チェコの5月祭をレポート。春の訪れを感じる瞬間はここに
毎年ここチェコでは各地で、4月の終わり頃からメイポールと呼ばれる「5月の柱」を建てるイベントがあります。今回は、春の訪れを祝う5月祭をレポートしてきました。
5月1日メーデー。チェコにおいて、この日は春の訪れを祝う祝日です。私が住んでいる地域では、4月の最終日曜日に5月祭のイベントが行われました。
メイポールと呼ばれる、「5月の柱」を飾りつけして立ち上げるまでの間、歌ったり踊ったり飲んだりするお祭りです。
私の住んでいる地域のメイポールは大きいので、柱を立ち上げあるまでに、だいたい2時間ほどかかります。周りではブラスバンドが演奏したり、天気の良い日はアイスクリームを食べたり、家族や恋人あるいは友人たちと春の訪れをのんびり感じます。
今回は、このチェコのお祭りについて、詳しくご紹介します。
■チェコの春を祝う伝統行事を覗く
この時期は、どこの集落を通っても、目にすることができるメイポール。「5月の柱」という言葉は、私たちにはあまり馴染みのないものですが、「メイポールダンス」というと懐かしく聞こえてきませんか?
昔、小学校の運動会で、色とりどりのリボンを手にポールの周りを交互に踊りながら、リボンを編み上げていく遊戯がありましたが、それに近いものになります。
そもそも、このお祭りは、夏の豊穣への祈りや子孫繁栄、健康を願うために開催されているもの。この時期は繁殖の季節でもあることから、メイポールは男根にも見立てられているんです。
民族衣装に身を包み、街はずれからメイポールを運びます。青いエプロン姿は、仕事着なのだそう。
馬車も支え木を載せて出動します。広場につくと、子供たちの人気者に。
ようやくメイポールが市役所前の広場へ到着しました。
そして、一仕事始める前にもう一杯。男性たちが手にしている、ラタンで編まれた水筒のような入れ物には、ワインや自家製のプラム酒が入っています。
各々、首からマイグラスを下げているので、試飲会とまではいわずとも、自作のアルコールを勧め合います。
周りにある木は、2本ずつ紐で結ばれていて、メイポールを支えたり、押し上げたりします。
■歌って、踊って、メイポールを立ち上げて
メイポールを立ち上げる作業は、飲みながら歌いながら、休み休み進めるのでなかなか時間がかかります。
そして、メイポールがあと少しで立ち上がる、といったタイミングで市長登場の歌が歌われます。
この伝統的イベントの合間に歌う歌は、いつ誰が作ったかもわからないような古いものがずっと語り継がれているのですが、この市長登場曲も、昔からあるそうです。
「早く美味しいワインの差し入れをしないと、市長に恥ずかしいいたずらをするぞ」というユニークな歌詞なんですよ。
女の子たちは、歌ったり踊ったりして応援しています。
ブラスバンドも応援に。
いよいよ立ち上がります。ここまで2時間ほどかかりました。長かった(笑)。
■お祭りの合間に食べるアイスクリームは絶品
このお祭りでは、毎年たくさんの人がソフトクリームやアイスクリームを食べています。最近人気なのは、新しくできたこのジェラートのお店「Kavárna Longus(カフェ・ロングス)」。
チェコでは、子供からお年寄りまでアイスクリームが大好き。夏場になると、道行く人の全員が食べていると言っても過言ではありません。
最初は驚きましたが、その人気にはいくつかの理由があるんです。そのひとつがクーラーがないということ。チェコにおいて、一般家庭にクーラーが設置されていることはほとんどないです。どこか外のお店に入ったとしても、日本のように涼しい場所は少ないので、夏場は嫌でも内側から体を冷やしたくなります。
そんなこともあって、今では私もよく食べています。
■伝統行事を大事にするからこそ、四季折々の楽しみがある
こうして、春の始まりは先月のイースターから始まり、この5月祭。この後、ひと月ほどすると、このメイポールを倒す行事に続きます。
民族衣装に身をまとい、その時々に合った歌を歌い踊ります。昔々から語り継がれてきた歌から、新しく作られた歌まで、その数はもはや数えることさえできません。
そういう伝統行事や伝統芸能を特に大事にしているのが、この町の特徴です。
その一つひとつを大事にすることで、四季折々の過ごし方や楽しみ方も、また増えてきます。少し大変でもありますが、まさに四季をかみしめる、とでもいうような表現がぴったりかもしれません。