「女性のための常備服をつくり続けたい」STYLE DELIがヒット商品を連発する理由
大人の女性から支持されるファッション通販サイト「STYLE DELI」。手の届きやすい価格帯ながら良品質、さらに私たちが求めるリアル・クローズを展開し、数々のヒット商品を生み出しています。トータルマネージャーを務める齊藤あおいさんに、アパレル業界経験ゼロだった過去や商品づくりへ込めた思いを伺いました。
2012年にオープンしたレディースファッション通販サイト「STYLE DELI」。シンプルながら小ワザの効いたデザインと、良品質なのに手頃なプライスで、大人の女性に人気の通販専門ブランドです。トータルマネージャーを務める齊藤あおいさんは、もともとはジュエリーデザイナー。アパレルの業界経験ゼロの状態から、突然STYLE DELIの統括を任されることになったといいます。
■服に費やしたお金は、山手線沿いに戸建が建つくらい
「2010年にSTYLE DELIの経営母体、ネバーセイネバーの代表取締役と結婚しまして。その頃ちょうど社内で、今までとは趣向を変えたファッションサイトを立ち上げる計画が出ていて。お手伝いしているうちに、成り行きで丸ごとブランドを任されてしまったんです。
白羽の矢が立ったのは、EC運営の経験と尋常ではない洋服好きを見込まれてのことでした。高校時代から毎月40冊以上のファッション誌を熟読し、「山手線沿いに戸建が建つくらい」のお金を服に費やしてきた齊藤さん。コーディネートについてはもちろん、素材の種類からお手入れ方法に至るまで、くまなく研究を重ねてきました。
「服が好きだったので、すんなり仕事にできた部分もありました。それでも仕事を一任されてしまったので信じがたいほど業務量が多く、とにかく大変でした。朝から晩まで商品を企画し、バイイングし、プレス活動を行い、商品サンプルを修正し、撮影に立会い、フォトショップを使って画像編集し、商品を出品し、お客さまからの相談やクレームに対応して……。さらには事務仕事までこなして。でも私、ずっと面倒なことから逃げ続けてきた人生だったんです。だから、これだけは絶対一生ものの仕事にしようと覚悟を決めました」
■ 一流大学出じゃない私は出版社に入れない――夢を転換した日
子どもの頃から、気が乗らないことは徹底的に排除してきたという齊藤さん。マラソン大会にも、一度も参加したことがないそうです。高校も入学10ヶ月後には自主退学。自身いわく“いわゆる地元のヤンキー”になって、生産性の無い毎日過ごした時期もありました。でもあるとき、大好きなファッション雑誌の編集者になりたいと夢を持つようになります。
「当時は無知だったので、出版社に入社しないと編集者にはなれないと思っていました。さらに、出版社に入社するためには、大学を卒業する必要があると。すごく短絡的ですよね(笑)。でもそれがモチベーションになって大検を取ることができたんです。その後昼間は大学へ、夜間はライター専門学校へ通い必死に努力して……。でもあるとき、気づいてしまったんです。出版社に新卒で入れるのは、一流大学を卒業した一握りの人だけなんだ、って」
潔く夢に見切りをつけた齊藤さんは、大学を卒業後ジュエリーメーカーに就職。その後フリーのジュエリーデザイナーとして経験を積みます。そして、遂にSTYLE DELIのトータルマネージャーとして念願のアパレル業界に飛び込み、みるみるその手腕を発揮していきました。
■Q&A掲示板を通して届いた、女性のリアルな声
人気商品を続々と生み出すSTYLE DELIのなかでも、齊藤さん自らデザインを手掛けた「リラックスVネックワンピース」は、毎シーズン1万枚を売り上げる大ヒットアイテム。最大の特徴は、細長い独特なカットのVネック。この工夫で、屈んだときに胸元がチラッと覗いてしまうという女性の悩みを解決しました。
「直感でつくったこのワンピースが、ここまでヒットするとは正直想像していませんでした。ワンピースって楽だけど、コーディネートする楽しみが少ないアイテムだと思っていたんです。でも、お客さまの声を聞いているうちに、コーディネートを考えること自体に苦手意識を持っている方が、実はかなり多いと気づきました」
そんな齊藤さんが顧客の悩みに答える「Q&A掲示板」は、大手アパレル会社が社員研修で閲覧を勧めるほどの評判のコンテンツです。アイテムの詳細や着こなしについての顧客の質問に、ときには数十行にも渡る丁寧な返答が。読み物としてぜひ楽しんでほしい、と齊藤さんは言います。
■「しょうゆ」的な存在でありたい
「お客さまの意見に対しては『申し訳ありません、改善に努めます』という答え方がこれまで一般的だったと思うんです。でも、意見の中には、服への知識が足りないことで生まれる誤解がたまに含まれています。そんなときは、素材や構造について一から丁寧に説明させていただくと、大半のお客さまが納得してくださるんです。安心しました、とお喜びいただくことも多いくらいです」
服が売れないと嘆かれるようになった昨今。それでも勝ち残り続けるためには、何が必要なのでしょうか。STYLE DELIの展望について尋ねたところ、意外な答えが返ってきました。
「目指しているのは、“しょうゆ”みたいな存在です。しょうゆって食卓に欠かせない常備品だから、絶対になくなることはないですよね。STYLE DELIも流行の最先端を目指すのではなく、大人の女性にとっての常備服をつくり続けたい。困ったときに迷わず手を伸ばしてもらえるような、本当の意味でのリアル・クローズを追求していきたいんです」
Text/Photo=波多野友子
いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。