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淑女のための おことば教養講座 第2回「フェス」

DRESSをご愛読くださっている、麗しのおとな女子の皆さま。淑女のたしなみとして覚えていただきたいおことばを、小耳沢がご紹介いたします。トレンド関連のおことばから、淑女の人生を彩る普遍的なおことばまで。さあ、皆さま揃ってレッツスタディ♪

淑女のための おことば教養講座 第2回「フェス」

こんにちは。小耳沢はさ美です。
この度開講いたしました「淑女のためのおことば教養講座」。
皆さまの熱いご支持のお陰で、早くも第2回をお届けできる運びとなりました。

トレンド関連のおことばから、淑女の人生を彩る普遍的なおことばまで。
さくっと学んでまいりましょう。



連載第2回のおことばは、

*フェス/ふぇす[名]

●意味
家族や友達、会社の同僚などから「あれ? なんか今日可愛くない?」などと褒められた際、おとな女子の内部に突如発現。とめどなく熱く魂が高揚してしまう状態を表します。うれしい、超うれしいなどといった凡庸な表現では到底表しきれない、テンションMAXな状態を示すおことばです。


●用例
「あれ? 恵美ってば、なんか今日、超可愛いんですけど。メイク変えた?」
「………………」
(魂が一気にフェスへと駆け上がると、顏はにへら~と笑う一方、声を発することができなくなる場合があります)
「やだ恵美。フェスっちゃった?」
「………………」
(にへら~と緩んだ顏をぶんぶんタテに振っています)


●派生語

・夏フェス
暑いという理由でヘアをアップにし、風が通ると涼しいので、コットン素材のマキシワンピを着てみただけという日に起こりがちなフェス。「え~、なんか今日いつもと違うー。いいねぇ。アップ似合うなぁ」などと褒められスパークする打ち上げ型フェス。

・和フェス
TPOを理由として和服を着た際に起こりがちなフェス。「あ、和服かぁ。やっぱいいよね~、和服。似合うよ。ヤバい、惚れちゃいそう」などと賞賛され、全身を滲み満たす浸潤型フェス。

・喪フェス
喪服に身を包んだ日に起こりがちなフェス。「あ、今メンズがこちらを見て、色っぽいとか思ったな」と気づいた瞬間、線香花火の如くごく控えめに咲き、けれど「いけないいけない。不謹慎にもほどがあるわ」との自戒からたちまち散り果てる霧消型フェス。

・素フェス
初めて素顔を見せた日、「素顔も可愛いんだね。っていうか、素顔の方が可愛いくらいだよ」と抱きしめられ、あまりの幸福感とともに地に足が着かなくなる浮揚型フェス。

・寝フェス
ベッドの上で目覚めたとき、こちらを覗き込むように見つめる視線を発見。「ごめん、つい見ちゃってた。寝顔も可愛いんだね」とやさしくほほ笑まれ、「やだもう、恥ずかしい。見ないで」しか言えなくなるブランケット内隠遁型フェス。


ここまでポジティブな派生語をご紹介いたしましたが、フェスから派生した語群の中に、ひとつだけ悲しいおことばがあります。


・フェ酢
「ヘアメイクもスタイリングもばっちり。なんか今日わたし、イケてるんじゃない?」と調子づいた日に限って起こるフェス。「友達だから言うんだけどさ。恵美、その服太って見えるね」といった指摘を受け、すっぱい顛末へと急降下してしまう墜落型フェス。



●使用上の注意
「きれい」「可愛い」などと褒められると、たまらなく嬉しいのが女ごころ。けれど、どれほど熱いフェスが内部で勃発しようと、それをおくびにも出さないのがおとな女子のたしなみというものです。傍目にも顕わなフェスは「無恥フェス」と呼ばれ、淑女にあるまじき行為として恐れられています。

にへら~っと笑ってしまいそうになった場合は、そっと片手で太ももの裏をつねりつつ、「ありがとう。うれしいわ。でも、そんなこと……」と小さく小首を振りつつ、眉を軽いハの字にするイメージでほほ笑むことにより、恥じらいを表現いたしましょう。これが現存する最もエレガントなフェス処理の方法として知られています。お試しあれ。






小耳沢はさ美/よろず文案作成家 
小学生時代の愛読書は、夏目漱石と芥川龍之介。中学時代の愛読書はカフカにシェイクスピア、城山三郎。「リーダーズダイジェスト」と「ビックリハウス」にハマっていました。その結果、このような大人に。お子さまの読書傾向に、皆さまどうぞご注意を。

小耳沢 はさ美

よろず文案作成家。コラムニスト。エンタメ系ニュースから世相まで、くすっと笑わせユーモラスに批評するコラムに定評あり。 hasami.komimisawa@gmail.com

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