東京都連所属の国会議員もこのままだと、「なんか自民党感じ悪いよね」と都民の審判を食らい、都議会と同じように多くの国会議員が落選の危機です。一年前に誰がこの状態を予想できたでしょうか。
■自民党都連を恨んでいる人たち
実は今回の一連の出来事には共通点があると感じています(否、小池さんを応援し、世論を作った人や影響を持っている人に共通点があるというべきか)。
それは「自民党都連に恨みがある」ということ。小池知事自身も出馬の経緯から明らかですし、猪瀬さん(元都知事)も。自民党都連を相当恨んでいます。
猪瀬さんは都知事選で自民党都連と対決姿勢を明らかにした小池さんを、都議会のドンという闇に光を当てることで強力な応援をしました。元知事の猪瀬さんだからこそ出せた情報での応援は、「悪」と「悪と戦う女性候補」という構図を作り出し、対比を鮮やかにして、小池知事の勝利に大きく貢献をしたといえますよね。
都議会を見てみると、音喜多駿さんも北区の定数を減らされたりと、恨むかは別として、ことあるごとにネットで都議会自民党と行政側の指摘を鋭くして、静かなるドンパチを都議会自民党としていました。
今の都民ファーストの会の代表も、元自民党都議で都議会や都議会自民党の暗部をメディアで指摘しており、対峙していたことが伺えます。
■民意は突然ひっくり返る
私もやじ騒動の一連の対応と、その後の経過から、都議会自民党(都庁職員にも)には決していい印象を持ってはいません。むしろ、問題だと感じており、都度問題点を指摘してきました。
しかし、決して対応は変わることなく、権利を不当に剥奪したままだったり、要望を一切取り入れなかったり、情報公開推進委員会などでの当方のまっとうな要望にも反対をし、ネグレクト(改善しないまま)していました。
一強の驕りなのか、やじ騒動で私が弓引いたように見えたからなのか、はたまた、もともとの体質がそうさせたのかはわかりません。
一強であったにせよ、権力を盾に傘に驕慢なことを繰り返していると、民意はあるときクルッとひっくり返ります。桶に水が溜まっていき、急に溢れていくようなものです。これまで問題があるたびに批判を浴びても、おさまってきたとタカをくくっていたのでは。
しかし、都民・国民の中には「不信」というポイントがその桶の中に溜まっていっているんです。そして、国政の失態もあり、不満という名の水は都議会を舞台に溢れてきてしまいました。
■「歴史」は繰り返されるのか
そこに先に述べたような、捨てるものがない、組織に縛られない自分で戦える力量を持ったパワーある人たちが各々かつ全力で立ち向かって結束した。そこへさらに政治家を目指す新しい人材も押し寄せて、いわば、窮鼠が猫を噛んだ状態になりました。
追い詰められたり、失うものがない人たちの窮鼠猫かみパワーはハンパないということが、今回の都議選で痛快にわかりました。恨みとは恐ろしいものです。
最後に。都議会を去る者として今後を考えてみると、選挙前に言われていたように都民ファーストは改憲勢力としての国政進出は確かに既定路線かもしれません。
国政の自民党は、実質的な代表といっても過言ではない小池さんに頼ることで改憲勢力の確保をするのだろうという意見も出ており、それもなるほどなと思わせられます。しばらく小池知事にボールがあるということは明らかで、お見事の一言に尽きます。
話を元に戻すと、今回の件では恨みを晴らした人たちが、逆に怨みを買うことになっていると考えると、歴史は繰り返されるのかもしれません。
ですから、都政の安定のためにも、ぜひ都民ファーストのみなさんにはミイラ取ったけどミイラにならないよう、そして、足を引っ張られないよう、猫にならないよう、脇を閉めて都政にあたっていただきたいと思います。