NYで学んだこと vol.1 【松井里加のちょとメイクが好きになる話】
最新のモードを積極的に取り入れつつも、リアリティあるメイク提案に定評がある。自身もDRESS世代のひとりである、メイクアップアーティストの松井里加さんが語る、メイクのお話。メイクが好きになれば、自分も少し好きになるはず。
今でも色々なことが走馬燈のように思い出されるNY生活
私は2000年から2006年まで6年間ニューヨークに住んでいました。
約10年も前のことなのに今でも色々なことが走馬燈のように思い出されます。高校の時から大好きだったファッションショーや海外ファッション誌の撮影を見てみたいという思いが募り、5年半働いていた東京のヘアサロンを辞め、25歳の時に知り合いもいないニューヨークへ単身で飛び立ちました。今思うと無謀で無茶だったなと反省することもありますが、とにかく行くしかないという気持ちが私を突き動かしていたのだと思います。
絶対にニューヨークへ行こうと決心したら、そのことに興味を持ってくれた人、紹介、応援してくれる人など急に新しい出会いが周りに沢山起こったことを覚えています。そんな方々から励ましの言葉や助言を頂いた中で、今なお忘れられず私をいつも軌道修正してくれる言葉があります。
その方は働いていたヘアサロンのお客様でその時既に80代、徳川家の血を引くお姫様で、とても優雅で素敵な女性でした。
なぜかいつも私を気にかけて下さり、ニューヨークへ行くと話すとディナーに招待してくださり、その時頂いた言葉は、
「無理はしなくていいのです。自然体でナチュラルでいること。無理をして作ったものは美しくないのです。あなたらしくいること。無理をせずあなたの世界であなたらしく皆と接していけば必ず上手くいきます。絶対に大丈夫ですから」
と言ってくださったのです。そして時間があるときは毎日でもメトロポリタン美術館に行って西洋と東洋のアートの歴史を同時に比べながら学びなさいとおっしゃいました。なんと有り難いお言葉を頂いたのかと今思い出しても胸が熱くなってしまいます。
こうして様々な出会いや別れを胸にしまい込み、半年間で自分のブック(ビューティーやファッションの作品集)を必死で作り上げ、ニューヨークに旅立ちました。行きの13時間の飛行機では不安で一睡も出来ずただ震えていました。しかもJFK空港に着いた途端ロストバーゲージでスーツケースもないままホストファミリーの家にいくことになりました。
朝になれば荷物が届くことも知らず一晩中悲しくて泣き明かしました。何しろパソコンや大事なブックが入っていたのですから! そんな最悪な初日から私のニューヨークライフは始まったのです。
(vol.2に続く)