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会話の多い夫婦は長続きする。ブラピ&アンジー共演映画「白い帽子の女」を観て考えたこと

夫婦って、そして愛って何だろう。物思いが似合う季節、秋。ひととき映画館で心の旅をしてみませんか? 縷々綴られる夫婦の物語は、誰にでも起こり得る事柄が契機であるだけに、観る者の胸にせつせつと響き、問いを投げかけてくるようです──。

会話の多い夫婦は長続きする。ブラピ&アンジー共演映画「白い帽子の女」を観て考えたこと

■「白い帽子の女」あらすじ

1970年代。南フランスの海に浮かぶ美しい島へ、アメリカ人の小説家ローランド(ブラッド・ピット)と、その妻ヴァネッサ(アンジェリーナ・ジョリー・ピット)がヴァカンスに訪れる。執筆に悩み書けなくなっていたローランドは、現実から逃避するようにカフェに入り浸るばかり。一方、妻はホテルの部屋に半ば引きこもり、ほとんど外へ出ることがない。かつてふたりの人生を見舞った辛すぎる出来事により夫婦の心は引き裂かれ、それぞれが孤独のうちに心を閉ざしているのだ。


ある日ヴァネッサは、部屋の壁に開いた小さな穴を見つけ、好奇心を抑えきれず覗いてみる。ハネムーンで滞在中の若いカップル(メラニー・ロラン、メルヴィル・プポー)の寝室が見えた。子どもを持ちたいという願い、未来への展望。新婚のカップルらしく希望に満ちた会話を耳にし、愛を交わす姿から目が離せなくなるヴァネッサ。
最初は距離を置いていたローランドも、若い二人が放つ純粋で明るい気配に触れ、徐々に心を開いていく。近づく二組の夫婦。


ローランドとヴァネッサは若い二人を媒介とすることで、閉塞しきった自分たちの関係を修復しようと試みたのだった。だがこの行為により繊細なヴァネッサはひどい混乱に陥り、状況はさらに悪化してしまう。
「幸せになれるのに、君はそれを拒んでいる」。哀しみに打たれながらも、ヴァネッサに寄り添い続けようとするローランドだったが……。

■夫婦、愛とは何なのか?リアルすぎる物語

アンジェリーナ・ジョリー・ピット監督作品「白い帽子の女(原題『By the Sea』)」。本編公開直前あまりに唐突にもたらされた、ブラッド・ピッド、アンジェリーナ・ジョリー・ピット夫妻離婚へとの報道。
ハリウッド随一のおしどり夫婦と目されていた二人の別離は、経緯を知らぬ者にとってあまりに衝撃的ではあったが。極力先入観を廃して作品と対峙する心づもりで、映画館へと足を運んだ。本作から「アンジェリーナ・ジョリー・ピット」とピット名を名義に加えたアンジェリーナが、このタイミングで離婚を選択するなんてほんとに? との疑念を振り払いつつ──。


*********
病的と形容せずにいられないほど痩せ細り、うつ状態をさすらうヴァネッサ。そんな妻を理解しようともがきながら、次第に苛立ちを募らせ荒んでいく夫・ローランド。
彼らを苦しめている元凶が夫婦二人の上にもたらされた悲劇であったなら、痛みは二人で分かち合うといい。ひとりでは耐え難い痛みも、二人でなら乗り越えられるかもしれないのだから。それこそ人が結婚を選択し、夫婦になることの意味であろうにと、スクリーンの前でせつなくなった。

劇中ローランドは、妻の頑なさを受け入れ、ひたすら耐えながら時機を待ち、心を解きほぐそうと試みる。けれどその懸命な努力も、足りない言葉と不器用な表現のせいでヴァネッサをより一層遠ざけてしまうばかり。


なんてリアルな、と嘆息した。関係の修復を試みるのは、夫婦のうち大抵どちらか一方。先に心を閉ざした方は、容易には相手の努力を受け入れない。努力していた側が諦めればそこでゲームオーバー。夫婦は一気に別離へと向かってしまう。そもそもコミュニケーションの断絶はなぜ起こるのか。端緒は常に会話の欠如ではないだろうか。


夫婦の間に違和が生じてからでは遅い。日頃から、日常の他愛ない出来事について話し、相手からも聞く。何をどう感じる人間なのか。いま何を喜び、何に悲しんでいるのか。心のありかを互いが把握し、受け止め合う。
こうした何気ない日常の手続きが繰り返されることで、自分は相手に受け入れられているという安心感を得ることができ、信頼が深まる。相手のことを誰よりもよく知り、支えているという自負が日々更新され、二人の絆がゆるぎないものとして結ばれていく。よく話をする夫婦は仲のよいことが多くて、その成り立ちとはこういうことではないかと思うのだ。


多忙さから時間の捻出が容易でなくても、夫婦二人で会話し、コミュニケーションを絶やさぬよう、小さな努力を重ねてほしい。一度本当に心が離れてしまえば、もう愛は取り戻せないかもしれないから。誰にともなくそんな願いを抱きながら、スクリーンを見つめた。


ためらわず「愛」と書いたけれど。さて、愛とは何だろう。あなたはどう思うだろうか? 「非合理的で、不条理に満ち満ちて、ときにいささか滑稽ですらありながら、それでもなお失いたくないもの。とめどなく湧き出るぬくもり。人をして人たらしめるもの」。定義せよと求められたら、私は拙くこう綴るだろう。


夫婦って何だろう。愛って何だろう。そう自分の胸に問いかけながら、ヴァネッサとローランド夫妻がたどる道程を見守る。そんな心の旅をしてみませんか?
「白い帽子の女」。あなたも劇場で、ぜひ。

「白い帽子の女」9/24(土)~シネスイッチ銀座、渋谷シネパレス他、全国ロードショー

湯木 景子

各女性誌ライター、広告プランナーとしての豊富な経験をもとに、女性が人生をより楽しく生き、魅力を磨くためのコンテンツをお届けしています。

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