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ピースボートの上から

ピースボートの上から

ピースボートの上から


 私はいま、海の上にいます。
 カタールの首都ドーハから世界一周船「ピースボート」に乗船したのが一週間前。これからスエズ運河を抜けて、次の寄港地であるギリシャのサントリーニ島に到着するまで、アラビア海を10日間以上航海していきます。「ピースボート」から依頼を受けて乗船するのは、これで2回目。日本人約900人を乗せた船内で、参加者向けに様々なテーマで講演をしたり、交流をしたりするのが「水先案内人」としての役割です。他にも平和活動家、作家、ジャーナリスト、大学教授などが世界各国から集められ、同様の役割を担っています。

 船といっても、1000人以上を収容する大きな船なので、10日間連続航海でも飽きないような設備が盛りだくさんです! カフェラウンジ、ピアノバー、居酒屋にはじまり、ジャグジーつきのプール、スポーツジム、サウナ、マッサージルーム、美容院まで完備。さらには、300人を収容するホールで毎晩のように映画上映会が行われ、朝ヨガから水先案内人による講演、深夜のディスコタイムまで、船上生活はイベントに事欠きません。

 インターネットはつながるのかって? 天候、海域や時間帯によっては不安定な時もありますが、衛星回線を使ったネット環境はおおむね良好です。ただし、料金はなかなか高い! 「100分・2100円」のインターネットカードを購入し、パスワードなどをスクラッチすると使用できます。こうした原稿の送付など、仕事で利用するのはともかく、船上生活で激減するのは、SNSの利用やネットニュースなどの情報収集。「寄港地での観光をブログにアップする」「日本にいる仕事相手にメールする」といった目的がなければ、ネットにアクセスする機会はあまり持ちません。何といっても目の前にアラビア海と美しい地平線が広がっているのですから、それを楽しまないともったいない。

 
 ネットから離れた生活を送るようになって、びっくりするほど時間の濃度が上がりました。夜12時前に寝て、朝6時には起きるリズムができました。朝ごはんをしっかり食べて、午前中は原稿を書いて、お昼ごはんは参加者の皆さんと食べて、プールでひと泳ぎして、読書をして、海を眺めながらぼーっと頭を解放して、軽く運動をして……。東京にいる時の自分は、いかに「異常」な生活を送っていたのか、愕然とします。SNSのタイムラインを眺めながら、気づいたら深夜2時、3時まで夜更かし。眠たい目をこすって、終日仕事に会食にスケジュールがパンパン。根拠のない噂や悪口で溢れかえるネットニュースがついつい目に入って、嫌な気持ちで再び眠りにつく日々。中には気持ちが晴れやかになったり、明日への活力が湧く情報もあるけれど、取捨選択にもっと自覚的になろうと反省したのでした。

 まあ、そうはいっても、海上でネットがつながるのはありがたいし(高いとしても)、パソコンやスマホがあれば、世界中どこでも仕事ができる時代に生きているのは、幸運なことです。

 次の目的地であるサントリーニ島以降は、寄港地ラッシュです。トルコのクシャダス(今年世界遺産に認定されたばかりのエフェソス遺跡がある)、ギリシャのピレウス、イタリアのヴェネツィア、クロアチアのドブロブニク、モンテネグロのコトル、そしてイタリアのパレルモ(シチリア島)。10月6日にパレルモにて下船したあとは、ローマ〜ドーハ経由で日本へ帰国します。

 残り2週間、存分に楽しんできます!

安藤 美冬

フリーランサー、コラムニスト。1980年生まれ、東京育ち。(株)集英社で広告と書籍の宣伝業務を経て独立。組織に属さないフリーランスとして、ソーシャルメディアでの発信を駆使した肩書や専門領域にとらわ れない独自のワーク&ライフ...

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