抑圧されて知る美しさ
黒髪や飾り気のない爪、肌……素のケアが楽しく心地よいものだと気づいたのは大人になってからだった。
ファッション誌の連載コーナーで、毎月読者さまからいただいたお悩みにお答えしている。
今回寄せられたお悩みのひとつに、“会社が厳しくて毎日メイクが楽しめない”というものがあった。
それで思い出したのは、中高生時代。
わたしの通っていた学校は規則が厳しくて、細かくいろいろ規定があったけれど、ファッションやビューティーに関してまとめると、すべてが禁止!
スカート丈とか、眉を描くとか、カラーリングとか、寄り道とか、一つひとつの“したい!”はイコール校則をやぶることだった。
とても良い学校だったし、学んだこともたくさんあったけれど、
わたしの美容への熱意はこの抑圧された数年間に育ったものだと思う。
■「こっそり美容」が得意な理由
それでも、わたしは美容をしていた。
規則にばれない範囲で!
なので、“見つからない”美容は、かなり得意。(笑)
まず、黒髪でも、マニキュアをしていない素爪でも、美しく見えるようなケアを徹底的にすることにハマっていた。髪は、多くて、くせ毛だったのに、ストレートパーマもすいてもだめだったから、ひたすらトリートメント。
くせ毛を抑えるスプレーも試していたけれど、あれはべたべたして嫌だったなぁ。だからか、今もスタイリング剤はなるべくつけないでできるアレンジが好きなのかも。
■素爪は磨くことで輝きを放つ
爪もやすりで整えて、磨いていました。研磨剤をちょっとつけると、ぴかぴか輝くの。
これは、最近ジェルネイルを数週間しない期間を作るようになってから、また試してみたケア。ネイルカラーは家事をしている間に結構欠けてしまうので、撮影前かディナー前につけて、1日ぐらいで落としちゃう。
なのでずっと綺麗でいてほしいときは、シャネルのベースコート。ちょっぴりミルクがかったカラーなので、塗っているだけで手も柔らかく見えるのだけれど、こちらも4〜5日で欠けちゃう。
“もう、素爪でぴかぴかできたらいいのに。”と願ったときに、あ!と思い出して磨いてみたのです。
とても綺麗。
研磨剤がついているパーツが輝くのでジェルネイルのように伸びてきたら根元は光っていないのだけれど、それでもよくよく見ないとわからないくらい。数週間ずっとぴかぴか。欠けるかも、と心配しないので心地よい。
こうやって、抑圧された青春時代にしていた美容って、結構役に立っている。
■気づいた瞬間から、素のケアを楽しめる
今、そのときに戻るなら、校則違反の範囲には入るけれど、インラインのアイライナーと、色がついていないトーンアップの下地、ほんのりピンクづくリップクリーム(でもリップスティック自体には色はついていないもの)を使う。眉はどうしよう……伸ばすしかないかな。
先生はあのとき、親と同じく厳しく育ててくださる存在だった。
校則をどうにかしてすり抜けようとした私たちに先生がかけた言葉、「あなたたちは、何もしなくても綺麗なときなのよ。そのときを楽しみなさい」を覚えている。
きっと、そうだったんだと思う。
素のケアを楽しめるようになるのは、みんなちょっと先かもしれない。
それは、その大切さに気づくから。
自分で気づいてこそ、楽しめる。
あのお言葉は、心からのご指導だったから残っているんだろうな。
いただいてきた学びに感謝です。